「三種の神器」に贈与税? 生前退位で注目を集めた「税制の波紋」

「三種の神器」に贈与税? 生前退位で注目を集めた「税制の波紋」

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  • 更新日:2017/08/11

今上天皇の生前退位に注目が集まっている。先月末の報道によれば、陛下の退位と改元の期日を9月中に決定し、公表する予定とのこと。この生前退位の話題の際、同時に注目を浴びたのが「三種の神器は非課税」というキーワードだ。なぜこの言葉が浮上してきたのか。これには、生前退位の前提がそもそもなかった相続税法の構成に原因がある。

■相続税法は「生前」の贈与と「死後」の相続の課税関係について書かれたもの

まず相続税法の構成から確認しよう。相続税法は、資産を持つ人が亡くなった場合の承継に係る課税関係だけでなく、資産を持つ人が生存中に行った贈与に係る課税関係についても示されている。

相続税と贈与税の2つの税目がなぜ1つの相続税法で規定されているのだろうか。相続は資産の持ち主の「死亡時」に行われるものである。「死亡」に係る相続についてのみ規定すると、「生前」に行われる贈与を抜け穴とした課税回避が多発することが予測される。この課税回避を防ぐため、1つの税法の中で両方の課税関係について漏れなく規定したのだ。

なお、天皇にも相続税が課税される。なぜかというと、相続税法第一条の三(相続税の納税義務者)において、納税すべき者についてはあくまでも「個人」として表記されるからだ。個人ということは国民に限らず皇族をも含む。事実、昭和天皇崩御の際、今上天皇は4億円超の相続税を納付した。

■三種の神器が非課税になるのはあくまでも相続税のみ

「三種の神器は非課税」の「非課税」とは「贈与税が非課税」という意味だ。なぜこれが生前退位のニュースに伴い注目を浴びたのか。そのカギは、三種の神器に対する相続税と贈与税の法規定の違いにある。

相続税法第十二条は相続税の非課税財産についての規定なのだが、そこにはこのように書かれている。

「次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。一 皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣(※)が受けた物」※皇嗣…天皇の跡継ぎのこと

そして皇室経済法第七条は、次のように書かれている。

「皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。」

この「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」には皇位の象徴である三種の神器を含む。三種の神器は憲法上の特殊な地位に付随するもので、自由な処分が不可能であることから、相続税の対象から外しているのである。

一方、贈与税にも非課税財産の規定がある。これは相続税法第二十一条の三に規定されているのだが、こちらには三種の神器が含まれていない。

これは、明治22年に制定された旧皇室典範法第十条にて、天皇の生前譲位が禁止された流れを汲んでいる。戦後の昭和22年に制定された現行の皇室典範法でも「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」として、天皇の終身制が規定されている。そのため、同年の相続税法全部改正もこの天皇終身制を前提とした構成となったのである。

過去の歴史では、上皇と天皇といった二大勢力で日本に混乱がもたらされるという事態がたびたび発生した。歴史が近代になるにつれ、政治の中心は皇室から離れていったものの、今度は「朝廷対幕府」といった対立構造を招くことになった。こういった政治上の混乱を避け、中央集権化を進めるべく、皇室典範という法律により天皇の終身制と皇位継承が明確に規定されたものと思われる。

■「三種の神器は贈与税非課税」規定が退位特例法にある理由

では今回の生前退位に伴い、三種の神器に対する贈与税非課税の規定はどこにもうけられたのだろうか。これは相続税法ではなく、生前退位に伴い成立した皇室典範特例法(以下、「退位特例法」)第七条にある。

退位特例法第七条は、次のような内容だ。

「1. 第二条の規定により皇位の継承があった場合において皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物については、贈与税を課さない。2. 前項の規定により贈与税を課さないこととされた物については、相続税法第十九条第一項の規定は、適用しない。」

第1項(附番がない文)は、三種の神器についての非課税規定だ。また、次に続く第2項は、相続開始前3年以内の生前贈与加算に関する規定について書かれている。生前贈与加算とは、相続開始前3年以内に贈与された財産については、相続税の計算対象とするという相続税法上の規定だ。つまり、この第2項は、三種の神器の贈与後、天皇の崩御が生じても相続税の計算対象としない旨を明記したものとなる。

このように、相続税法を書き換えるのではなく、退位特例法で規定した背景には、天皇の生前退位を今回限りにし、天皇の終身制そのものは基本的に今後も維持する意向があるからと思われる。

ご高齢を迎えてなお公務に励まれる天皇陛下は、日々分刻みのスケジュールに追われているという話をよく聞く。一般国民からすると、憲法の条文通り「日本の象徴」というイメージしかないが、実際には書類決裁や儀式、祭祀といった激務に追われ、代休すらない状況だ。病気だからといって決裁を休んでしまうと、法律の公布を遅らせることになるが、これ自体が憲法違反になってしまう。緊張を伴う日々であることが想像できる。

実際の生前退位までにはまだ日があるが、順調に手続きが進み、今上天皇の「お気持ち」が誰からも尊重されることを願ってやまない。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「税理士がつぶやくおカネのカラクリ(http://ameblo.jp/mayusuzu8/)

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