過酷な夏の部活動が、わが子の人生を大きく狂わせるかもしれない

過酷な夏の部活動が、わが子の人生を大きく狂わせるかもしれない

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/08/12
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夏休みまっただ中の今、小学生から高校生まで、炎天下で部活動・クラブ活動に励んでいる子供たちも多いことだろう。だが、中には「ブラック」な指導で取り返しのつかないダメージを負ってしまうケースさえある。『部活があぶない』の著者の島沢優子氏が、ハイリスクなその実態を明かす。

「墓参りと試合、どっちが大事なんだよ?」

学校の夏休み。子どもはのんびりできていいなと大人は思うかもしれないが、スポーツをしている小学生はかなり忙しい。

関西地方で息子をサッカークラブに通わせる女性はため息まじりでこう話した。

「関東への遠征や、大会がひっきりなしにあるので本当に忙しいです。結構強いクラブなので仕方ないかなとは思いますが……」

人が動けばお金もかかる。大阪から東京あたりまで夏休みに遠征するとあって、息子のサッカーだけでひと夏で20万円以上かかるという。

お盆くらいは休めますよね? という質問に、女性は首を振った。

「お盆休みは近隣だと逆に車が混まないので、バンバン遠征が入ります。お休みはないんです」

昨夏に都内で少年野球の大会を取材したときのこと。木陰に移動もせず炎天下で子どもを前にミーティングをしていた指導者は、ひとりの小学生を立たせて何事か話していた。

「どうして墓参り行くの?試合が優先でしょ?」

あれれ?なんだか見たことのある光景。実は少年サッカーでも、数年前に同じ状況に出くわしたのだ。

「なんで試合に来れないの?墓参り?おまえ、墓参りと試合、どっちが大事なんだよ?」

少年は泣きそうになりながら「試合……」とつぶやいた。

「試合が最優先」という少年スポーツの指導者の教えは、中学生以降はそのまま「部活が最優先」という価値観を植え付ける。

先月刊行した『部活があぶない』の執筆では、少年スポーツも取材してきた。部活動と言えば中高校生が所属するものだが、長時間で決まった休日もなく活動させられるブラック部活の背後に、少年スポーツの存在があると感じたからだ。

「スポーツ=理不尽」と刷り込まれる

日本サッカー協会が設けた指導者らの暴力や差別を対象にした「暴力根絶相談窓口」に13年6月からの3年半の間に寄せられた相談300件あまりのうちのおよそ半分が、小学生が被害対象だった。

これはサッカーだけの特殊事項ではない。日本体育協会が設置した同様の窓口でも、小学生が6割。他競技も含め、小学生の部活と言われるスポーツ少年団などが暴力と決して無縁ではないことがわかる。

親や子にとってスポーツ少年団の指導者は、はじめて出会う指導者だ。その影響は計り知れない。もちろん、日本のスポーツの底辺を支える少年スポーツの指導者は、貴重な存在だ。他に仕事を持つボランティアのコーチが休日を費やして指導している割合が圧倒的に多い。だが、無報酬で担うだけに、甘えやおごりも生じる。

少年サッカー、少年野球やミニバスケットボールなど、小学生の時から活動過多の状態と理不尽な指導法を「スポーツはこんなものだ」と思い込まされる。特に活動過多に対するこうした鈍感さは、最も大きな問題を引き起こす。

それは、人生を左右しかねないケガの問題だ。

後遺症が出ては元も子もない

夕方の整骨院もしくは整形外科に足を運ばれると、すぐに気づかれるだろう。待合室は、部活帰りもしくは、スポーツ障害などで競技を続行できず通ってくる中高生に埋め尽くされていること、おまけに小学生も少なくないことを。

欧米で仕事をしたことのあるメディカルトレーナーを複数取材したことがある。全員が「これだけ多くの子どもたちが整骨院やスポーツ整形外科に通うのは日本くらい」と異口同音に話した。日本では、なんとなく見慣れてしまっている光景だが、小学生や中学生が低周波治療を受けるなど、実は異常なことなのだ。

どの生徒も「オーバーユース」とも言われるスポーツ障害を発症しているケースが多い。これは、繰り返しの負荷が一定の部位に過度にかかることで、徐々に痛みが増してくる慢性のケガのことだ。

ジュニアや中高生のスポーツ障害に詳しく、『子どものスポーツ障害こう防ぐ、こう治す』を著した柏口新二さんは以前、東京厚生年金病院整形外科部長として、放課後しか通院できない生徒のためのスポーツ外来を設けていた。

「競技人口の多さもあって、野球やサッカーを幼年期や低学年から続けている男子に目立つ。小学生時代から無理を重ねているのに、中学、高校の部活でさらに負荷をかけてしまう。特に高校生は夜遅くまでの練習、遠距離通学、さらには朝練まであるため、睡眠時間が5時間を切るという子も少なくない」

そのため疲労骨折を発症したり、すでに痛んでいるところがあるため、ほかのケガも起きやすくなる。指導者に障害についての知識がなく、自身の経験だけに基づいた指導が目立つと柏口さんは言う。

指導者が無理にやらせる。だから、選手も無理にやってしまう。勝利を追求するあまり、選手生命が危ぶまれるところまで追い込まれてしまう。主に痛める部位は、野球ではひじと肩、サッカーでは足の甲、膝や腰の関節部分だ。

「子どもは大人のミニチュアではない」と言われるように、成長期の子どもの骨や体は傷つきやすい。部活の競技をずっと継続してトップアスリートを目指したいと思っても、間違った指導や左右のバランスの悪さが災いしてケガをしやすかったり、プレーに及ぼす影響は少なくない。負った障害の後遺症が、大人になってから健康的な生活を脅かす可能性だって無視できない。

柏口さんによると、成長期のスポーツ障害の怖いところは、静かに進行することだ。
痛みがあっても、翌日はあっけなくひくことが少なくない。そのため、本人も親も深刻に捉えず、痛みが慢性的になったときは手遅れになっている。しかも、痛みもなく悪化するケースすらあるという。

小学生から高校生に至るまで、子どもを蝕む部活による体の酷使は、今、起こっている。“暴力指導がないからブラックじゃない”などと、安心してはいけない。保護者は、指導者が生徒の健康を保つよう力を注いでいるか、子どもが無理しすぎていないかを常に注視したほうがいい。

夏の大会に熱中するのもいいが、人生に大きな傷を残さぬように。

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学校、保護者、そして社会がブラック部活をつくりだす。では、本当の強さを手に入れるための打開策とは? 日経新聞(7/22)に、「日本の組織に普遍的な処方箋」という書評も掲載された話題の一冊

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