ニューノーマル時代の「上司力」 第6回 ITツールの進化で混乱するリモートワークコミュニケーションの解決法

ニューノーマル時代の「上司力」 第6回 ITツールの進化で混乱するリモートワークコミュニケーションの解決法

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/07/21
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リモートワーク下で「支援型マネジメント」を進めるための第4のポイントは、「ITツールの習熟化」だ。遠隔での上司・部下間やチーム内での報・連・相(報告・連絡・相談)や会議には、パソコンやタブレット端末などを活用したITツールが不可欠。これらに習熟しておくことは、もはや上司の必須スキルなのだ。

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今回は、ITツールを円滑にマネジメント利用する上での心得と、習熟のポイントを押さえておきたい。

では、あるオンライン会議の場面事例から考えてみよう。
○リモートで生じがちなコミュニケーションロス

上司: 「(少々苛立ちながら)いつまで待っても、先日の結果報告がないじゃないか!」
部下: 「(驚きながら)えっ! 課長、それは、もう3日前にチャットで報告済みですが……」
上司: 「えっ、そうなのか!……しかし、そらならそうと、きちんとそのことを連絡してもらわないと困るな!」
部下: 「あ?……はい……(その連絡のツールがチャットなのに、ちゃんとチェックしてくれないと仕事にならないなぁ……)」

……皆さんの職場では、こんなコミュニケーションロスは起きていないだろうか?

これまでのリアル・コミュニケーションでは、日々対面での報・連・相や、会議、面談、書類の回覧などで、随時必要な情報交換を行ってきた。しかし、リモートワークでは多様なITツールを利用することから、それらをいかに混乱なく円滑に活用するか、ルールづくりが必要になる。
○ツールの習熟には、若手を頼る

準備の第一段階は、上司自身がZoom、Chatwork、Teams、Slackなど主なITツールを自ら使い、その特性を理解することだ。もちろん書籍やセミナー受講も有効だが、ともあれ自ら体験して覚えることだ。また、この分野はデジタルネイティブな若手ほど得意な傾向がある。臆せず部下や後輩にツールの使い方を訊き、習うようにしよう。

テクニカルスキルで、上司が優位に立つことにこだわる必要はない。部下が得意なことには素直に頼るのも上司力の一つ。部下の強みを活かすことにも通じるからだ。

また、ITツールはどんどんバージョンアップしていくことから、基本を習った後も最新情報や使い方はぜひ教えてもらおう。特にIT通の部下がいれば、チームの中の役割として情報のシェアを促し、柔軟に取り入れることが賢明だ。
○各ツールに相応しい役割を見極める

準備の第二段階は、どのやりとりをどのツールで行うのが効果的か、各ツールに相応しい役割を見極めながら職場での使い分けのルールを定めることだ。

各ツールの役割を整理する一つの方法例として、図を参考にしてほしい。縦軸は上がフォーマルで、下がインフォーマルな情報。横軸は左がリアルタイムで、右がタイムラグがあってもよい情報の、4象限に区分したものだ。以下、それぞれの象限の意味と特徴を説明しよう。

【左上】フォーマルでリアルタイムが望まれる内容は、WEBオンラインの会議や面談で。またより緊急性が高い内容は電話で。それぞれ、双方向のコミュニケーションをしっかり図りたい。

【右上】確実な情報伝達が必要な内容、また情報量が多い内容などで、若干のタイムラグが許されるものなど。メールや映像・動画などで確実に漏れなく伝えよう。

【左下】仕事上の軽い相談や、インフォーマルな情報交換など。メンバー間でのちょっとした連絡を手軽に、早めに行いたい時は、チャットが便利だろう。

【右下】社内の仲間意識やチームワークの向上には、社内SNS上にテーマ別の自由に参加できる会議室を設けることもよい。社内サークルをつくり、趣味の情報交換を促進するのも効果的だ。
○ツール利用のルールを定め、共有する

各ツールの特性に応じた効果的な利用方法の見極めが進んだら、チーム内での具体的な利用ルールに整理しよう。表はその整理に使えるフォーマット例だ。

具体的な会議や報・連・相などの情報内容別に、目的や参加メンバー、どのITツールを利用するかルールを定める。これをメンバーで共有することで、コミュニケーションロスを防ぐことができ、ツールの有効活用にも役立つ。

職場で必要な情報交換の内容や特徴、利用できるツール、今後強化したいコミュニケーションの方法など、実状に沿って検討を行い、前向きなルールを定めるとよい。
○「リアルでしかできない」との固定観念を見直す

あなた自身や周囲では、このような傾向はないだろうか。

上司: 「君たちも最近はリモートワークばかりの巣ごもり状態で、大変じゃないか? うまく情報交換できず仕事は大丈夫か? やはり、リアルでの仕事や相談が一番安心だろう」
部下: 「いえ。通勤時間が減りストレスもなく、仕事に集中できて、とてもはかどっています。必要な情報交換や資料の入手は、メールや社内のデータ共有システムで十分できますし」
上司: 「そうか……。でも、仲間どうしの気楽な雑談や相談が減って、不安や寂しいこともあるんじゃないか?」
部下: 「チームメンバー同士のちょっとした雑談や相談はチャットで毎日やり取りしていますよ。先週も有志でオンライン飲み会をやって、結構盛り上がったんですよ〜」
上司: 「えっ! そうなのか……(不安で寂しいのは、こっちだけか〜。飲み会に声くらいかけてくれてもいいのにな〜)」

リモートワークに関するある意識調査では、「上司は寂しく、部下は気楽」という象徴的な結果が目を引いた。もちろん長引くコロナ禍で、社員の孤立化とメンタル面の不安も高まっているが、傾向としては若者のほうがリモートワーク環境に馴染んでいる。一方で、自分自身がリアル・コミュニケーションだけで仕事をしてきた昭和世代の上司は、とかくリアルが一番と思いがちだ。また、部下の様子が見えづらく、報・連・相が不十分と感じる不安もあるだろう。

しかし、若手世代はITツールでのコミュニケーションに慣れており、子育てや介護などと仕事を両立する部下なら、リモートワークのほうが効率的と考えることもあるだろう。上司は「リアルこそ重要」という自分の固定観念を見直し、意識ギャップをも乗り越えていく心構えが大切だ。
○リモートとリアルは不可分な相互補完関係、ITツールの習熟化度合いが企業差となる

さらに押さえておくべきは、ITツールによるリモートと対面によるリアルのコミュニケーションは、互いにトレードオフの関係ではなく、相互補完関係にあると心得ることだ。否応なしにITツールの活用が始まった初期には、いかにリアルをITツールに置き換えるかに捕らわれがちだった。しかし今では、それぞれの長所と短所を認識した上で、両方を上手に組み合わせて活用し、相乗効果を高める視点が大切になってきているのだ。

本連載の前半で取り上げた、期初の育成面談や任用(動機づけ)面談、また要所での振り返りなど、節目のコミュニケーションはリアルでしっかり行うのが適切かもしれない。一方、この面談などで信頼関係ができていれば、日常の報・連・相やミーティングはリモートで十分行える。
最近の企業調査でも、完全リモートではなく、週に数日の出勤と在宅勤務を組み合わせる職場が多い傾向が示されている。

グループ企業内の会議や研修に、全国オンライン方式を導入したことで、従来の社員を一堂に集める方法の限界を超えた事例もある。また、オフィスワークのみならず、工場でのリモートワーク導入を図る企業も出てきた。さらに、居住地を問わないことで、全国の優秀人材の採用に乗り出した企業も現れている。

ITツールの習熟化と有効活用の差が、企業力の差に現れる時代に入っているのだ。

(株)FeelWorks代表取締役 : 前川孝雄 まえかわたかお (株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師/情報経営イノベーション専門職大学客員教授 。 人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。(株)リクルートを経て、2008年に人材育成の専門家集団(株)FeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ、バワハラ予防講座」等で、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、(一社)企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員等も兼職。連載や講演活動も多数。著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)等33冊。最新刊は『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)及び『本物の上司力〜「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)。 この著者の記事一覧はこちら

前川孝雄

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