娘の夜泣きで得たチャンス。滑り込み出場で第1シードを撃破!

娘の夜泣きで得たチャンス。滑り込み出場で第1シードを撃破!

  • WOWOWテニスワールド
  • 更新日:2022/05/13
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「ATP1000 ローマ」(イタリア・ローマ/5月8日~5月15日/クレーコート)の男子ダブルスに急遽代役として出場し、初戦で第1シードを撃破したペアが送った激動の数日間を、ATP(男子プロテニス協会)公式ウェブサイトが紹介している。

「ATP1000 ローマ」の男子ダブルスに出場予定だったカレン・ハチャノフ(ロシア)/アンドレイ・ルブレフ(ロシア)ペアが直前で辞退したため、ダブルス世界ランキング52位のハリ・ヘリオバーラ(フィンランド)と同71位のロイド・グラスプール(イギリス)がその穴を埋めることになった。この時、グラスプールはロンドン、ヘリオバーラはヘルシンキにいたが、大慌てでローマへ向かうことに。

11日の午前2時、娘の夜泣きで目を覚ましたヘリオバーラが携帯電話を見ると、グラスプールからの着信がおよそ20回も記録されていた。何事かと思い、すぐさまかけ直したヘリオバーラは本戦に空きが出たことを知らされ、二人はその場で出場を決意。「その日はちょうど娘の1歳の誕生日だったから、きっとこれは彼女からのバースデーサプライズだよ。僕を起こして大会に出場するチャンスをくれたんだからね」とヘリオバーラは話している。

その数時間前の10日の夜10時半、大会側から連絡を受けて出場するチャンスがあることを知ったグラスプールは、必死にヘリオバーラをつかまえようとしていた。彼の兄弟や妻にも電話したが、誰もつながらなかったという。その後、ヘリオバーラの娘の協力もあり連絡がついた二人だが、そこから会場に向かうまでも慌ただしい展開は続いた。

「そのまま朝6時のフライトに飛び乗ったよ。アラームで起きられなくて、空港に着く頃には荷物のチェックインは終わっているような時間になってしまったから、ラケット2本と靴と試合用のウェア一式だけ持って、ギリギリで乗れたんだ」とグラスプールは回想する。ローマの空港で落ち合った二人は、空港から会場へ直行。「手荷物もないのに、ホテルに寄る必要はないだろ?」とヘリオバーラが言い、二人は声をあげて笑った。「(初戦で)負けたらその日の夜に帰るつもりだったんだ」

その後も、第1シードのラジーブ・ラム(アメリカ)/ジョー・ソールズベリー(イギリス)ペアとの対戦に向けて起きたドタバタ劇をグラスプールはこう振り返っている。「会場に着いてからはどこに何があるのかがまったくわからなくて、そのままウォーミングアップを始めたよ。ジムや練習のための受付がどこにあるかもわからなかったから、かなりクレイジーな状況だったね。でも、対戦相手の一人は僕と同じイギリス人で、よく練習していた選手だったから、僕自身は試合で思ったほど緊張しなかった。彼のおかげでプレッシャーが軽くなった気がするよ」

そんな二人は1回戦で7-6(5)、6-3のストレート勝利を収め、いきなりの番狂わせを演じた。ヘリオバーラが「正直に言って、コートに立った時の気分は最高だった。こんな風にプレッシャーがまったくない中でもっとプレーできるといいね。失うものは何もないと思っていたから、自由にスウィングして最善を尽くすことができた。すごくいいプレーができたよ」と語れば、グラスプールも「こんなに自由にプレーできるなんて、僕にとっては目からウロコだった」と続けている。

喜びに浸ったのも束の間、翌12日にはシングルスの選手としても活躍するフランシス・ティアフォー(アメリカ)/タナシ・コキナキス(オーストラリア)ペアとの対戦が待っていた。

この2日目も慌ただしい朝を迎えたグラスプールはこう話す。「前の夜に1時間くらいしか眠れなかったからすごく疲れていて、この日もアラームに気づかなかったんだ。10時に迎えの車が来るのに、起きたのが10時だった。普段ならパニックになるところだけど、“今週はこういう運命なんだ。とにかく会場にさえ行けば問題なく練習できる”って自分に言い聞かせることができた。反ってプレッシャーがなくなったね。すべてが完璧である必要がないことを学んだから、これからもそれを忘れないようにするよ」

ティアフォーとコキナキスを応援する観客の前で、グラスプールとヘリオバーラはスリリングな試合を繰り広げ、6-3、3-6、[10-8]で2回戦も突破。「この時はさすがにプレッシャーを感じたよ。ダブルス専門の僕たちがシングルスを主戦場とする選手と戦っているわけだからね。彼らはかなりリラックスした様子だった。プレッシャーを背負うのは僕たちの番で、観客は相手に声援を送っていた。普段に近い状況というか、仕事に戻ったって感じだったね」とグラスプールは説明する。

二人は昨年の「ATP250 マルセイユ」で優勝、今年の「ATP250 モンペリエ」と「ATP250 ダラス」で準優勝を飾っているが、マスターズ1000大会の出場はグラスプールにとって2回目、ヘリオバーラにとっては初めてとなる。ペアとして2度出場したことのあるグランドスラムと比較して、「似たような雰囲気だ」とヘリオバーラは言う。「観客の人数もかなり多いし、女子と男子、すべての競技が行われる大きな大会だ。こういう大会を僕たちは目指している」

必要最低限の荷物で大会に駆けつけた二人は、靴下や着替えが足りなくなってきているという。だが、それよりも重要なのは、ベスト4進出をかけたジョン・イズナー(アメリカ)/ディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)ペアとの準々決勝だ。思わぬ形で始まったローマでの冒険はどこまで続くだろうか。

(WOWOWテニスワールド編集部)

※写真は「全豪オープン」でのグラスプールとヘリオバーラ(左より)
(Photo by Mark Metcalfe/Getty Images)

WOWOWテニスワールド編集部

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