『らんまん』要潤演じる田邊は“悪役”か? 週タイトル「シロツメクサ」が意味するもの

『らんまん』要潤演じる田邊は“悪役”か? 週タイトル「シロツメクサ」が意味するもの

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  • 更新日:2023/05/26
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『らんまん』写真提供=NHK

植物図鑑を作るという生涯を懸けた仕事を見つけた万太郎(神木隆之介)。『らんまん』(NHK総合)第40話では、その勢いのまま植物学教室の波多野(前原滉)、藤丸(前原瑞樹)らと植物学の雑誌を作る決意を固める。先輩として少し先を歩く丈之助(山脇辰哉)の勧めもあるが、万太郎自身も出版物の成り立ちに興味があり、何より雑誌を制作するということは必ず図鑑へと続いていると万太郎には確信めいた思いがあったのだ。

参考:『らんまん』を成立させた神木隆之介の愛され力 男性主人公朝ドラを切り開くきっかけに

キノコの研究がしたい藤丸に、朝顔の品種の掛け合わせを調べたい波多野。3人(プラス1人)は牛鍋屋で意気投合するものの、その道の途中には田邊教授(要潤)を口説くという難関が立ちはだかっている。

その頃、田邊は管弦楽協会理事の名須川(町田水城)、政府高官の佐伯(石川禅)、元薩摩藩士の実業家・高藤(伊礼彼方)とクララ・ローレンス(アナンダ・ジェイコブズ)のピアノ演奏を聴きながら、優雅に紅茶を嗜んでいた。彼らは鹿鳴館の計画に関わっている面々で、舞踏会に通ずる西洋音楽を楽しんでいたといったところだろうか。だがそれは名須川が触れているように、文明国を装ったポーズに過ぎず、庶民にはまだまだ文明開化の音はしてはいなかった。その好例が万太郎が住んでいる「クサ長屋」こと十徳長屋である。

コーネル大学で学んだきたことを自負する田邊は、先鋭的な感覚と考えの持ち主だ。「民権踊り」や「よしや節」といった当時のいわゆる労働歌を“古い音楽”であり“下品な歌”と否定し、当時としてはまだ恥ずかしい行為という認識が根強くあった男性と女性が手を取って踊るということを舞踏会を通して推奨しようとする。田邊の考えに賛同しながらも、どこか不服そうな態度を示すのが、薩摩弁が強烈な高藤。拡大解釈をすれば、果たして舞踏会を開催してなんの意味があるのかとも言いたげな物言いだ。

そこに使いの者としてやって来るのが、寿恵子(浜辺美波)。白梅堂の菓子を届けに屋敷を訪れたのだ。田邊、名須川、佐伯、高藤は寿恵子に興味津々。特に高藤は寿恵子が部屋に入って来るや否や、ティーカップを片手に思わず二度見(!)を決めている。舞踏練習会について叔母のみえ(宮澤エマ)から事前に聞いていた寿恵子は、「西洋の音楽が大層美しいものだと」と笑顔で返答。その一言に田邊も思わずニンマリ顔だ。さっきまで険悪ムードを放っていた高藤も「寿恵子」を通じて田邊らと意見が一致。それは舞踏練習会に寿恵子を参加させるということ。高藤はすっかり舞踏会に向けてノリノリだ。

この第8週のタイトルは「シロツメクサ」。我々現代人にとっては「クローバー」の名の方が広く知られているかもしれない。「四つ葉のクローバー」が幸運のシンボルだというのは、クロス――十字架に通ずるキリストの三位一体からきている。1枚の絵に植物の一生を描いた万太郎の植物画を見て、「確かに、神は私に幸運を遣わせてくださった」と田邊はつぶやく。植物学教室の片隅にそっと置かれた四つ葉のシロツメクサ。果たしてそれは万太郎にとって、本当に幸運を運んでくれるのだろうか。雷鳴轟く不吉な予感が植物学教室を包み込んでいる。

(文=渡辺彰浩)

渡辺彰浩

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