【絶望から希望へ:神戸刑務所編】その時、懲役は飛んだ!突然の顔面飛び蹴り!!️「西」の男たちの熱い突破者精神《さかはらじん懲役合計21年2カ月》

【絶望から希望へ:神戸刑務所編】その時、懲役は飛んだ!突然の顔面飛び蹴り!!️「西」の男たちの熱い突破者精神《さかはらじん懲役合計21年2カ月》

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  • 更新日:2021/01/12

人は絶望からどう立ち直ることができるのか。
人は悪の道からどのように社会と折り合いをつけることができるのか。
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。実刑2年2カ月!
じんさん、今度は神戸刑務所に3年間お世話になります。西の塀の中はお笑い劇場なみの面白さ。どん底でもどこか明るいそんな生活に気持ちが明るくなってきました。希望は、そんな「小さな面白さ」から育っていくような感じかもしれません。今回は、ガチンコのバチコンなお話。

■その時、懲役は飛んだ!「西」の男たちの熱い突破者精神

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ある運動時間のとき、こんなことがあった。
運動を行うときには運動員の号令の下、必ず準備体操を行うことになっていた。それが終わると自由運動となり、その場で解散になる。懲役たちは数本しかない爪切りを巡って我先にと爪切りの入っ た箱を抱えて立っている担当の前にすっ飛んで行く。そして早い者順に一列に並ぶ。その数はざっと 30人から40人にもなり、いつも長蛇の列になっていた。

運動時間は30分。その間に爪切りの順番が回ってくればいいが、回ってこなければ〝御茶を挽く〟破目になってしまい、運動も爪切りもできなくなってしまう。

だから、この30分は貴重な時間だった。誰しもが我先にと競って担当の前に並び、少しでも早く 爪切りを借りられるようにするのである。

そんな順番を待って並んでいる懲役たちの列に、映画にもなった親分の元若い衆だと名乗る、身体がデカく、いかにもふてぶてしい面をした奴があとから来て、平気な顔で割り込んだのだ。

すぐ後ろの割り込まれた懲役が、割り込んだ懲役に何か言い始めた。すると、かなり後ろの方で順番を待っていた、痩せてヒョロリとした30代くらいの不良っぽく見えない懲役の一人が黙って列から外れると、割り込んだ奴の横の方へ大きく回り、そして割り込んだ奴に向かって突然走り出し、プロレスでやるような飛び蹴りを勢いよく顔面に入れたのである。

割り込んだ懲役は突然襲ってきた飛び蹴りに、見事に顔面を蹴られて吹き飛んでしまった。やった懲役はすぐ担当に取り押さえられてしまい、非常ベルで駆けつけてきた警備隊に連行されて行ってしまった。文字通り〝飛んだ〟懲役は、割り込まれて文句を言っていた懲役の舎弟分だったのだ。

自分の兄ィの前に割り込みをかけてきた不逞の輩(やから)に、躊躇なく反応して飛んだその素早い行動力と姿勢に、ボクは「西」の男たちの熱い突破者精神を垣間見た思いになった。

運動時間では、時にはこのようにして、いろいろな人間ドラマが上演されるのである。

◼︎ニイニイ、今度の運動の時間に、奴に飛びます

ボクのいる三級房は、懲役もどんどん入れ替わり、この頃にはある組織の下部団体に籍を置く、沖縄出身の竜也という、体形も顔も元横綱の曙にそっくりな奴がいた。

この竜也は両足水虫に侵されていて、部屋でも大変苦労しており、浮いた存在になっていた。しか し、ボクはそんな竜也と仲良くしていた。東京弁を使うボクも、冷たい感じがすると言われて、周り から一線を引かれていたからである。

竜也の事件は何であったか思い出さないが、二年未満の一番務め易い服役であったと思う。そんな 竜也とボクは打ち解け合い、いつしかお互いを「竜也」、「ニイニイ(アニキ)」と呼ぶようになっ ていた。

ボクがある日、「アニキ」と呼ぶ竜也に、「アニキでは周りの目もあるから、呼ぶなら沖縄の言葉 にしろよ」と言い、「ところで、沖縄では『アニキ』は何て呼ぶんだ?」と訊いて、「ニイニイ」に なったのだ。

しかし、水虫で両足に包帯を捲くほどになっていた竜也は、部屋の懲役たちがそのことを担当に直 訴したことから、やむなく独居へ移っていった。

その竜也が、同じ工場のどこかの不良崩れの懲役との確執から、「ニイニイ、満期で上がる前に奴 に〝飛び〟ます」と、その頃、食堂の座る場所が近かったことから、腹の虫が収まらないのか、ときどき、そんなことを昼食後の休憩のときに竜也は口にしていた。

竜也の満期はまだ先が8カ月もあった。ボクはそんな竜也に話した。
「そんなに悔しくて我慢できないなら、今やれよ。満期まで待っていたら、気が萎えるぞ。それに 現役が堅気に舐められてたんじゃ、笑い者だろう。本当に悔しいなら『鉄は熱いうちに打て』だ。オレは竜也がいなくなるのは本当は寂しい。でも、行く道を行くしかないだろう。それに自分に正義が あり、悔しいならなおさらだ。もし、我慢するなら、愚痴を言わずに出るまで我慢しろ。それができなければやることだ」

何日かすると、竜也が言ってきた。
「ニイニイ、今度の運動の時間に、奴に飛びます」

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(『ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜つづく)

さかはら じん

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