第一三共・研究員の妻が中毒死で再注目...意外と身近にある猛毒メタノールの危険性

第一三共・研究員の妻が中毒死で再注目...意外と身近にある猛毒メタノールの危険性

  • Business Journal
  • 更新日:2022/09/23
No image

メタノール(「Getty Images」より)

製薬大手「第一三共」(東京都中央区)の研究員が、妻を殺害した疑いで逮捕されるというショッキングなニュースが世間を賑わせている。

殺人容疑で逮捕された吉田佳右容疑者(40)は北海道大大学院を修了後、2007年に第一三共に研究員として入社という華々しい経歴を持つ。急性メタノール中毒で死亡した妻・容子さん(当時40歳)も京都大大学院修了後、同社に入社。そこで吉田容疑者と出会い、結婚、退職していた。

容子さんは化学薬品に関しての知識が十分にあり、メタノールを誤飲する可能性は低いと警察は判断し、吉田容疑者の逮捕に至った。逮捕後、吉田容疑者は容疑を否認している。状況からみて、化学薬品に詳しい吉田容疑者が、メタノールをなんらかの方法で容子さんに飲ませ殺害した可能性が濃厚と判断されているようだ。

メタノールによって人を殺害することは可能なのか。薬物中毒に詳しい竹内内科小児科医院院長、五藤良将医師に話を聞いた。

「メタノールとエタノールは、両方ともアルコールに属しています。その響きも似ているため、一般の方は混同しやすいかもしれませんが、その性質や使用目的は大きく異なります。メタノールは工業用や燃料用として使用されますが、非常に毒性が強くヒトの消毒に使用することはできません。メタノール原体は劇物に指定されています。しかし、メタノールを含む製剤は劇物に指定されていないため、今回のような事件に使われてしまう可能性もあると思います」

五藤医師が解説するように、化学式で示すとエタノール(エチルアルコール)はC₂H₅OH、メタノール(メチルアルコール)はCH₃OHで、構造が異なることが一目でわかる。過去にもメタノールの誤飲による事故は起きており、化学や医療に知識がある人であればメタノールが危険なものであることは熟知している。

「医学や薬学に関わる人であれば、メタノールの危険性を知らない人はいないと思います。また、アメリカで禁酒法によってアルコールの製造、販売、輸送が全面的に禁止されていた1920年代には、メタノールを含む工業用アルコールを蒸留してエタノールのみを取り出し、闇取引が行われていたといわれ、その際、十分に蒸留せずにメタノールの残ったアルコールが流通し、多くの人が命を落としたことは有名な話です」

メタノール中毒とは

「メタノール中毒とは、言葉のとおり、メタノールを摂取することによって起きる中毒症状です。メタノールは別名「目散るアルコール」と表現され、摂取すると目がチカチカするような症状が起こります。メタノールを摂取後、早い段階で酩酊状態となり、その後、メタノールが体の中で代謝されることによって生じる『ギ酸』が蓄積するため、頭痛,嘔気,嘔吐,腹痛、視覚障害などが起きます。さらに、ギ酸が蓄積すれば、代謝性アシドーシス,過呼吸,昏睡,痙攣と症状が進み、死に至ります」

メタノールの致死量は、口から摂取した場合は30~100mLといわれるが、それより少ない量でも死に至る場合があるという。

「メタノールは消化管からの吸収が非常に早く、摂取後、少なくとも1時間以内には、胃洗浄などの解毒処置を行うことが望ましいと思います」

メタノールは、ドラッグストアなどでも販売される燃料用アルコールに含まれ、エタノールを含む消毒用アルコールと同棚で販売されているため、意外と危険性が一般に広く知られてはいないのだろう。コロナ禍で消毒用アルコールが品薄になった際、燃料用アルコールを購入する人がいたため、厚生労働省でも注意喚起している。

また、コロナ禍に消毒用アルコールを幼児が誤飲し、急性アルコール中毒になったという事例もあった。万が一、燃料用アルコールを消毒用に使用していたら、想定外の誤飲事故が起きる可能性もある。消毒用アルコールとの取り違いには十分に注意してほしい。

吉田容疑者の事件を模倣してメタノールが悪用されることがないように、厚生労働省はメタノール含有製剤の取り扱いについて、なんらかの規制を設けるべきかもしれない。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加