【映画評】三里塚のイカロス

【映画評】三里塚のイカロス

  • アゴラ
  • 更新日:2017/09/15

1960年代、千葉県成田市三里塚地区。巨大国際空港建設のため突然立ち退きを要求された人々が、空港建設に反対して立ち上がった。主に農民たちが主導したその闘争には、武装した若者たちが全国から参加し、抵抗運動は激化していった。当時の闘争の責任者、農民運動家、地元農家の若者と結婚した女性らの証言をもとに、三里塚闘争とは何だったのか、あの時代とは何だったのかを検証していく…。

成田国際空港建設に反対した三里塚闘争に参加した農民たちと彼らに賛同した若者たちの生き様を描くドキュメンタリー「三里塚のイカロス」。同じ三里塚闘争を扱った記録映画「三里塚に生きる」(2014)の姉妹編である。「三里塚に生きる」が農民を描いたのに対し、本作では、農民たちを支持して共闘した若者たちにスポットを当てている。土地を暴力的に収奪した国家権力に対峙した農民を助けることで、若者たちは革命の拠点となった三里塚から、社会変革を成し遂げられると信じたのだ。

政治の季節は去り、本気で世界を変えられると信じた熱気は、今はもうない。成田国際空港も、規制の事実となり、現代の若者たちはサンリヅカの地から、楽しそうに海外旅行に出かけていく。この映画は、あの時代を生きた人々、とりわけ、今まで語りたくても語ることができなかった思いや事実を抱えてその後の人生を歩んできた人々の、集合写真のような役割を果たしている。特に、農民支援に入った農家の若者と結婚し、その土地に根をはった女性たちや、用地買収を担当した元空港公団職員らの言葉が聞けるのは、貴重だ。農民と若者たちは、単純な勝ち負けでは語れない歴史を共有したのである。本作は、三里塚闘争に身を投じた若者たちを、太陽に近づきすぎて墜落したイカロスに例えている。イカロスは墜落したかもしれないが、確かに飛翔した。そのことを覚えておきたい。

【60点】

(原題「三里塚のイカロス」)

(日本/代島治彦監督/加瀬勉、岸宏一、秋葉恵美子、他)

(時代検証度:★★★★☆)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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