患者には出しても、医者なら「まず飲まない薬」

患者には出しても、医者なら「まず飲まない薬」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/05/20
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医者の半分は飲んでいない

「私は医者ですが、できるなら薬は飲まないのが一番いい。それは確信を持って言えます」

こう語るのは内科医で高雄病院理事長の江部康二氏。同氏は52歳のときに糖尿病と診断されながら、一切、薬は飲まずに食事療法と運動療法だけで、糖尿病を克服した。

「現在69歳になりますが、おかげさまで合併症(視力障害、腎臓障害など)もなく元気に過ごしています。

なぜ私が薬を飲まないのか。それはいくら薬を飲んでも糖尿病自体は治せないからです。薬をやめるとまた元に戻ってしまう。一生薬を飲み続けないといけないのは、大きな負担です」

多くの患者は、医師から「ちゃんと毎日飲み続けてください」「やめると悪化しますよ」と言われ、高血圧や糖尿病など生活習慣病の薬を長年飲んでいる。当然、患者たちは「病気を治すために薬を飲んでいる」と信じ込んでいる。

だが、それは大きな間違いであることを医師たちは知っている。事実、患者には出しても、極力自分では薬を飲みたくないという医師は多い。

江部氏が続ける。

「生活習慣の乱れが原因の2型糖尿病に薬は必要ない場合が多いと思っていますが、中でもグリミクロンやアマリールなどのSU薬は、糖尿病に詳しい医者であれば、まず飲みたがりません。

低血糖になりやすいからです。近年、SU薬は本来血糖値を抑えるべき食後ではなく、夜中に効き過ぎて『夜間低血糖』を引き起こしやすいこともわかってきました」

夜間低血糖が続くと心臓や認知機能に悪影響を与える。致死性の不整脈を起こして、突然死を招くこともあるのだ。

こんなデータがある。「日経メディカル」が医師2286人(30代以上)に健康状態についてアンケートを取ったところ、約68%の医師が、高血圧や脂質異常症など何らかの「持病」があると答えた。

その一方で「薬を常用しているか」という質問に対しては、服用していないが約53%、1種類の服用が16%、2~3種類が21%、4~5種類は7%にとどまった。

片や、患者を見てみると、日本老年医学会のデータによれば、40~64歳で5種類以上飲んでいる人は24%。65~74歳では30%にも上る。

患者には薬を出しながら、医者自身は薬を飲むメリットをあまり感じていないことが見てとれる。

なぜ、医師は自分では飲まないのに、患者には薬を出すのか。その理由の一つとして、医師たちは「ガイドラインに従って、基準値まで薬で下げておかないと、患者さんが脳卒中や心筋梗塞を起こした際に責任が取れないから」と主張する。

基準値に最も振り回されているのが、いまや国民病とも言える高血圧だ。4月末にはガイドラインの改訂により、目標値が「130/80mmHg」に引き下げられる予定で、このままいくと日本人の約半分の6300万人が高血圧と診断されてしまう。これはさすがに「目標値がおかしい」と言わざるを得ない。

現実問題として「若い人ならまだしも、高齢者まで薬で無理に血圧を下げる必要はない」と考える医師は意外と多い。

サン松本クリニック院長の松本光正氏(76歳)もその一人だ。自身も血圧、血糖値ともに基準値を超えることがあるが、「薬は飲んでいない」と言う。

「歳をとって血圧が上がるのは、自然なことです。血圧とは心臓から送り出される血流の強さ=生きる力でもあります。

薬で無理に血圧を下げると、血流が弱くなり、血栓が詰まる脳梗塞のリスクが上昇することは普通、医師ならだれでも知っていることです。

特にベテランの医師ほど、処方を控えるし、自分では薬を飲まない人が多いでしょう。それは歳をとると血圧は下げ過ぎるほうが、よっぽど怖いと知っているからです」

新薬も避けている

血圧に関しては、今年の2月にドイツでこんな論文が発表され、日本の医師の間でも話題を呼んでいる。

70歳以上の高齢者で降圧剤を飲んでいる患者約1600人を約5年間追跡したところ、80歳以上では血圧を低くコントロールしていた人のほうが、死亡数が多いことがわかった。

高血圧の専門医で東京女子医科大学東医療センターの渡辺尚彦氏(67歳)も続ける。

「私はストレスで血圧が乱高下するので、急激に上がったときには薬を飲むこともありますが、あくまで頓服(一時的な服用)にしています。

できるだけ薬には頼りたくないので、日々減塩に取り組んでいます。患者さんにも『1週間だけ』徹底的に減塩をしてもらいます。すると薬が必要なくなる人が結構いるのです」

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Photo by iStock

いくら医者が薬は必要ないと思っていても「患者自身が薬を欲しがっている」という側面もある。

『知ってはいけない薬のカラクリ』の著者で、ナビタスクリニック川崎の谷本哲也氏(46歳)が語る。

「病院に行く人は、そもそも薬を求めてやってきます。たとえ薬を出さなくても、結局は他の病院に行ってしまうので、『自分なら飲まないのにな……』と思いながら処方している医師もいます。

中でも鎮痛剤のリリカは、患者さんが『痛い』と言えば安易に出される薬ですが、めまいやむくみ、体重増加などの副作用があり、まれに意識を失って交通事故を起こしたなんて話も聞きます。多くの医師は一時的に飲むことはあっても、飲み続けることは避けます」

痛み止めや抗精神病薬、睡眠薬などは飲み続ければ、「耐性」ができるため、どんどん薬が効かなくなる。結果、薬の量が増加し、より強い薬を求めるという悪循環に陥る。

よく新しい薬が出るとそれに飛びつく患者がいる。だが、医師は自分で飲むことには慎重だ。

今冬、一気に普及したゾフルーザという新しいインフルエンザ薬がある。先頃(4月5日)、日本感染症学会は、ゾフルーザはタミフルなど従来の薬よりも高い割合で、薬が効きにくくなる「耐性ウイルス」が体にできることを発表。医療機関に注意喚起を促している。

「特に副作用がまだわからない新薬については、処方はしても医師は自分では飲みたがりません。単剤では問題なくとも、合併症や他の薬との飲み合わせにより、何が起こるかはっきりしていませんから」(谷本氏)

病院に訪れた際に一度「先生だったらこの薬を飲みますか」と聞いてみればいい。本当の名医とは、すぐ薬をくれる医者ではなく、なかなか薬をくれない医者である。

「週刊現代」2019年4月27日・5月4日合併号より

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