未成年の人工妊娠中絶数、年間約1万8000件 「日本の性教育は不徹底」

未成年の人工妊娠中絶数、年間約1万8000件 「日本の性教育は不徹底」

  • ITmedia ビジネスオンライン
  • 更新日:2016/10/19

意外と知らない教育現場のいま:

「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」(『去来抄』より引用)

この松尾芭蕉の言葉こそ、教育の真相を突いている。古い理(ことわり)にばかり縛られていると、社会も事業体も衰退してしまう。しかし、変えてはならない部分を変えてしまうと、今度は立ち所に瓦解を迎えてしまう。教育現場は経験の蓄積を大事にしつつも、つねに果敢な脱皮を繰り広げている。その実態を極力現場の声を拾いながら、伝えていきたい。

1979年に始まったTBSのドラマ、『3年B組金八先生』の第1弾は女生徒・浅井雪乃を巡る、「十五歳の母」が主要テーマだった。雪乃は学級委員を務めるほど成績優秀だったが、家庭内に不和があり、さらに優等生の宮沢保と恋に落ち、やがて妊娠してしまう。が、彼らは周囲の猛反対の中、出産という選択をするのだ。

私がちょうど中学に入った年に開始したドラマで、この展開をどこかおとぎ話のように感じていた。いくら親を説得できたところで、実際に未成年が赤児を育てるのは並大抵の苦労ではなかろう。自業自得……避妊をしなければ、当然こういう結果になるとクールにも眺めていた。妊娠に気づいたときは既に堕胎は不可能という設定だったが、そこまで今日の中学生は浅はかではないとも思った。

未成年の妊娠は別に罪ではないが、自分たちで責任を負えないことはなんであれ問題で、とても彼(彼女)らを温かい目では見守れない。が、これは個人の責任問題ではない。性教育を系統立てて授けていくシステムを構築できていない、文部科学省や厚生労働省に責任がある。そして、よしんば無知から「十五歳の母」が生まれたとしても、いまだ彼らをフォローアップする(いわば社会が子を守り育てる)体制を作れない少子化対策担当の内閣府の責任はさらに重い。

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未成年の人工妊娠中絶数は高いまま

資料からも分かる性教育の不徹底ぶり

「厚生労働省・衛生行政報告例 2014」によれば、2014年の10代の人工妊娠中絶件数は1万7854件。一方、10代の出生数は1万3011人(うち43人は14歳以下の母からの出生)である。つまり、陽の目を見ずに死んでしまう子の方が、陽の目を見る子より約5000人も多い。

実は10代の人工妊娠中絶率は1995〜2002年にかけて急上昇している。バブル崩壊後、それまでの女子大生ブームが終わり、「ブルセラショップ」などが台頭。女子高生の性の商品化が起こり、援助交際などが話題となったのがその頃だ。01年だと中絶総数34万1588件のうち未成年が4万6511件に上り、全体の13.6%を占めている。その頃と比べれば現在は減少傾向にあるが、依然として数字が高いことに変わりはない。

地域別に見てみると、10代の人工妊娠中絶は人口が突出して多い東京を除けば九州地方に多く、1位が福岡県、2位が鳥取県・3位が熊本県・4位が高知県・5位が北海道という順位になる。

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都道府県別の人工妊娠中絶数

性の健康教育を広げる活動を行うNPO法人ピルコン理事長の染矢明日香さんのヒアリング調査によると、「九州地方では実際、避妊に注意を払わない男性が多く、その結果生じる望まない妊娠の実例が跡を絶たない」という。

もちろん、福岡県や鳥取県でも学校ごとに性教育の指導はきちんと行っている。では、どうすればいいのか。性教育の効果が顕著に表れ、良い事例となったのは秋田県だ。

同県では、01年度の10代の人工妊娠中絶率は18.2%で、全国平均13%をだいぶ上回っていた。これに問題意識を持った同県は、医師らによる性教育講座を04年から県内全ての中学・高校でスタート。県を挙げての取り組みが功を奏し、11年には5.3%にまで減少、全国平均(7.1%)を下回った。

このように、県(行政)が主導して取り組めば、同県のように人工妊娠中絶率を減少させることができるはずだ。

若年出産が悪いわけではない

性知識をしっかり与える一方で、同時に教えねばならないのは行為の先に待ち受ける結果に対する責任だ。しっかりした愛情に基づく判断が出産なら、それが10代のうちであっても否定はできない――というのが私の考えである。

若年出産がなにも悪いわけではない。刹那的な衝動で無思慮な性交をし、結果的に生じる不幸な出産と堕胎を食い止められれば良いのだ。若くして出産の責任を負おうとする者をいたずらに冷笑するのは良くない。そうした態度もまた少子化に結びついている。

現在の大学生が初めて性的メディアに接した時期は「小学5年生未満」が男子、女子ともにトップという調査結果も出ている。が、それ自体自然なことだし、無理にそうした性的好奇心の発露を押さえ込み、反発を買うのではなく、その前にきちんと科学的な知識と判断力を子どもらに身につけさせ、対等な男女関係を学ぶ機会を設ける必要がある。

男女がまず相手を思いやる気持ちを持てれば、不要な人工妊娠中絶もなくなり、逆に若くとも、出産と子育ての責任を互いに負っていく気概も生まれる。いずれにせよ、性に戸惑う若者たちを大きく包み込める社会にまずしなければならない。

筆者プロフィール:

1966年長野県軽井沢に生まれ、東京に育つ。法政大学文学部日本文学科在学中より出版社に籍を置き、雑誌、ムックなどの執筆・編集に従事。教育やビジネスをフィールドにし、『『通販だけがなぜ伸びる』『名門高校人脈』『名門中学 最高の授業』『「授業」で選ぶ中高一貫校』(いずれも学研新書)などの著書がある。趣味は登山、野球観戦など多彩だが、食べ歩きはライフワークで、『東京B級グルメ放浪記』(光文社知恵の森文庫)はその代表作。

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