35歳、突然の末期がん宣告を受けたぼくが知った人生の大切なこと

35歳、突然の末期がん宣告を受けたぼくが知った人生の大切なこと

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/01/14
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提供:「#老後を変える」編集部(メットライフ生命)

皆さんは、がんという病気についてどのようなイメージを持っていますか?

おそらく、漠然とした恐ろしさを感じている人が多いことでしょう。「余命」「宣告」「副作用」など、がんという病気に付いて回るキーワードは、いやが応にも不安をかき立てます。

あるアンケートによると、日本人は諸外国の人と比べて、がんに対する恐怖心が飛び抜けているのだそうです。

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出典:「リアリティ・チェック:健康・経済プラン・QOLが映し出す未来像と現実のギャップ」を基に作成

グラフを見ると、最大の健康不安要因として「がん」を挙げる人は、日本人回答者の実に61%。2番目に割合の高かった香港を、10%以上も上回る数字となっています。

この要因としては、1981年以降、がんが日本人の死因のトップであり続けているため(※)、死に直結するイメージが強いからだと思われます。

※出典:厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)の概況(平成28年)」

がんについて知らないことだらけ

しかし、そのイメージは必ずしも正しくないと語るのが、今回取材させていただいた西口洋平さんです。

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西口さんは現在38歳。奥様と小学生の娘さんがいます。

2年半前に突然、胆管がんの告知を受けました。それも、最も進行した状態のステージ4。人材紹介会社の営業職で日々激務をこなしながらも、健康診断では特に問題なかったため、自分が重大な病気になるなどとは、まったく考えていなかったそうです。

これは西口さんに限ったことではなく、日本では乳がんの検診率がOECDの中でも最低レベルという統計も出ており、恐怖心は持ちながらも、他人事と考えている人が、まだまだ多いのかもしれません。

病気発覚のきっかけは、しばらく続いた下痢が気になり、薬をもらうために近所の病院を訪ねたことでした。たぶんストレスからくるものだろう、と初めは軽い気持ちでいたそうですが、症状からは診断がつかず、大きな病院に移って検査を重ねることになり、そこでがんの告知を受けたのです。

順風満帆だった人生に、思ってもみなかったがん宣告。さらに臓器の説明、治療法、手術の必要性、入院生活……、と畳み掛けるように浴びせられる膨大な量の情報を受け止めきれず「まるで他人の話を聞いているようだった」と、西口さんは振り返ります。

実は自分が大きなショックを受けていると気づいたのは、診察室を出て大阪の実家に連絡したときのことでした。受話器の向こうのお母さまに、がん告知を受けたと伝えた瞬間、思わず涙があふれ出てきてしまったのだそうです。

「診断で聞いたときは“あ、そっか”くらいの気持ちだったんですが、今思えば、自分で口に出してがんだと言うことが、認める、自覚するプロセスだったんだと思います」

さらに、自分が『がんについて何も知らない』ということにも、そのとき初めて気づいたそうです。

手術がうまくいかなかったらどうなるのか? 副作用は? 仕事はどうすればいいのか? 生活はどうなっていくのか? そして、これから成長していく子どものことは?

押し寄せるのは、ただただ、不安ばかりでした。

「限られた時間」を生きる

開腹手術を受けるも、がんが転移していたため完全な切除は難しく、西口さんは抗がん剤治療を続けていくことになりました。

当初は「死への恐怖」や不安など、精神面での落ち込みが激しかったという西口さん。立ち直ることができた理由について伺うと、こう即答されました。

「一番大きかったのは、時間ですね。僕が特別なのではなく、他の多くのがん患者さんもスピードの違いはあれど、長くがんと付き合っていく中で徐々に日常へ戻っていっているはずです」

ここから、多くの人々が漠然と抱いている「がん=死」というイメージは実情と異なっていることがわかります。多くの場合、がんは告知されたからといってすぐに死ぬのではなく、告知を受けたショックから立ち直り、日々の生活を取り戻していくという道を歩むことになるのです。

実際に、がんのおおよその治癒の目安と考えられる「5年生存率」も年々上昇しており、すべてのがんでの平均は62.1%となっているのです。現在では治療法も増え、生存率が上がっただけではなく、QOLを高く保てるような治療も登場し、罹患後に日常を取り戻していくという流れは加速しています。

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出典:「全国がん罹患モニタリング集計 2006-2008年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2016)独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費『地域がん登録精度向上と活用に関する研究』平成22年度報告書」を基に作成

がんになっても、必ずしもすぐに命をなくすわけではない。この“気づき”が、西口さんの生活を大きく変えました。これまでと同じように生活を続けていくため、上司に相談して職場復帰を果たしたこともその1つ。

さらに“限られた時間”という意識を強く持つことで、家族とのコミュニケーションも、より意味のあるものに変わったのだそうです。お子さんとの会話には、“こう育っていってほしい”というしつけの要素が増え、家族で行きたい場所には、すぐに出かけるようになりました。

「やろうと思ったことは、いつかではなく、今やらなければできない。限られた時間を生きているのは健康な人でも同じですが、僕はがんになったからそれに気づけたんです」

いつかいつか……、と先延ばしにしている時間はない。今やりたいこと、やるべきことがクリアになったと西口さんは語ります。

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患者同士がつながる場所を

がん患者と一口に言ってもそれぞれに事情は異なりますが西口さんの場合、ご自分の体のことと同じくらい悩んだのは、お子さんのことだったそうです。

病気のことを告げた方がいいのか、将来のために何をしてやれるのか……、相談しようにも周りに同世代の患者はいませんでした。

しかし、必ず自分と同じように悩んでいる人がいるはずだと考えた西口さんは、子を持つがん患者同士がつながるためのSNS「キャンサーペアレンツ」を立ち上げました。

「誰かの悩みに、他の誰かが正解を持っている場合もあるだろうし……、経験をシェアしあいたいと思ったんです」

病気に関する悩みだけでなく、日々の喜びも分かち合える場所として、登録者はすでに1000人を超えているそうです。

ここで、西口さんに伺ってみました。「周りの人は、がん患者さんにどう接すればいいのでしょう?」。

「正直に聞くことです。がん患者は特別な存在ではなく、病気を抱えながらとはいえごく普通に生活しています。どう接していいかわからない場合は、直接『教えてほしい』と声にしてくれれば患者とのコミュニケーションにつながりますし、この病気への理解を深めることもできます」

西口さんは、がんになったことで「今」という時間を無駄にしない生き方に気づいたそうですが、それは決して、病気でなければできない生き方ではありません。たとえ現在病気でなくても、限られた時間の中で生きていることは皆同じです。

がんをいたずらに怖がることなく、“知って理解する”ことが、「今」を大切に生きることにつながるのではないでしょうか。

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<西口洋平さんのプロフィール>
一般社団法人キャンサーペアレンツ代表理事、エン・ジャパン株式会社人財戦略室所属。
1979年生まれ、大阪府出身。妻、娘(9歳)の3人家族。両親も健在。 2015年2月、35歳の時にステージ4の胆管がんの告知を受け、孤独感、不安感、 喪失感を持つ。周囲に同世代のがん経験者がいない状況のなか、インターネット上 でのピア(仲間)サポートサービス「キャンサーペアレンツ」 を立ち上げる。現在も、抗がん剤による治療を続けながら、仕事と並行して活動中。

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