「おんな城主直虎」44話。なぜ女性視聴者を意識した大河ドラマをつくるのか。お父さんは「陸王」があるか

「おんな城主直虎」44話。なぜ女性視聴者を意識した大河ドラマをつくるのか。お父さんは「陸王」があるか

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  • 更新日:2017/11/12

NHK 大河ドラマ「おんな城主 直虎」(作:森下佳子/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)
11月5日(日)放送 第44回「井伊谷のばら」 演出:藤並英樹

引っ張る衆道

ついに初陣をむかえることになった万千代(菅田将暉)と万福(井之脇海)。
まだ小姓だから、そんな険しい前線にいかないであろうと思いながらも心配な直虎(柴咲コウ)。でも、一番心配なのは、祐椿尼(財前直見)の体調で、次第に老い衰えていく姿と、万千代が活躍する姿が対比的に描かれる。

初陣は、武田がおさめる駿河の田中城攻め。堀が三重にも張り巡らされた難攻不落の城らしい。
ところが、万千代は、殿の大事な小姓(それも暗に色小姓だと思われている)だからと、戦わせてもらえないうえ、軍議も聞かせてもらえない。
もう4年も飼い殺しにされていると苛立つ万千代は、この戦から戻ったら元服させてもらおうと決意する。

万千代の思いが届いたのか、ある日、家康(阿部サダヲ)の暗殺事件が起こる。
武田の間者らしき近藤武助(福山翔大)なる人物が、薬に細工をして、家康を亡き者にしたうえ、その罪を満千代にかぶせようとしたことを、みごと万千代が見破り、未然に防ぐという派手な見せ場があった。
薬箱の結び目を蝶結びに決めていたが、固結びになっていたことから、気付いたというお手柄によって、万千代は一万石を得る。

直政が初陣で家康暗殺を食い止めたことは史実に残っているそうだが、森下佳子はなぜか、そこに衆道(BL)ネタを盛り込む。なぜそれを引っ張り続けるのか真意は不明だが、いきなり大昇進の万千代を、周囲は、色眼鏡で見る。
「寝所で手柄」「寝所でなんの手柄」「大層な槍をお持ちじゃ」などと下卑たネタにされて笑われる屈辱に耐えながら、最後、軍議の末席に参加できたとき、万千代は、遠山の金さんよろしく片肌脱いで、名誉の負傷跡を見せつける。

深読みすると、現代女性は、男性と並んで仕事をする際に、女を利用した疑惑をもたれることが多いもの。
女大河を描くうえで、直虎がそういった状況とは縁遠いため、女性が共感できるエピソードを万千代に託したのかなとも思う。嫉妬は女のもののように言われるが、男の嫉妬もけっこうなものであるというのも明快に伝わってくる。ただ、男性視聴者はあまりおもしろい話ではないかもしれない。

女大河なので、女性を意識した話になることは当然である「直虎」。44話は、とりわけ、女性視聴者を意識したエピソードが満載だった。

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反抗期少年に手を焼く直虎

一万石を得たにもかかわらず、直虎が家督を譲らない限り、万千代は当主になれない。
「ここであの意地悪ババアに手綱を握られるとは」となんともひどい言い方をする万千代。
一万石を得たことも報告しない。反抗期の息子のようである。
心配した祐椿尼は、最期の仕事とばかり、万千代を井伊谷に呼ぶ。
井戸の前で話すふたりは、ぎすぎすしている。
井伊谷を取り戻したいという万千代に、取り戻して何がしたいのかと問う直虎。
政策なき政治批判のようだが、万千代は、武家とは力をつくして戦い力のあかしとして土地を受け継いでいくものだと反論する。
そういうことをくだらぬと否定されて「そのくだらぬことしかできなかったのはどこのどなたじゃ。できないことから逃げ出しただけじゃないか」と反抗は止まらない。
「逃げてはじめて見えることもあるのじゃ」「さような考えなら家督はけしてゆずらぬぞ」と意地を張る直虎もまだまだ青い。
当然「臨むところです。ならば力づくで引き剥がすまで」と受けて立ってしまう万千代。
ふたりの気持ちが溶け合う日はくるのだろうか。

この母と反抗期の息子のようなやりとりを見ていて、朝、平成イケメンライダーを子供と見ているお母さんが、夜は子供と一緒に「直虎」を見ている様子を想像してしまった(菅田将暉はライダー出身だし)。お父さんの楽しみは日曜劇場「陸王」なのかなあ。これには竹内涼真や山崎賢人(さきの大は立)が出ているからまたまたお母さんも見ちゃうんだろう。

母と子

独身で親と同居している女性が、「直虎」をお母さんと一緒に見ていたら、祐椿尼の最期には感極まっただろう。
“10歳で出家させ、男の代わりに家督をつがせたため”直虎を大変な目に合わせてしまったことを、ずっと気にしていた祐椿尼。
だが直虎は、はたから見たらどうかわからないが「わたしはこの身の上を不幸と思ったことは一度もない」と言う。
こういう人生を送らなかったら、わからないことがたくさんあって、「百姓たちはただ米を運んでくる者。ならず者たちは世を乱す悪党。商人は銭ばかり追い求める卑しき者。のっとりを企む家老は敵」そんなふうな見方しかできなかったろうと振り返る。
それに比べて万千代は、戦についていきたいと家康に頼んだとき「(今日は)田を刈り畑を焼くだけ」と言われてもピンと来てないようだった(農民に打撃を与える戦法)。当然ながら、直虎の多角的な視点にはまだまだ到達できていない。
「直虎」の終盤戦は、彼女がどうやって、旧来の男らしさや武士らしさというような視点から、直政を広い視野へと導くか、それが肝になるのだろう。

「母上のたったひとりの娘に生まれ、母上のやさしさを独り占めしてきた」ことを感謝する直虎。
直虎も、嫁がず子供を作らず生きてきたわけだが、祐椿尼も男子を産めずこの時代の女としては、コンプレックスを抱えたまま生きていたのだと思う。
世間で理想とされる生き方をしてこなかったふたりの女が、互いに肯定し合うやさしいシーンだ。

43話で、甚兵衛の死をナレ死にしなかった森下佳子だが、祐椿尼については「その夜、静かに息を引き取った」とナレーションで言わせた。とはいえ、その前の別れのシーンをたっぷりして描いたうえ、ナレーションで解説、さらに、彼女を元気づけようと植えた長春が咲いた場面まで入れて、弔いの大盤振る舞い。花が咲いたときの、傑山(市原隼人)の祈りの表情がすばらしい。

長春とは中国の薔薇。サブタイトルの「井伊谷のばら」にするためにこの花を選んだのか。長春を出したくて「ベルサイユのばら」の台詞をオマージュしたのだろうか。

BLネタ、母と息子、母と娘、少女漫画ネタ・・・と女性視聴者をくすぐる要素をたくさん入れても、視聴率は上がらず、むしろ、働く男性が主人公で、オーソドックスなつくりの日曜劇場のほうが評判がいい。
それでも日曜8時に女性視聴者を呼び込みたいわけは、母と子のほうが先々のお得意さんになると信じているのだろうか。

45話は、徳川家最大の悲劇。瀬名(菜々緒)に危機が忍びよる。
(木俣冬)

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