固まった土壌をほぐして芝を成長させる作業
春はゴルファーにとって待ちに待ったベストシーズンです。暑くも寒くもなく、快適な気温の中でプレーを楽しむことができます。

エアレーション作業は芝生の成長を促進させる大切な作業 写真:AC
一方で、春はゴルフ場の芝生の育成にとっても大事な時期です。芝生は冬の寒い時期はほとんど成長しませんが、春になって気温が上がり、日差しが強くなると光合成を始めます。
光合成とは植物が光のエネルギーを使って水を分解し、生体に必要な有機物質を作り出す反応のことです。この反応によって植物は成長します。
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しかし、ゴルフ場の芝生は人間の手によって管理されています。フェアウェイやラフは野生に近い状態で管理されていますが、グリーンはボールの止まり具合や転がり具合をコントロールするため、芝生にとって過酷な状態で管理されています。
グリーンは、根っこの長さに比べて葉っぱの部分が常に短く刈り込まれていることや、ローラーや人間の足によって土壌が踏み固められています。この状態のままだと芝生は健全に成長しません。したがって、ゴルフ場は芝生の成長を促すため、春と秋にエアレーション作業を行ないます。芝生の更新作業と呼ぶゴルフ場もあります。
エアレーション作業とは、芝生の下の土壌を耕したり、穴を開けたり、新しい土や砂を入れるなど固まった土壌をほぐし、成長に必要な水分や酸素、栄養分を根っこから吸収できるように促す作業です。この作業を行なうことによって芝生の健全な成長が保たれます。作業は、1~2日で終わるものではなく、1~2週間続きます。その間、グリーンは表面に無数の穴が開いていたり、大量の砂を撒いていたりします。
エアレーションはゴルフ場の芝生管理には絶対に必要な作業ですが、プレーするうえでグリーン上のボールの転がりが普段と比べて明らかに異なるという問題点があります。
さらに、ほとんどのゴルフ場は何の告知もなくエアレーション作業を始めます。春のベストシーズンのラウンドを楽しみにしていたのに、「何だよ、エアレーション作業中かよ。これじゃパットの距離感がさっぱり分からねえや」ということになります。
エアレーション作業の実施時期をゴルフ場は告知すべき?
なぜ多くのゴルフ場はエアレーション作業のスケジュールをゴルファーに告知しないのでしょうか。ゴルフ場関係者に聞いてみました。
「正直なところ、事前に告知すると、グリーンがデコボコのコースには行きたくないから、お客様の足が遠のくのではないかという心配があります」

作業の告知がないとゴルフ場へのクレームにつながる可能性も 写真:AC
「あとは、お客様に聞かれることがあまりないからという理由もあります。ベテランゴルファーの方はゴルフ場が春と秋にエアレーション作業を行なうことを知っていますから、当日来場されたときにクラブハウスやマスター室前の貼り紙で告知します」
「ただ、旅行会社でゴルフツアーの企画を担当されている方からは、『エアレーション作業はいつ行ないますか?』と聞かれます。やっぱり旅行会社としてはクレームの原因になりかねませんから、できればエアレーション作業の時期は避けたいわけです」
「ゴルフ場はエアレーション作業の時期を聞かれたら答えます。今のところ、お客様から聞かれないので、事前告知をしていないのが現状ですが、エアレーション中だからプレーが面白くなかったという声を聞くことはあります。そう考えると事前告知したほうが親切なのかなと思うこともあります」
ベテランゴルファーは、エアレーション作業の目的や作業内容を知っているかもしれませんが、この1~2年でゴルフを始めた人たちはエアレーション作業の存在自体を知らない可能性があります。
存在を知らないのに、ゴルフ場に行ったらグリーンに大量の穴が開いていたり、砂が撒かれていたりしたら間違いなく戸惑います。
実際、2022年にゴルフ場予約サイトの書き込みで「グリーンが穴ボコだらけだった。最悪」というコメントを見かけることがありました。これはゴルフ場の説明不足だと感じます。
新しいゴルファーが増えている時期だからこそ、ゴルフ場は今まで以上に親切・丁寧にゴルフ場という施設の利用方法や仕組みを説明する必要がある気がします。
保井友秀