ふたりの年金収入「4つのパターン」でシミュレーション

お花見の季節がやってきました。桜の花のいのちは数週間と短くはかないですが、その花を美しく咲かせるためには、一年を通じたお手入れが必要とのこと。
人もまた桜と同じように、健康で長生きするためには日頃の心がけが大切ですね。お金の面でもしかり。長寿時代を安心して過ごすためには、現役時代からコツコツと貯蓄を準備しておく必要があるでしょう。
「長生きリスク」なる言葉を耳にすることが増えましたが、働き盛り世代がこのリスクに先手を打つ方法はあるのでしょうか。
今回は、いわゆる「老齢年金世代」である65歳以上のリタイア世帯の「年金収入・生活費・貯蓄」に関するデータを見たあと、長寿時代に向けた老後資金の準備について考えていきます。
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【グラフ】65歳以上「老齢年金世代」のお金事情。年金・貯蓄・生活費に関するデータを見る(出所:厚生労働省年金局、総務省統計局)
1. 【老齢年金世代】65歳以上のリタイア組「国民年金・厚生年金」平均と分布
公的年金の一般的な受給開始年齢である65歳を境に、完全に仕事をリタイアして年金生活に入る人も多いでしょう。
厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、いまのシニアの年金事情を見ていきます。
以下は国民年金と厚生年金の平均受給額です。
1.1 国民年金の平均月額・受給額分布
男女全体・平均年金月額:5万6368円

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
男性・平均年金月額:5万9013円
女性・平均年金月額:5万4346円

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
1.2 厚生年金の平均月額・受給額分布
※国民年金の月額を含む
■平均年金月額:14万3965円

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
■男性の平均年金月額:16万3380円
■女性の平均年金月額:10万4686円

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
上記のデータを見る限り、受け取れる年金が国民年金のみの場合、年金以外の老後資金を手厚く準備しておく必要がありますね。
厚生年金についても、男女全体の平均額14万円台ですが、個人差・男女差がある点に注意が必要ですね。「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で自分はどのくらい年金を見込めそうか把握しておきましょう。
2. 【老齢年金世代】65歳以上・リタイア夫婦「年金収入・4つのパターン」
ただし上記は「ひとり分」の年金月額です。実際老後に受け取る年金額は、世帯単位で考える必要があるでしょう。
そこで、夫婦ふたり世帯が、男女それぞれの平均月額を受け取れた場合の年金額を、以下の4パターンに分けてシミュレーションしてみます。
パターン1. 自営業を営む夫婦のケース
パターン2. 夫:会社員、妻:専業主婦の夫婦のケース
パターン3. 夫婦ともに会社員のケース
パターン4. 夫:自営業・妻:会社員のケース
2.1 パターン1. 自営業を営む夫婦の場合
夫婦ともに国民年金のみ
【二人分の年金月額】11万3359円(夫:5万9013円、妻:5万4346円)
2.2 パターン2. 夫:会社員、妻:専業主婦の場合
夫:厚生年金(国民年金を含む)・妻:国民年金
【二人分の年金月額】21万7726円(夫:16万3380円、妻:5万4346円)
2.3 パターン3. 夫婦ともに会社員の場合
夫婦ともに厚生年金(国民年金を含む)
【二人分の年金月額】26万8066円(夫:16万3380円、妻:10万4686円)
2.4 パターン4. 夫:自営業・妻:会社員のケース
夫:国民年金・妻:厚生年金(国民年金を含む)
【二人分の年金月額】16万3699円(夫:5万9013円、妻:10万4686円)
この場合、パターン3の「夫婦ともに会社員」だった場合、世帯のひと月の年金額は約27万円ですね。
次では、65歳以上世帯の平均的な「家計の収支」について見ていきます。
3. 【老齢年金世代】65歳以上・リタイア夫婦の「ひと月の生活費」
次は、65歳以上世帯の「ひと月の家計収支」を見ていきます。
総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)-2021年(令和3年)-(Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支)」をもとに、リタイア世帯の生活費がどのくらいか確認してみましょう。
以下は、65歳以降「夫婦のみ世帯」のひと月の支出について見たデータです。

出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)-2021年(令和3年)-(Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支)」
3.1 65歳以上「夫婦のみの無職世帯」ひと月の支出
消費支出:22万4436円
非消費支出:3万664円
計:25万5100円
※消費支出:住居費や食費など生活を維持するために行う支出のこと
※非消費支出:税金や社会保険料など消費を目的としない支出のこと
先ほどのシミュレーションで、夫婦ともに会社員だった場合の年金受給額は26万8066円。このパターンであれば公的年金だけでなんとか生活できるラインとなる世帯もあるでしょう。
とはいえ家計調査の結果は、あくまでも平均です。また、ひと月の支出の中には、介護費用は含まれていない点や、住居費が持ち家世帯を前提として1万円台で計算されている点なども留意しておく必要があるでしょう。
歳を重ねることで健康面での不安は増えます。医療費が家計を圧迫する世帯もあるでしょう。また、要介護が上がり施設への入所を検討した場合、入居時点で数百万円単位の大型出費となるケースはごく一般的ですね。
ときに数千万円が必要ともいわれる「老後資金」。実際にいまどきのリタイア世帯はどの程度貯蓄を準備できているのでしょうか。次で詳しく見ていきましょう。
4. 【老齢年金世代】65歳以上・リタイア夫婦の「貯蓄額」
ここからは、総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-」をもとに、リタイア世帯の貯蓄事情について見ていきましょう。
以下は、65歳以上・二人以上世帯の貯蓄額ごとの分布です。
平均値:2376万円
中央値:1588万円

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-」
100万円未満:8.3%
100~200万円未満:3.3%
200~300万円未満:3.2%
300~400万円未満:3.6%
400~500万円未満:2.8%
500~600万円未満:3.5%
600~700万円未満:2.9%
700~800万円未満:3.1%
800~900万円未満:3.5%
900~1000万円未満:2.9%
1000~1200万円未満:5.3%
1200~1400万円未満:5.0%
1400~1600万円未満:4.4%
1600~1800万円未満:3.8%
1800~2000万円未満:2.9%
2000~2500万円未満:8.0%
2500~3000万円未満:6.4%
3000~4000万円未満:9.2%
4000万円以上:17.7%
上記データによると、65歳以上世帯の貯蓄は平均2376万円。貯蓄保有世帯の中央値は1588万円です。
貯蓄額が1000万円を超える世帯は全体の62.7%、2000万円を超える世帯は41.3%。一方で300万円未満の世帯も14.8%存在し、うち8.3%は100万円未満です。
老後に必要となるお金は、家族のライフスタイルや健康状態などによって世帯差があるでしょう。
とはいえ、現役世代の住宅ローンや教育費とは異なり、老後の大型出費はいつ発生するか予測がつきにくいものです。
遠い将来に向けた資産形成は、働き盛りの若い頃からコツコツと進めていけたらよいですね。
5. まとめにかえて
今回は、いわゆる「老齢年金世代」である65歳以上・リタイア夫婦の「年金収入・生活費・貯蓄」に関するデータを見てきました。
老後に必要となるお金は、日常生活費だけではありませんね。「介護費用」や「住宅のバリアフリー改修」など、シニア特有の大型出費を想定した準備が必要となってくるでしょう。
また、趣味やライフワークのための「お楽しみの出費」も、いきいきと老後を過ごすための必要経費といってよいでしょう。
お金事情は世帯ごとに変わりますが、預貯金や資産運用をバランスよく組み合わせながら、将来に向けた夫婦の資産づくりを進めていけたらよいですね。
参考資料
厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)-2021年(令和3年)-(Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支)」
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-」
鶴田 綾