市川海老蔵「麻央のことを思い出しながら...」“プペル”新作歌舞伎に親子3人で挑戦

市川海老蔵「麻央のことを思い出しながら...」“プペル”新作歌舞伎に親子3人で挑戦

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  • 更新日:2022/01/15
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市川海老蔵さん (撮影/写真部・松永卓也)

厚い煙で覆われて空が見えない「えんとつ町」。少年ルビッチは「煙の向こうに星がある」という亡き父の言葉を信じ、友達のゴミ人間、プペルとともに星を探しに行く。キングコングの西野亮廣が手がけ、映画化もされた絵本『えんとつ町のプペル』が歌舞伎に生まれ変わった。市川海老蔵が愛娘、愛息子と共演する舞台には、5年前に亡くなった妻の麻央さんへの思いも込められている。

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──プペルの歌舞伎化にいたった経緯は?

映画館に3回足を運ぶほど、親子でプペルの物語に感動したんです。やはり「信じることの大切さ」という今の日本に必要なテーマを描いているのが素晴らしい。何かを信じるって誰も邪魔してはいけない領域なのに、なぜか周りが「おかしいんじゃない?」と邪魔することはよくあります。

子どもたちとは、「人がなんと言おうと自分が信じたことをやりきるのは美しい」という会話をしました。二人ともニュアンスを汲みとったようで、「この作品で何かしてみたいね」って口にして。

私もこれは歌舞伎になるかもしれないと思ったので、すぐ原作の西野(亮廣)さんに直談判しました。「一緒に仕事をしたい」とお伝えして、お会いしたその日のうちに「ぜひ」と。

もう、恋愛的なスピード感ですよね。舞台が決まったって二人に伝えたら、「うぎゃー」って大喜びしてました(笑)。

これからの歌舞伎について考えたとき、この作品のテーマとも被るところがあると思うのです。既存の歌舞伎は伝統文化として貴重で大事ですけれど、そこに甘んじて何もしないのは正しいのかと自問自答しています。だから、最初は「え?」って思われるような新しい試みが、一つの突破口になればいいなと。可能性に賭けてみたいんです。

──脚本も担当された西野さんは「主人公達の物語と海老蔵親子が背負った物語は、あまりにも重なる部分が多い」と。

私はプペルと、ルビッチの父親の熊八(原作ではブルーノ)を演じますが、うちの家庭で言うと熊八は麻央なのかなと。子どもに大きな魂みたいなものを残した熊八が妻で、その魂を受け継いで寄り添うプペルが私。そして子どもたちとパパとママが一緒に煙を晴らして星空を見る、という形になればなと。麻央のことを思い出しながら熊八を演じるつもりです。

今の話は子どもたちにはしてないですよ。これは自分で感じることですから、あえて言うことではないと思います。

──長女のぼたんちゃん、長男の勸玄くんが交互出演でルビッチを演じます。

歌舞伎での役名は、ともに「はる」。でも演出や台詞は子どもに応じて変えます。10歳にしては整った芝居ができるぼたんと、自分の感性に忠実に生きている勸玄。役者として、それぞれに魅力があると思います。

今回、二人は同じ役をやるうえでライバル関係にあるんです。稽古に入るまでは、「勸玄には負けません」「お姉ちゃまには負けません」ってよく言いあっていました。

今、勸玄には焦りがあるんだと思います。お姉ちゃんが市川ぼたんとして舞踊を評価されたり、ドラマに出演したりするなか、勸玄はまだ襲名ができていない。自分もやるんだという闘志がマグマのようにたまっている状況です。だからこの舞台で、彼の爆発力に期待したいと思ってます。

──子どもたちが自分と同じ「役者の道」を歩むなか、子育てで意識していることは?

私自身は、伝統文化のど真ん中でひっぱたかれながら育ちました。箱入り息子のなかの箱入りみたいな感じで、マスに入れられて。それで16歳くらいでマスからポンと離れて自由に演じてみなさいと言われたとき、できなかったんですよ。そんな自分が許せなかった。

ぼたんと勸玄にはマスの中の折り目正しいことだけでなく、自分の気持ちで台詞をしゃべる、自分の発想で行動することを学ばせたいと思ってます。だから、二人のやりたいことは邪魔しない。

たとえば勸玄はゲームが好きで朝から晩まで遊んでるんですけど、全くとめません。むしろ「死ぬほどやれ」と。だから勸玄は、よく疲れ果ててゲーム機を持ったまま寝ています。

2カ月前、3人でマリオカートをやったんですよ。まあ私が大人げなく圧倒的な1位なんですけど、ぼたんが私に追随して2位で、勸玄はゲーマーなのにずいぶん下手だった。「勸玄、得意じゃないゲームはこんなに下手なんだな」って話をしました。

そしたら火がついたんでしょうね。昨日、また対戦したらぼたんより勸玄のほうが圧倒的にうまくなってたんです。私はギリギリの僅差で勝てたので親父の面目を保てましたが、悔しいくらい成長していて。

ゲームでもなんでも成長することが大事。そこから彼なりの考え方がうまれて、勉強なり芸事なりに生きてくるわけですから。

◆芸能、お金、人生 なんでも話す

──お子さんに日頃言い聞かせていることは?

あらゆることを話します。歌舞伎の話、映像の話、芸能の話、お金の話、投資の話、起業の話、人生の話……。

ぼたんに比べると2歳下の勸玄は、私の話を理解して自分のものにできる確率が低いんですけど、ここ数カ月で突然、シナプスがつながってきた感じがします。

──二人の将来について期待することは?

本人が望んだように進めばいいのではないでしょうか。もしぼたんが歌舞伎俳優になりたいなら、親として尊重します。今でこそ歌舞伎は男性だけですが、そもそもは女性から始まったものです。

成田屋には、九代目(市川)團十郎が娘の(二代目)翠扇(すいせん)を女歌舞伎俳優にしようとしたこともございますし、まずは本人がきちんと意志を持ち、その思いに親としてともに寄り添い、後押ししていきたいという思いはあります。

ぼたん自身、今は歌舞伎俳優にも興味があるようですが、「舞踊もやりたいし女優業もやってみたい」と言っています。勸玄は「歌舞伎俳優とゲーマー」みたいです(笑)。

(取材・構成 大谷百合絵[本誌])

※週刊朝日  2022年1月21日号

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