
青葉真司被告
36人が死亡し、32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第7回公判が19日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれ、検察側の被告人質問が続いた。被告は京アニへの恨みを募らせて報復を考えた背景に、自身の過去の経験から「やられたら、やり返さないといけない」という考えが根付いていたと明かした。
被告はこれまでの公判で、自身の小説が京アニのコンクール「京アニ大賞」で落選したり、その後に見た京アニ作品で自身の小説を盗用されたりしたと思ったことが、「(事件を決意した)転機になったことは間違いない」と述べている。
被告はこの日、過去にアルバイトで理不尽な思いをした経験から「悪いことをされたときに良いことで返すとなめられる」「悪いことには悪いことで返す考えが根付いた」と説明。京アニが自身の小説を「パクったり匂わせたりした」(被告)ことへの報復を念頭に平成30年、インターネット掲示板に「やられたらやり返さないといけない」と書き込んだと説明した。
また、被告は小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿した自身の小説に、1人も読者がいなかったことがきっかけで小説のネタ帳を焼却、小説家の夢をあきらめようとしたが、「失恋にも似た感情で、小説と離れることに難儀した思いがあった」と吐露した。当時の心境を「何かしらの『つっかえ棒』がなくなり、やけになった」と振り返り、「まじめに生きていくためのつながりがなくなり、良からぬ事件を起こす方向に向かった」と、事件を決意する背景の一端を明かした。
検察側はこれまで事件の本質を「筋違いの恨みによる復讐(ふくしゅう)」と総括。京アニへの恨みの背景には、被告の生育歴に起因する「自己愛的で他責的なパーソナリティー(人格)」があったと主張し、「人生どうでもいい」と投げやりになり、不満をため込んで攻撃的になりやすい性格があると指摘していた。
これに対し弁護側は、精神疾患の影響による心神喪失か心神耗弱の状態だったとして無罪、または刑の減軽を求めている。