もう一つの、おいしい「あわおどり」 円安ショックでピンチ 徳島

  • 毎日新聞
  • 更新日:2022/06/23

「阿波踊り」で知られる徳島県に、同じ名前で24年連続全国トップシェアを誇る地鶏がある。円安の影響をもろに受け、突如襲ってきた値上げのピンチ。せっかく普及してきたブランドに何が起きているのか?【山本芳博】

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県立農林水産総合技術支援センターが「名古屋コーチン」ほど高価ではないが、安価なブロイラーよりは高級な中間価格帯の地鶏として開発。県によると、元々県内にいた軍鶏(しゃも)のオスと、ブロイラーの親のメスを交雑し、1989年に2万羽を繁殖することに成功した。本家にあやかって「阿波尾鶏」と名付けられ、翌90年に11万羽に増えて販売が始まったという。

国内で流通する食用の鶏の割合はブロイラーが半分以上を占め、地鶏は1%。その地鶏の中では名古屋コーチンの7%を抑え、阿波尾鶏が24%で最多だ。新型コロナウイルス禍前には年間で約200万羽を出荷するまでに増えた。肉質は低脂肪でコクや甘み、うま味が多く、適度な歯ごたえが特徴。東京や大阪、徳島市などのレストランや高級料亭、地元の居酒屋やスーパーなどに卸している。

エサは外国から輸入するトウモロコシや大豆かすなどから作られる配合飼料で、最近の円安などでエサ代が2021年4月に比べて約1・25倍に高騰している。県内の卸売業者は卸販売価格を7月から値上げすることを決めたという。

JR徳島駅前に支店を構える居酒屋「一鴻(いっこう)」では約20年前から観光客に地元特産の阿波尾鶏を食べてもらおうと、釜でこんがりと焼き上げた骨付きのモモ肉を秘伝のスパイスで味付けした「骨付き阿波尾鶏」を看板メニューとして1430円で提供している。東京にも支店を出して知名度を上げ、ほとんどの来店客は刺身や蒸し焼きなども含め、阿波尾鶏料理を注文するまでになった。今では年間2000羽分を消費しているという。

一鴻は「味覚が養われる子どもの時から阿波尾鶏を食べてもらうことが食の習慣付けや知名度アップにつながる」と、8月に徳島県北島町に家族連れ向けの支店を出す準備をしていた。その矢先の仕入れ値アップだが、庄野浩司社長は「価格転嫁は仕方ない」と理解を示す。メニューを約1割値上げすることに決め「コスト増で悩む企業への給付金など、国を挙げての支援策も参院選の争点にしてほしい」と話す。

徳島市役所横に開店して9年目の喫茶店「アーロンズ」では県産食材の使用にこだわった690円均一の日替わりランチが売りだ。日替わり約100種類の中に、蒸した阿波尾鶏をごはんに乗せたタイ料理「カオマンガイ」がある。メニューの中で最も赤字が大きいといい、店主は「阿波尾鶏の仕入れ値がここ数年で2割以上アップし、690円では収まらない。安価なブロイラーではなく、阿波尾鶏を使うように求められた場合には追加料金をもらうことにした」と嘆く。

県が新たな支援事業

値上げか、鶏そのものの切り替えか。飲食店が悩む中、ここまで出荷量や知名度を上げてきた阿波尾鶏を支えようと行政が新事業を立ち上げた。

これまでは国が設立した「配合飼料価格安定制度」によって、配合飼料の原料輸入価格が過去1年間と比べて値上がりした分を補てん金として各畜産農家に交付されてきた。しかし、輸入価格が1年以上も高止まりすると差額が小さくなり補てん額も減り、畜産農家の負担が増加。このため、今回は県が単独で「配合飼料価格安定制度」3分の2以内を上限として支援する「配合飼料価格高騰緊急対策事業」を始める。5月補正予算で約1億円の予算が計上された。

県の担当者は「年度内限定の緊急策なので、今後も続くと見込まれる価格高騰に対しては、国による新たな負担軽減措置や交付要件の緩和など、全国的な対応が求められている」と話している。

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