【オンラインセミナーレポート】価値を見つけて、編集し発信する「まちの編集」とは

【オンラインセミナーレポート】価値を見つけて、編集し発信する「まちの編集」とは

  • 新潟のつかいかた
  • 更新日:2021/10/14
No image

誰もが気軽に情報発信できる時代。SNSやブログを使って誰でも情報を発信できるようになった一方で、何をどのような切り口で取り上げればいいのか、どのように伝えればよいのかと、情報発信の仕方に悩んでしまう人も多いのではないでしょうか?そんな悩みを持つ新潟県民に向けて、〈新潟コメジルシプロジェクト〉では、新潟で注目すべき10人に地元を盛り上げる「発信力」を教えてもらうオンラインセミナーを企画。新潟県内でコミュニティマネージャーとしても活躍する小林紘大さんをファシリテーターとし、9月から11月にかけて計5回のイベントが開催されます。2021年9月10日(金)に開催された第1回のテーマは、「まちの編集」。ローカルを取り上げるウェブマガジン『コロカル』の創刊編集長・及川卓也さんと、新潟県三条市にある本屋兼喫茶店、そして編集室でもある〈SANJO PUBLISHING〉の水澤陽介さんをゲストに迎え、まちにおける編集の役割から住民が発信する情報の希少性、誰もができる編集のあり方まで熱のこもったトークが繰り広げられました。今回はそのトークセッションをレポートします。「自分にしかできない発信ってなんだろう?」「新潟のまちを盛り上げたいけど、どうしたらいいか分からない」。そう悩んでいる人に前向きになれるヒントをお届けできたらうれしいです。

No image

ファシリテーター小林絋大さん(上)、コロカル創刊編集長 及川卓也さん(左)、〈SANJO PUBLISHING〉水澤陽介さん。

首都圏からローカルの時代へ。 ウェブマガジン『colocal コロカル』とは

No image

小林:たくさんの方にご視聴いただいていますね。ありがとうございます。まずは、おふたりの自己紹介から始めていきたいと思います。及川さんからお願いできますか?及川:『an・an』や『Hanako』、『BRUTUS』など、雑誌や書籍を発行する出版社〈マガジンハウス〉に勤めている、及川卓也です。当社は紙媒体を長年発行してきた会社ですが、2012年に全国のローカル情報を扱うウェブマガジン『コロカル』を立ち上げました。「ローカルライフを全ての人に」をテーマに全国各地で行われている新しい実践や郷土の文化、食文化、暮らし方などを紹介しているウェブ媒体です。

No image

コロカルの仮説は「ローカルにこそ、可能性がある」ということ。例えば、都市部ではさまざまな専門家が分業を行なって大きなものをつくり上げることが多いのですが、地方はひとりひとりが自分の能力を生かしながら、自分たちの手で未来をつくっている人たちが多い。ほかにも、都会で短期的に効率化を求めるか、地方で新しい豊かさを求めるか、競合が多い都市部と違って地方はスタートアップしやすいのではないかなど、ローカルにこそ可能性が広がっているのではないかと仮定して、さまざまな情報を発信しています。

No image

コロナ禍の今は大きな価値の転換が起きている時代です。インバウンド客の減少など事業的なマイナス要因が多数ある一方で、リモートワーク、ワーケーションなど今まではなかった働き方も出てきました。こうした状況を踏まえると、ローカル=フロンティアなのではないか。

No image

そういったローカルの情報を発信するときに必要な技術が編集です。編集とは、モノやコト、ヒトと出合ったときに惹かれる理由を探り、言語化すること。つまり、「ここにしかない価値」を見つけて、取材して発信することを指します。当たり前にあるモノの良さに気づかずに見逃している人が多いなかで、編集という手法が入ることによって整理されたり、価値として見出される。これこそが編集の効果だと思っています

地域との関係性を編む。 〈SANJO PUBLISHING〉が目指す編集

No image

水澤:私たちは〈SANJO PUBLISHING〉という名前で2021年2月22日に本屋としてスタートしました。ただ、普通の本屋さんを始めるだけだとおもしろくない。どうしたら地域がおもしろくなるかと考え、「編集するまち」というコンセプトを見つけ、本屋開設に向けて動き出していったのです。私たちが行なっているのは、3つの事業形態。ひとつ目は本屋、ふたつ目が喫茶とパブ、3つ目がまちの編集室です。本屋は本の販売をメインに、今後は写真館や簡単な印刷ができる仕組みも検討しています。喫茶とパブは、ランチと夜営業をメインに、地元の経営者や会社員が集まれるプランをつくっていきたいと考えています。私たちがお店を構えている三条市の中央商店街。そこにある創業90周年を迎える老舗菓子屋とコラボし、チョコレートのお菓子〈ボンボンショコラ〉の共同企画と開発をしました。このように商店街と連携し、新たな商品やイベント企画なども行なっています。

No image

まちの編集室という部門では、企業パンフレットなどの制作物を請け負っています。ほかに準備しているのが、三条市の工場を見学できるツアー。先日、2021年に開校した三条市立大学の学生さんたちと話す機会がありました。でも、市内の工場に行ったことがない人が多く、すごくもったいないなと感じて。市内の工場を知るきっかけになればとツアーを考え始めました。三条市はすごく質の高いものをつくる地域ではあるのですが、横のつながりがまだ薄い部分があります。ほかの人がどんな商品をつくっているのかを知らない人が多く、まだまだ誰が何をやっているかが可視化されていない。だからこそ、私たちは本屋というかたちでまちを紹介しながらも、地元の企業やまちのプレイヤーを紹介できるまちの紹介所をつくろうと思っている最中です。

「まちで制作物を編集する」と 「人をつなぐことでまちを編集する」

No image

小林:おふたりともありがとうござました。ここからはゲストのトークセッションに入っていきたいと思います。及川さんは〈SANJO PUBLISHING〉さんには行きましたか?及川:一度お邪魔しました。いやぁ、手づくりでリノベーションしている感じですごく良かったですね。僕も昔からある本屋さんがまちからなくなっていくことを寂しく感じていて、これからは本屋も新しいビジネスをかけ合わせる必要があるのだろうなと思っていました。そんなときに〈SANJO PUBLISHING〉の取り組みを聞いて興味が湧いたんです。

No image

〈SANJO PUBLISHING〉の店内にはドリンクを片手に本を読む人も。

小林:商店街のお店とのコラボなど、〈SANJO PUBLISHING〉はおもしろい取り組みをされていますよね。いまは地域のお客さんが多いのでしょうか?水澤:お店に来てくださる方は地元の方が6〜7割くらいです。地元の人が日常的に使っていただけることがとてもうれしいなと思っています。私たちがやっていることは居場所づくりでもあるので、発信も身近にいる人にこんなお店だよと伝わるように心がけています。なので、SNSだけでなく、広報誌や回覧板に載せてもらうなど、近くに住む人にも伝わりやすい手段で発信するようにしています。及川:地域との関係性が表れていますね。「まちの編集」という言葉にも、「まちで編集する」と「まちを編集する」の2種類の役割があります。三条市内の事業者さんの冊子やウェブサイトなどの制作物をお手伝いする役割と、何かコトを起こすであったり、何か新しいことを一緒にやっていく、そういうまち自体を編集していくことも〈SANJO PUBLISHING〉は担っていくことになるんでしょうね。小林:水澤さんにとってはプレッシャーですね(笑)。及川さん、全国のほかの地域で「まちの編集」に関する事例ってありますか?及川:東京都練馬区の江古田という地域で西武鉄道さんと一緒に〈江古田キャンバスプロジェクト〉を行ないました。まち歩きをして一緒に魅力を探しながら、それをどう編集しようかとワークショップで話し合ったりして。大学生とできることにおもしろさがあるし、地域の若い人と一緒にやっていくことも重要なんだなと感じています。

No image

小林:確かに若い人と関わることは大事ですよね。三条市内は10〜20代との交流も増えているんですか?水澤:少しずつ増えている印象があります。最近、近くに服屋さんができたのですが、商店街に若者が買える服屋がないという意見があって立ち上がったみたいです。学生さんだと車を持っていない人も多いので、自転車の行動範囲内で生活しなきゃいけない。そう考えると、まだまだ足りないところがたくさんあるんだなと改めて認識させられました。

No image

「ここにしかない!」が価値になる。 編集視点の育て方

小林:今まで出てきた事例を踏まえながら、参加者ひとりひとりができるまちの編集ってなんだろう? と考えていければと思います。「まちの編集」をやっていくときに、どんなことに気をつければいいのでしょうか?及川:バズと呼ばれるような短期的な話題づくりよりも、長期的なファンになってくれるような発信や事業形態を考えることが重要なのかなと思います。小さなゲストハウスに何万人の予約が来ても対応しきれないわけで。事業の大きさに見合った数でリピート客を増やしていくほうがいい。顧客とのそういった関係性づくりが大事になってくるはずです。

No image

小林:確かにそうですよね。でも、地域の魅力を発信しようと思っても魅力がわからないということもあると思います。その場合はどうやって探せばいいのでしょうか?及川:よく言われることですけど、メディアだったり、UIターンだったり、外からの目線は大事ですよね。中にいると当たり前で気づかないことも、外から来た人にとっては新鮮に映ったりもする。編集するということは、そういった外からの目線を客観的に分析したり、俯瞰してみたりと、ちょっと違う角度から探すと見えてくるものだと思うんですよ。あとは、その地域にしかない価値を見つけることですね。「地域の魅力は?」と地方の人に聞くとだいたい、人や食べ物、自然などが挙がってきます。でも、それはどの地域にもだいたいある。だからもう、固有名詞でいいと私は思っているんです。スノーピーク社長の山井梨沙さんもよく佐渡の棚田をやっているおじいさんの話をしてくれるのですが、そのキャラクターがおもしろくて、どんどん惹かれていく。いわゆる大きなストーリーを描くのではなくて、ナラティブが重要視される世の中になっていくんじゃないかなと思っています。水澤:及川さんもそうなのですが、おもしろがれるかどうかって大事な視点だなと思っていて。しかも、みんなと同じ視点じゃなくて、自分なりの視点でおもしろがることが大事なのかもしれないなと思いました。編集と聞くと難しそうに感じますが、おもしろがることは誰にでもできるはずです。

No image

及川:それでいうと、飛騨高山でワークショップをしたときに参加された方で、木こりの仕事をしている人がいたんですよ。沢に打ち上げられる魚を見つけて素手で獲ったり、赤マムシを捕まえたりとか、私たちではあまり想像できない暮らしを教えてくれて。こうした話題は編集としては格好のテーマ。こういう人に出会えること自体が価値であり、そこにしかない情報になるんです。

半径5メートルの日常を意識。 日々の暮らしを編集視点で

及川:地域の魅力とは非日常の特別なことだけではありません。派手なコンテンツに限らず、日常にある魅力に気づいて表現していくことも編集のひとつです。私は地方に行くと夕方があることが豊かだなと感じます。東京だと仕事をしていて夕方に外を見る機会があまりないんです。だからこそ、旅先に行って初めて夕方の豊かさを感じる。こうした夕方の豊かさをどう見せるかを考えることが、編集の役目です。当たり前にあることのなかに価値を発見していく。今日参加されたみなさんも、明日から違う視点で日常を過ごしてみてもらえたらうれしいです。小林:確かに。まずは半径5メートル以内とか、手の届く範囲で見つけて発信していくことが大事かもしれないですね。今日はおふたりともありがとうございました。

次回は、「旅をデザインする」がテーマ!

オンラインセミナーはまだまだ続きます。第3回は「旅をデザインする」をテーマに10月8日(金)に開催予定。旅につきものなのが宿です。旅行者同士の交流や地域のふれ合いなど、宿が果たす役割は大きいと思います。今回は、村上市にあるゲストハウス〈よはくや〉の高橋典子さんと、糸魚川市にある〈長者温泉ゆとり館〉の屋村祥太さんによる対談が行われます。宿泊という側面から、新しい宿の姿を模索している両者。そこから見える「旅のデザイン」とはどのようなものなのでしょうか?また、希望者には「県民ライター」として記事作成体験ワークを用意。『新潟のつかいかた』『新潟コメジルシプロジェクト』を運営するコロカルのチーフ編集者が指導に入り、記事制作をサポートします。興味のある方はぜひご参加ください。(※「県民ライター」への参加は県民限定です)

Information地元をオモシロくする10人の発信力第3回「旅をデザインする」(オンラインセミナー)日時:2021年10月8日 20:00〜21:30トークセッション登壇者:ゲストハウス〈よはくや〉 高橋典子さん/〈長者温泉ゆとり館〉屋村祥太さんファシリテーター:小林紘大さん申し込み:Peatixサイト

新潟のつかいかた

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加