
長編商業アニメーションにスポットを当てた「第1回新潟国際アニメーション映画祭」が、3月17日から22日(水)まで開催されている。
初日のオープニング作品として、渡辺信一郎監督の『A Girl meets A Boy and A Robot』と森田修平監督の『弦の舞』のアジアプレミアが開催。
この2作品は、日本・中国・ニュージーランドのクリエイター陣による大型映像プロジェクト「太素(タイスー)」の一環として制作されたもの。
『カウボーイビバップ』と『東京喰種トーキョーグール』など海外人気の高い作品で知られる両監督は、上映後のトークで海外に対する視点を語った。
謎の宇宙元素「太素」を巡るオムニバス

『A Girl meets A Boy and A Robot』(渡辺信一郎監督)
「太素プロジェクト」は、日本・中国・ニュージーランドを代表する監督が参加する共同制作プロジェクトだ。
時間と空間を超越する謎の宇宙元素「太素」を巡る物語という共通のコンセプトのもと、4本の短編アニメーション作品がオムニバス形式で制作されている。
『カウボーイビバップ』『アニマトリックス』の渡辺監督と、米アカデミー賞ノミネートの『九十九』や、日清カップヌードルのCM・OVA連動作品『FREEDOM』を手がけた森田監督。

『弦の舞』(森田修平監督)
初開催の映画祭のオープニングに選ばれた『A Girl meets A Boy and A Robot』と『弦の舞』は、表現手法においては対極的な2作品だ。
渡辺監督本人が「絵本のようなアニメ」と説明したように、『A Girl meets A Boy and A Robot』は2Dの温かみを感じさせる、少女と少年とロボットの物語。
一方の森田監督の『弦の舞』は、異なる勢力に身を置く2人の戦いと交流を、3DCGアニメーションで描いた。
渡辺監督の挑戦「アニメーターの9割が外国人」

太素プロジェクトで『A Girl meets A Boy and A Robot』を制作した渡辺信一郎監督
制作時のエピソードで印象的だったのは、「今回参加しているアニメーターの9割が外国人。海外との仕事も容易になった」という渡辺監督の言葉。
『A Girl meets A Boy and A Robot』はMAPPAが制作しているが、参加した外国人アニメーターとは一度も直接会ったことがなく、オンラインでの打ち合わせのみだったという。
「作画におけるルールが違うので、予想外の原画もあって面白かった。口パクだけで100枚とか(笑)。そういう極端なもの以外は、積極的に活かそうと思った」と、自ら「挑戦」と口にした海外クリエイターとの仕事を振り返った。
ちなみに、アニメーションディレクターを担当したアントワーヌ・アンタン(Antoine Antin)さんはフランス出身。パリにあるフランス屈指のアニメーションスクール・ゴブランを卒業し、現在は世界で活躍しているアニメーターだ。
『AKIRA』からの影響が海外人気につながる?

森田修平監督。太素プロジェクトでは『弦の舞』を制作
2人はともに、これまで海外人気も高い作品を手がけているが、制作段階で意識しているわけではないという。
森田監督は、「特に意識とかはしていなくて、ただ、昔から海外でよく評価されている先輩方の映像を見たときに、何かが違うぞと、間の取り方やレイアウトの取り方を見ていて。自分もアニメーションをやる以上そういうのをぶっ込みたいなっていうのはあるので」とコメント。
続けて「『AKIRA』を見て映像を目指してきたので、そこは滲み出たというか、教育ですね。教育の賜物なんでしょうね」と、大友克洋監督による名作を挙げた。
渡辺監督も「僕も『AKIRA』には多大な影響を受けた」としつつ、「自分の制作スタンスは昔から変わってない。日本だけ、海外だけというわけじゃないけど、結果的に僕の仕事のスポンサーのほとんどは海外」と明かした。
音楽フェスのような信頼される存在になれば

最後に、2人は第1回目を迎えた「新潟国際アニメーション映画祭」についてもコメント。
森田監督は「自分が本当に影響を受けてきた方々がたくさん参加されていて、なかなか見る機会がないので、ぜひみなさんにも見て楽しんでいただけたらなと思います」と呼びかけた。
渡辺監督は「音楽には毎年フェスがあるけど、誰が出るかじゃなくて、フェス自体が信頼を得ているところは、出演者が発表になる前に売り切れちゃうんですよね。間違いないみたいな。(映画祭も)徐々にそういう風になっていけると良いんじゃないかな」とエールを送った。