【MLB】打率1割台でも信念貫き「良かった」 レイズ筒香が激白、1年目の苦闘と収穫

【MLB】打率1割台でも信念貫き「良かった」 レイズ筒香が激白、1年目の苦闘と収穫

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  • 更新日:2020/11/22
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レイズ・筒香嘉智【写真:Getty Images】

独占インタビューで明かす、新天地での苦悩と手応え

レイズ筒香嘉智のメジャー初シーズンが終わった。チームはリーグ最高勝率でポストシーズンに進み、7年ぶりにワールドシリーズへ出場。世界一こそ逃したが、ドジャースと第6戦までもつれる熱戦を展開した。

メジャー移籍1年目で貴重な経験を積んだ筒香だが、打率はプロ1年目の2010年以来となる1割台を記録。個人的に満足のいくシーズンではなかったことは容易に想像できる。「結果から逃げるつもりはない」という28歳は同時に、今シーズンを「僕にとって大事な1年になるのかなと思います」と振り返る。

NPBからメジャーへ羽ばたいた大砲は、異国の地で何を感じ、何を得たのか。「Full-Count」の独占インタビューに応じた筒香がメジャー1年目を振り返り、飾らぬ率直な想いを語ってくれた。まずは前編では、今季のパフォーマンスと向き合う。

◇ ◇ ◇

「率なんか、全然話にならないと思います」

51試合に出場し、打率.197、8本塁打、24打点、26四球、50三振、出塁率.314、長打率.395。自身のメジャー1年目の成績を、筒香はバッサリと斬り捨てた。

「プロなので、自分が出した数字の責任を取るのは当たり前」

もちろん、DeNA入団1年目以来となる打率1割台という結果から、逃げるつもりは全くない。

傍から見れば、失意のメジャー1年目だったかもしれない。だが、筒香が今季残した結果から目を逸らさず、正面から向き合えているのは、この数字に至った理由が見えているからだ。その背景には、筒香が持つ“もう1つの逃げない姿勢”がある。

「どうしても勝負事なので結果が欲しくなったり、数字を追いかけたくなってしまう。本当は打点やホームラン数など動かない数字を追いかけるのがいいんでしょうけど、やっぱり打率は選手の心の安定に繋がる要素。ただ、今年に限って言えば、僕はその場しのぎの結果を出しにいくことを選んで小手先の調整に逃げず、自分のスタイルで入り込んでいけたというのは良かったんじゃないかと思います」

古巣DeNAでは“ハマの大砲”と呼ばれ、侍ジャパンでも主軸を任された男でも、初めて経験するメジャーの世界。さらに、新型コロナウイルスの影響により、レギュラーシーズンが60試合という異例の短さ。例年よりも一層限られた時間の中で「何が通用するのか、しないのか」を見極めるには、ブレることのない基準が必要だ。筒香にとって、それが「自分の間合いと打ち方」を崩さないことだった。

自分のスタイルを貫いた結果、成績は伸び悩んだが「苦しいことは分かっている中で、自分の形で入り込んで行けた。当時は苦しかったですけど、シーズンが終わった時に足りなかったことが見つかったり、学びが得られたりしたんだと思います」と手応えを口にする。

95マイルの壁はあったのか…「自分の間合い、打ち方ができればヒットは出る」

周囲からは「筒香は95マイル(約153キロ)以上の球に対応できていない」という声も上がった。それは本人の耳にも届いている。メジャーの投手陣について「もちろん、全体的にスピードが速くて、変化球もハードな曲がりが多いのも事実としてある」と違いを認める一方で、「自分の間合い、打ち方ができれば、91マイル(約146キロ)だろうが、98マイル(約158キロ)だろうがヒットは出ています」とも感じている。

「例えば、プラスチック製のバットを持って、柔らかいビニルボールで遊んでいる時は、どんな近くから投げられても“力む”ことはないですよね。でも、試合の中で硬球を打つとなれば、いろいろな“力み”が出て本来見えるはずのものが見えなくなる。打つボールが速ければ速いほど、体のいろいろな部分に無意識のうちに力が入って反応してしまう中で、どれだけ自分のスイングで打てるか。96マイル(約154キロ)でも自分の間合いで無駄なくスイングできている時って96マイルに感じないんです。自分の間合いではなかったり、どこか力んでいると、2マイル(約3キロ)の差でもすごく大きく感じてしまう。数字として出ている結果とは、まったく違うもの、違う感覚、違う手応えが自分の中にはありますね」

昨オフの入団会見でケビン・キャッシュ監督は筒香に打線の中軸を担うことを期待したが、お世辞にも期待通りとはいかなかった。それでも、自分を見失わずにシーズンを終えられたのは、チーム状況のおかげもある。“全員野球”を掲げるレイズは、日替わりヒーローを生みながら激戦区のア・リーグ東地区を制し、ワールドシリーズでも気を吐いた。球団初のワールドシリーズ優勝には届かなかったが、上々の2020年シーズンだったと言えるだろう。

筒香はポストシーズンが進むに連れて出場機会が減りながらも、頂上決戦の舞台を味わうことができた。当然、野球選手として悔しさを感じてはいるが、今はそれ以上に1日でも長く野球ができたことに感謝する。

「試合に出られなくて悔しいのは、もちろん選手でいる以上感じること。でも、そこに対する苛立ちはなかったですね。試合は出られなくても自分が吸収できることはいろいろあったし、ポストシーズンでも出場機会が多かったわけではなくても、あの時期まで野球がやれたからこそ感じられたことが多々ありました。チームメートに恵まれて、あの舞台まで行けましたけど、すごく大きなことでした」

逆方向へのアーチで一定評価も「完璧なホームランは1本もなかったです」

手探りのシーズンの中でも一定の評価を得ていたのが、ここぞでの一発、ホームランだった。特に、逆方向のスタンドに叩き込むアーチは地元メディアでも高評価。ただ、筒香自身は「自分の中では完璧なホームランは1本もなかったですし、ホームランを8本打ったっていう感覚もないんです」と明かす。

「会心の当たりは1本もなかったですね、今年に関しては。日本で使っていたバットがメジャーでは使えなかったので、そこはずっと悩んでいた点の1つ。どこか違和感がある状態だったので、余計に気持ちいいホームランがなかったんだと思います。ただ、おかげで今年はいい意味での鈍感力がついてきたのかなとも思いますね」

日本で10年以上使ってきたグリップが細く、ヘッドが重めのバットは、メジャーの規定を通らず。新たなバットで勝負した。それ以上、愚痴めいたことは言わなかったが、バットを体の一部だと思って操ってきた男にとっては、わずかな感覚のズレがとてつもなく大きなものに感じられたはずだ。だが、そこに言い訳は求めない。

振り返ってみれば、筒香はこれまでも新たなステージに進んだ時、スムーズに結果を出すタイプではなく、壁にぶち当たり乗り越えてきたタイプだ。慣れるまで少し時間はかかるが、そこから爆発的な成長を見せる。横浜高校から進んだDeNAでは1軍で成績を出すまで5年掛かったが、それ以降の活躍はご存じの通り。「最近気付いたんですけど、できないことをそのままにしない、できない時に逃げない、これと決めたことは継続するっていうのは、人よりもこだわりを持っている部分かもしれません。僕には、逃げる、という選択肢はないし、それが普通だと思っていたんですけど」と自己分析する。

それだけに、目先の結果を追い求めることに逃げず、立ちはだかる壁に正面衝突をしながら攻略のヒントと手応えを得た今年は「僕の人生において、すごく大きな1年になると思います」と言えるのだろう。

「来シーズンにむけてのこのオフが、ここ数年では断トツに楽しいシーズンオフになると感じています。はやく野球をしたいっていう想いが、例年に比べたら圧倒的に強いですね」

契約最終年、勝負の2年目に向けて、成長の青写真はしっかり描けているようだ。

(後編に続く)(佐藤直子 / Naoko Sato)

佐藤直子 / Naoko Sato

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