オランダ・アイントホーフェンを本拠とするVDLグループは、トヨタ製の燃料電池モジュールを採用した同グループ初の大型水素トラックを公開した。VDLはさらに4台を追加する予定で、いずれもトヨタの欧州におけるルート輸送を担う運送会社を通じてトライアルを行なう。
このトライアルは2023年中に開始し、5年間続ける予定となっている。水素社会の実現に向けて商用車の燃料電池車(FCEV)大型車もパイロットフェーズに入ったようだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Toyota・VDL Special Vehicles
トヨタ製モジュールを採用したVDLの燃料電池大型トラック
トヨタの欧州事業会社であるトヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME)とオランダのバス・特装車メーカー、VDLグループは2023年5月に提携を発表しており、デモンストレーション用に最初の燃料電池トラックをローンチするとしていた。
そして9月12日にはトヨタ製の燃料電池を採用した燃料電池大型トラックを初公開した。このトラックはトヨタの欧州における輸送業務に活用され、同社の長期目標である脱炭素化を目指すという計画だ。
車両を製造するVDLスペシャル・ビークルズはVDLグループに属し、オン&オフロードのBEVや水素ソリューションを得意としており、車両開発、プロトタイピング、ドライブトレーンの試験・開発などを行なっている。いっぽうで、小規模から中規模のゼロエミッション車の製造キャパシティを持ち、製造請負業者としてゼロエミッション車の生産も請け負っている。
1953年に創業したVDLグループはファン・デル・レーフテ家が所有するファミリー企業で(社名はその頭文字)、オランダのアイントホーフェンが本拠。オランダ大手のバスメーカーであり、その経験をバックグラウンドに持つVDLスペシャル・ビークルズは様々な商用車の架装に対応する。
特にゼロエミッション技術の経験も20年に及ぶと言い、水素やバッテリーなど大型トラック用のソリューションの経験も豊富だ。
公開された画像は、キャブバックに6本の水素タンクを備える大型トラックで、第五輪を架装するトラクタヘッドとなっている。プレスリリースで明言されてはいないものの、車両は同じアイントホーフェンを本拠とし、VDLとも関係が深い大手トラックメーカーDAFの「CF」トラックとみられる。
トヨタは水素をカーボンニュートラル実現に向けた重要な構成要素だと考えており、燃料電池技術をモビリティや輸送を超えて様々な分野に活用している。例えば乗用車やトラック・バスのほか、鉄道、船舶、定置発電機などにも採用されており、トヨタは水素のフロントランナーとなっている。
欧州ではTMEが第2世代の燃料電池モジュールの生産を2022年に開始した。トヨタは圧力700barの気体水素が燃料電池車両用の標準になると見ているようだ。
パートナーとのコラボを重視
トヨタ製モジュールを採用するVDLの最初の燃料電池デモ・トラックは、ロードテストを実施した上で、プロジェクトを次のステップに進めるための改善点を評価する。VDLはさらに4台の燃料電池トラックを用意しており、いずれもトヨタの輸送プロバイダーであるVOSトランスポート、シーバグループ、CAT、郵船ロジスティクスなどで使用する予定だ。
これらの運送会社は水素トラックを日常業務で使うという重要な役割を担っており、それぞれの輸送ルートはベルギーのアントワープ、フランスのリール、ドイツのケルン、オランダのアムステルダムとロッテルダムなどを通るルートとなっている。
それぞれのルートには少なくとも1か所の水素充填ステーションがあり、またバックアップ用のソリューションも用意するそうだ。
こうした全ての関係者の協力のもとで、公道での燃料電池トラックの実用化と欧州のエネルギー移行に向けた知見を一つにまとめることにしている。
このトライアルの期間は5年で、欧州全域での代替燃料規則(AFIR:欧州で2023年3月に成立した代替燃料インフラの導入に関する新法)に適合した持続可能な水素インフラの更なる開発を促すとともに、さらに多くのカーボンニュートラルな水素ソリューションの誕生にも期待している。
プロジェクトはトヨタが輸送部門の脱炭素を実現し、2040年までにカーボンニュートラルを達成するという長期目標に向けたイニシアチブを補うものだが、そのためには乗用車の電動化にとどまらないアプローチが必要となる。
トヨタは様々なパートナーとのコラボレーションを重視しており、これにより持続可能かつ達成可能な水素社会への移行を促進する。
モビリティセクターのいろいろな企業をパートナーとしているのもこうした理由によるもので、信頼性が高く、かつ高効率のソリューションを提供するためには異なるスキルが求められるからだという。
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