業績好調の不二家 高付加価値ケーキ、若者支持の菓子ヒットに見る新戦略

業績好調の不二家 高付加価値ケーキ、若者支持の菓子ヒットに見る新戦略

  • マネーポストWEB
  • 更新日:2021/11/25
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不二家の競争力はどこに?(写真は昨年発売で、今も生産が追いつかない「チョコまみれ」)

製菓と洋菓子を二本柱とする不二家は1910年創業の老舗。長い歴史ゆえ、不二家の購入層といえばファミリーやシニア層という印象が強かった。だが、コロナ禍で巣ごもり消費が急増した中で、若年層の開拓にも成功しているという。どんな戦略を打ち出しているのか、河村宣行・社長(66)に訊いた。

──平成元年(1989年)当時は何をされていましたか。

河村:1989年当時は商品企画を担当していました。バブル真っ盛りの華やかな時代だけに消費者も移り気で、ライバル社と競うように新商品を投入していました。

そんな中、私も関わったスナックチョコの「アメリカンバー」(1988年発売)は、当時の大人気アイドルグループ・GENJIさんをテレビCMに起用したところ、飛ぶように売れましたね。

──その後、2007年に期限切れ原材料使用に端を発する一連の問題で不二家は窮地に陥ります。河村さんは当時、広報対応の責任者として批判の矢面に立ちました。

河村:前年の9月に製菓事業の営業部長から人事総務部長に異動していたのですが、当時は総務セクションの中に広報担当を1人置いている程度でした。ところが年明けの1月に問題が発覚すると取材が殺到し、広報経験が全くなかった私はメディア対応に苦労しましたね。

そのさなか、食品の安全・安心を確保するための技術的な仕組みを山崎製パンさんから提供していただきました。また、当社は一連の問題で資金的な面でも追い込まれていましたので資本面でも助けていただき、ヤマザキグループの一員となって今に至っています。

──今年、山崎製パンのテレビCMに登場している女優の酒井美紀さんを社外取締役に迎えました。

河村:昨年、当社のイメージキャラクターである「ペコちゃん」誕生70周年という節目にあたり、どなたかにアンバサダーを務めていただこうという話になり、(山崎製パン最高顧問の)山田(憲典)会長を通じてお願いし、ご快諾いただいたという経緯です。

酒井さんは世界の子供たちを支援する社会貢献活動に熱心ですが、我々も「ペコちゃん」を通じて保育園や児童施設を巡回する活動を続けています。ご多忙な中でも酒井さんには取締役会に毎回ご出席いただき、外部の方ならではの発想も頂戴しています。

──コロナ禍では自宅でお菓子やケーキを楽しむ人が増え、足元の業績は好調ですね。

河村:巣ごもり需要が業績を押し上げたことは確かですが、以前から進めていた洋菓子事業の新しい戦略がちょうど同じタイミングで実を結んだことも大きな要因だったと思います。

洋菓子事業はここ20年ぐらいずっと赤字続きでしたが、一昨年頃から高付加価値化、高単価にシフトしていく方向にチェンジさせました。

──赤字続きの原因はどこにあったのでしょうか。

河村:もともと洋菓子部門の主力商品は、ホール販売の誕生日ケーキやクリスマスケーキでしたが、核家族化が進み「個食ニーズ」が増えています。

ホールケーキでは大きすぎるし、コンビニに行けば家族それぞれが好きなものを1個ずつ買える。でも不二家の店舗でカットケーキを1個だけ買うのは、お客様としてはやや躊躇するところがあったのでしょう。

──老舗であればなおさら、メイン商品の方針を変えるのは勇気がいると思います。

河村:社長就任後に店舗を回ると、「不二家のケーキは1個300円超えたら売れないよ」とずいぶん言われましたね。ただ、そんな矢先にコロナ禍が発生したことで、シフトは進みやすかったと思います。

当社は「おうち時間スイーツ応援」というキャンペーンを打ち出し、400円を超えるプレミアムショートケーキの拡販に乗り出しました。

外でスイーツを食べられないのであれば、自宅で少し高価なケーキを食べたくなる。巣ごもりを強いられたお客様から「何年かぶりに不二家のケーキを食べてみたけど、結構美味しいじゃないか」というお声をいただくようになったのです。

高級洋菓子店は目指さない

──高付加価値路線は今後も進めていく?

河村:社長に就任したタイミングで、「西洋菓子舗不二家」というブランドを三越伊勢丹グループさんのお店で始めました。通常商品よりもグレードが高い700円前後のケーキで、ブランド力をもう一段磨いていくことが狙いです。

ただし、デパ地下に入っている高級洋菓子店を目指しているわけではありません。やはり不二家の商品は広く支持されるケーキであり、お菓子だと考えています。

──これまでも黒字だった製菓事業は?

河村:大人も子供も自宅の滞在時間が増えたことで、「カントリーマアム」のファミリーパック(大袋)が好調でした。さらに昨年発売した「カントリーマアム」の派生商品「カントリーマアムチョコまみれ」が若い世代を中心に今も売れ続けており、生産が追いつかない状況です。今年に入って製造ラインを増やして懸命に対応しています。

──「チョコまみれ」がヒットした理由は。

河村:もともと「カントリーマアム」のソフトクッキー自体が複雑な製造工程で、「チョコまみれ」ではさらに大量のチョコチップを使い、チョコレートコーティングもしています。チョコレートは原料から手がけていますから、他社には真似できない品質です。この価格でこれだけの量を供給できるのは当社のコスト競争力ならではだと思います。

──若者の取り込みは?

河村:昨秋、テレビCMでジャニーズのSnow Manさんに出ていただいたところ、大きな反響がありました。当社の洋菓子店に来店される10代、20代の若いお客様が目に見えて増えています。(やはりSnow ManをCMに起用した)チョコレートの「ルック」も若者人気が出ています。

将棋棋士の藤井聡太さんにも「ON/OFFチョコレート」のCMにご出演いただいています。

3年ほど前に藤井さんが対局場に当社のチョコレートを持って来られたことがきっかけですが、藤井さんや将棋連盟さんとご縁を深める中で、当社は昨年(第6期)から叡王戦の主催者となりました。9月13日にはその叡王戦で藤井さんが三冠を達成し、当社も大変盛り上がりました。

【プロフィール】
河村宣行(かわむら・のぶゆき)/1954年東京都生まれ。東京経済大学経済学部卒業後、1977年に不二家入社。菓子事業本部営業部長、人事総務部長、広報室長、CSR推進部長などを務めた後、2009年に取締役。常務取締役(2015年)、専務取締役(2018年)を経て2019年より現職。

【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。

※週刊ポスト2021年12月3日号

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