真夏でも手放さない。ホクロを隠す武装を解くのは、私を受け入れてくれる人の前だけ

真夏でも手放さない。ホクロを隠す武装を解くのは、私を受け入れてくれる人の前だけ

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2021/05/04
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この顔は自分が一番見ているはずなのに、一番見えにくい。毎朝顔を洗い、化粧をして家を出る。家に帰れば化粧を落とし、洗顔、スキンケアを終えて眠りにつく。

こんなにも1日の間で私の顔を凝視しているのは私であるはずなのに、外に出て私の顔を見るのは他人ばかりだ。その時どんな顔をしてどんなところに目をつけられているかなんて分かりもしないのは少々気に食わない。

「仕事できないブスとか人生終わってんな」とSNSに書かれて、私は目覚めた

浪人時代、この顔で平然と生きてきたことを辱めるような衝撃が

私の顔には両頬に直径5ミリ程度のホクロがある。

このホクロは物心ついた頃からあったので、早い段階から自分の顔に他の人にはあまり見かけないモノがあるのだと認識していた。

幼稚園の頃はどいつもこいつもバカ正直なもので、私の顔を見ては「何つけてんの?」と悪気ない顔で聞いてきたり、ニヤニヤしながら聞いてきたり、さまざま。この2つの点に何も誇りなんてなかったから、明日登園する時にはベージュの折り紙を貼っていくんだとその日1日考え抜いた策を自分の中に仕舞っておいては眠りにつき、忘れる。

案外、小中高と誰も私の顔については何も言わない子ばかりで恵まれすぎていた。

大学受験の浪人をした時、クラスに忘れもしない茶髪の男と灰色のパーカーを着たメガネの男が後ろの席に座った日。私の顔を見て吹き出した。

私に聞こえるような声量で放った「何顔に付けてんのあの人」というフレーズが文字化して私の思考を止める。

この言葉たちは、私のこれまでこの顔で平然と生きてきたことを辱めるような衝撃を孕む。こんな顔で目指す大学に入っても同じ人種たちが私を顔面至上主義者たちの足元に跪けさせる、久々に会いたい同級生に、田舎では知り得なかった垢抜けた人種を知ってしまった同級生にこんな顔を見せられない、こんな顔でも毎日変な顔せず生活していた家族はこんなにもダイバーシティな人間なのか。さまざまな葛藤がそれから何日も何日も何日も浮かんで私の汚い言葉になっていった。

未だに、人がこのホクロのある顔をどう思っているのかわからない

それからホクロ除去には私の場合、総額10万円はかかることがわかった。

浪人時にはそんなお金は持っていないし、そんなことをしている場合ではない。

私はその出来事を機に毎日マスクをして過ごすようになった。

まだまだ暑い8月中旬のことである。

それから2年経った私もマスクをしている。世の中のみんながマスクをしているから、夏でも変ではないみたいだ。

2年経って精神も落ち着き、人並みに大学生活を送り、人並みに友達もでき、人並みの恋愛をしている。友達は私と話す時はちゃんと目を見て話してくれる。彼はたまにホクロの部分にキスをしてくれる。

私は未だに人がこの顔をどう思っているのかわからない。目立つものがあって可哀想だと思う人も居れば、変な顔だと嘲笑う人も居れば、チャーミングだと思う人も居ると思う。

ホクロを持つものとしては一か八か。今で十分に幸せだけど

ホクロがあることはその人の経験によって損得は分かれる。マスクの時代だと尚更だ。目の第一印象に反するか、平行するか、ホクロを持つものとしては一か八かなのだ。

あの時の男2人に言われた経験がなければ今も平然と自分の顔を気にすることなく、素のままで生きることを常とすることができた。そうだったら私はもっと明るかっただろうか、もっといろんな友達を増やして、いろんな煌びやかな世界に自ら足を踏み入れただろうか。今の彼氏ではなく、違う人と付き合っていただろうか。

そんな世界は正直興味がない。私は今で十分に幸せだ。

人に変だと、可哀想だと、魅力的だと思われるホクロがある顔は自分で未だに気に入ってはいないけれど、誰にどう思われようと私の顔の一部だし、今更変えてもどうしようも無い。私の大切な人たちはもうこの顔を知っているから。その人たちに愛されるように、マスクの中でも愛らしい笑顔を意識しよう。

私は一体どんな顔をしているんだろうか。どう見られているんだろうか。未だにわからないからこそマスクをした顔で自信を持つ。マスクという武器でホクロを守る。もう私は私を受け入れてくれる人にしかこの武装を解きません。

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おうよう

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