躍進するカナダグース、「パンデミックの冬」の成長戦略

躍進するカナダグース、「パンデミックの冬」の成長戦略

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/10/19
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ここ数年、冬の寒い時期にアウトドアに出かけた経験がある人ならほぼ必ず知っていて、目にしたこともある、特別なジャケットがある。たとえ自分が持っていなくても、すぐにピンと来るはずだ。

このジャケットは、見るからにヘビーデューティーで実用本位。そして、さりげないが一目でわかる赤と白とブルーのワッペンが、着ている人に成り代わってこう語る。「わあ、はるばるやってきたけど、ほんとに寒いね!」と。

ここまで話してきたのは、もちろん、カナダグースのダウンジャケットのことだ。見た目こそシンプルだが、その価格は、倹約家の買い物客なら尻込みしてしまうほど高い。だが、その高額な価格設定をものともしないファンたちのおかげで、カナダグースは、この「パンデミックの冬」に勝ち組入りを果たしそうだ。その理由としては、製品の多様化をはじめとするいくつかのポイントがあげられる。

だが、その理由を探る前に、このブランドの歴史を手短に振り返ろう。つまりこのダウンジャケットが、「ウェリーズ」の愛称で知られるハンターのレインブーツや、L.L.Beanのビーンブーツ(通称ダックブーツ)などと同様に、超一流セレブ御用達のアイテムとなるずっと前の話だ。

創業者のサム・ティック(Sam Tick)がカナダグースの前身となった企業を設立したのは1957年。当初は、ウールのベストやレインコート、スノーモービル用のウェアなどを作っていた。

転機は2001年に訪れた。サム・ティックの孫にあたるダニー・リースがこの年、最高経営責任者(CEO)に就任したことをきっかけに、カナダグースは世界的な高級ブランドへと登りつめていった。人気が高まった一面で、高価すぎるというイメージも生じたとはいえ、何かにつけて話題になるブランドになったことは間違いない。

さらに時計の針を2016年、同社の「特別なジャケット」を至るところで見かけるようになった時期に進めてみよう。それまでのあいだ、カナダグースがオープンさせた実店舗はニューヨークとトロントの旗艦店だけだったが、これも、同ブランドの戦略からすれば驚くことではない。

そして2020年。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を襲い、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)が叫ばれるようになった。

ソーシャル・ディスタンシングがニューノーマルになる前から、カナダグースは、ダウンジャケット以外の多様な商品のラインアップを用意していた。それでも、看板商品であるオールパーパス・タイプのジャケットが圧倒的知名度を誇る状況に変わりはなかった。しかし2020年に入って、その状況は一変した。

人々の関心が、屋外でのレジャーやソーシャル・ディスタンシングに向くようになったところに、ちょうど気温が下がる秋の到来も手伝って、ライトなアウトドア向けアイテムやアウターウェアが、「パンプキン・スパイス・ラテ」と言う間もないほど瞬時に、脚光を浴びることになった。そして、カナダグースもまた、そうした風潮のなかで注目を集めている。

ボンバージャケットやレインコートといった、カナダグースの「ダウンジャケット以外の商品」が、消費者のワードローブの隙間を埋めるとしたら、今こそが完璧なタイミングかもしれない。この機会を活かせば、カナダグースは、氷点下の環境で目立つ高価なジャケットというイメージを払拭し、あらゆる季節に対応した高級アウトドア・アイテムを販売する企業へと脱皮できるはずだ。

カナダグースは、フットウェアおよび小物類担当のゼネラルマネージャーとしてアダム・ミーク(Adam Meek)を迎え入れ、ダウンジャケット以外のアイテムについてもラインアップの充実を図ってきた。早ければ2021秋冬シーズンから、同ブランドにとって初となるフットウェアのコレクションを発表するとの計画が、すでに明らかにされている。

小物類では、125ドルからという価格帯の帽子に加え、バックパックやウエストポーチ、さらにはマスクなどのコロナ対策アイテムが、熱心なファン向けに用意されている。

小売業が壊滅的な打撃を受け、消費者心理の先が読めない状況が続くなかでも、カナダグースは、8月11日に行った2021会計年度第1四半期の決算発表において、1株あたり利益で0.05ドル、売上で439万ドルという、それぞれ事前予測を上回る結果を出した。

アナリストたちは、今後の数か月間でカナダグースが大ヒットする可能性について言及している。ケイト・フィッツシモンズ(Kate Fitzsimons)が率いるRBCキャピタル・マーケッツのチームは、カナダグースがホリデーシーズンや気温が下がるこれからの季節に高い販売実績をあげるだろうとの見方を示した。

RBCのチームは、「在宅勤務が一般化したとはいえ、寒い季節に入ってからも消費者は屋外で過ごす時間を優先し、アウターウェアがその恩恵を受けると我々は予測する」と記している。「秋からホリデーシーズンに入るこの四半期のあいだに、このカテゴリーへの需要が高まり、デジタル購入意欲がさらに勢いづくと見ている。デジタルマーケティングや越境販売の開始も追い風となるだろう」

カナダグースが、認知度アップと商品へのアクセスの改善に向けた積極的な取り組みを始めた市場がある。それは中国だ。同社は、中国における売り場面積を倍増させるための施策を打ち出している。

フィッツシモンズ率いるRBCチームは、「中国本土の顧客ニーズに、より地元に近いところで応えるという意味で、これは賢明な一手だと我々は(この決断を)評価している」と書いている。RBCチームは、カナダグース売上の約40%を中国からの観光客が占めていたと推定している。

カナダグースの次の四半期決算発表は、11月12日に予定されている。これからの寒い季節に向けた冬物衣料に加えて、晩夏から初秋にかけての時期に、オールシーズンタイプのアウターウェアのラインアップが顧客にどう受け止められたのかについても、情報が得られることを期待したい。

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