中日が最下位独走中 立浪監督に誰も口を出せない...あまりに苦しすぎる“現状”

中日が最下位独走中 立浪監督に誰も口を出せない...あまりに苦しすぎる“現状”

  • デイリー新潮
  • 更新日:2023/05/26

完封負けは過去最悪のペース

昨季6シーズンぶりの最下位に沈んだ中日が、今季も低迷している。ここまで12球団最低勝率でセ・リーグ最下位に沈んでおり、浮上のきっかけはなかなか見えてこない(5月24日終了時点)。2年連続最下位となれば、球団史上初の屈辱的な成績となるが、中日ファンがやはり気になる点が、指揮官である立浪和義監督の“言動”ではないだろうか。【西尾典文/野球ライター】

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最下位脱出の糸口が見えない立浪監督

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就任会見では、課題の得点力不足に対して「打つ方は1年間打てないと言われたが必ず何とかします」と発言。現役時代は、通算2480安打を記録するなど、“ミスタードラゴンズ”と呼ばれた球団の歴史に残る名打者で、解説者時代は理論的な語り口が中日ファンの支持を集めていた。

蓋を開けてみれば、得点力不足は改善されるどころか、今季はさらに悪化している。完封負けは、長いプロ野球の歴史のなかで過去の最悪ペースで増え続けている。もちろん、中日の貧打は今に始まったことではなく、監督が変わっただけで改善するものではない。ただ、選手のなかには、立浪監督の指導方法に不満の声が出ているという。

「お前、変らんかったな」

「立浪監督は、打撃について特にこだわりが強いと聞きます。監督のやり方が合う選手は良いのかもしれませんが、打撃スタイルは選手によって異なり、監督の理論に合わない選手も当然、出てきます。中には『監督に言われた打ち方ではないと使ってもらえない。でも、その打ち方だと結果が出なくて、また使われない』とこぼしている選手がいます。昨年、京田陽太(現・DeNA)がトレードで移籍する時に、立浪監督から『お前、変わらんかったな』と言われたという話は有名ですが、監督の方針とマッチしない選手が苦しんでいる典型的な例だったのではないでしょうか」(地元テレビ局のスポーツ記者)

ここで名前が出た京田については、昨年5月4日のDeNA戦で途中交代となり、そのまま二軍降格となった際に「戦う顔をしていない」と立浪監督が発言したことも大きな話題となった。監督の方針に合わない選手は、容赦なく切り捨てるという印象を持たせるものだ。「戦う顔」という抽象的な表現で、二軍降格となる選手が出たとなれば、チームの士気にも影響することは避けられないだろう。

立浪監督の発言で疑問に感じるのはこれだけではない。今年4月30日のDeNA戦で完封負けを喫した後には、選手の入れ替えについて『考えていない』と発言しておきながら、翌日には3人の野手を登録抹消し、二軍から新たに3人の野手を昇格させている。

この時に昇格したビシエドもわずか6試合にスタメン出場(守備での出場を含めると7試合)したのみで、再び二軍に降格させられた(5月23日に一軍再昇格)。あらゆる面を思い直して柔軟にスピード感を持って対応を変えているとの見方もできなくはないが、行き当たりばったりの選手起用という批判はやはり避けられないだろう。

編成を巡っても“不用意な発言”

そして、立浪監督の“発言問題”は自身の管理する現場だけにとどまらない。本来フロントの業務である編成についても、不用意な発言が目立つ。

昨年のドラフト会議から2週間前には、1位候補として5人の選手の名前を挙げている。結局、この中には1位指名した仲地礼亜(沖縄大)は入っておらず、他球団をかく乱する作戦だったという声もあるが、監督がここまで多くの選手の具体名をあげるケースは、極めて“異例”だ。

立浪監督は、その後の10月11日には1位指名の選手について公表しないと発言したが、結局はドラフト会議前日の同19日に「仲地を指名する」と発表している。実際に候補となる選手の視察にも赴いていたが、他球団のスカウト陣からは、立浪監督の発言は不要だったのではないかという声が出ていた。

また、昨年オフには、京田を含めてトレードに動いたが、「2番手捕手を狙っている」と明言。最終的には、加藤匠馬をロッテから無償トレードという形で獲得しているが、監督の発言によって、他球団から足元を見られた可能性があると、一部の他球団の編成から指摘されている。

立浪監督に“物申せる人”がいない

不用意な発言は、これだけはない。大砲候補として獲得した新外国人のアキーノについても、立浪監督は『本当はブリンソン(巨人)が欲しかった』などと発言している。これが本音だったのにせよ、選手のモチベーションを削ぐ発言であることは否めないだろう。アキーノは、長距離砲の役割を果たせず、打率.154、本塁打1本と低迷し、二軍暮らしが続いている(5月24日終了時点)。

なぜ、ここまで立浪監督の発言は波紋を呼ぶことが多いのだろうか。ある球団関係者は、以下のように指摘する。

「基本的にコーチもフロントも立浪監督に“物申せる人”がいないというのが一番の原因ではないでしょうか。球団としても『チーム再建の切り札』として招聘した経緯もあって、立浪監督のやり方に口が出せないということもあります。ですが、それ以上に大きいのは、立浪監督のキャラクターのように感じます。あるOBは、現役時代から(立浪監督は)チームの中でも別格の存在で、監督やコーチ、先輩の選手からも何か言われているところを見たことがなく、誰も何も言えない雰囲気だったと話しています。“ミスタージャイアンツ”の長嶋茂雄さん(終身名誉監督)も、(立浪監督と同じような立場で)そうだったのかもしれませんが、巨人のフロントは、何とか勝たせようというバックアップがありました。今の中日は、当時の巨人のような圧倒的な資金がなく、補強にも限界がある。こうした中で、誰も監督に意見できないことが、チームをさらに苦しい立場に追い込んでいるのではないでしょうか」

立浪監督は3年契約であり、任期は来シーズンも残っている。このまま最下位を独走しても、立浪監督にチーム再建を任せ続けるのか、それとも……。球団の“決断”に注目が集まる。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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