首位を奪われたアサヒビール、復活の快進撃。生ジョッキ缶、マルエフがヒット

首位を奪われたアサヒビール、復活の快進撃。生ジョッキ缶、マルエフがヒット

  • bizSPA!フレッシュ
  • 更新日:2021/10/14

アサヒビールは2021年9月17日に“マルエフ”の名で親しまれる缶ビール「アサヒ生ビール」の販売を一時休止すると発表しました。

想定を上回る注文に商品供給が追い付かないため、一時休売せざるを得なくなったのです。出荷再開については11月の予定ですが、アサヒビールが休売せざるを得なくなったのは、2021年に入って2回目。4月21日にも「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」の一時休売を発表していました。

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アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶と、アサヒ生ビール

アサヒは2020年の国内ビール出荷数において、競合のキリンに追い抜かれていました。立て続けのヒット商品に恵まれ、アサヒは再び首位に返り咲くことはできるのでしょうか?

ビールではなく“ビール類”で勝負をかけたキリン

ビール単体の出荷数でみると、アサヒは他社を圧倒しています。2020年の出荷数は2019年比22%減(主力のスーパードライの減少率)となったものの、6892万箱を出荷しています。キリンは3633万箱、サッポロが2453万箱、サントリーが2008万箱です。アサヒは2位のキリンとの間に3300万箱近い差をつけています。

しかし、発泡酒や第3のビールを含めたビール類で比較をすると、キリンがトップに立ちます。キリンは1億2941万箱で前年比4.5%の減少に留めました。アサヒは2020年から出荷数を公表していないものの、ビール類の売上は前年比16%減少しており、そこから推計される出荷数は1億1925万箱。サントリーは11%減の5675万箱、サッポロが8.1%減の3995万箱です。

アサヒの強敵キリンが、ビール単体ではなくビール類で強みを発揮しているのは、発泡酒や第3のビールへと主軸を移したためです。それは消費動向に合わせたものでした。

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課税移出数量の推移 ※国税庁「酒のしおり」より

ビールは1994年度の出荷数をピークとして緩やかに下降しています。2002年度ごろまでその穴を発泡酒が埋めていましたが、2003年度に発泡酒が増税になったことで人気は衰えました。発泡酒に代わるものとして、第3のビールが次々と市場に投入されました。

飲食店への依存度の高さが打撃に

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アサヒビール本社ビル。泡のあふれるビールジョッキをイメージしている

新型コロナウイルスによる新常態は、アサヒにとって2つの点で予想外だったといえます。

1つ目はアサヒがコロナ前からビールへの依存度が高く、2018年の段階でアルコールカテゴリー別で全体の56%を占めていたことです。発泡酒や第3のビールなど、ビール類で見ると74%を占めています。一方でキリンのビール類に、ビールが占める割合は35%。アサヒはビール依存度の高さが裏目に出たといえます。

2つ目が飲食店などの業務用への依存度も高かったことです。アサヒの販売チャネルを見ると、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、酒のディスカウントストアを除く、業務用酒販店とその他の割合は52%でした。飲食店のアルコール提供制限を真正面から受けたのです。

2019年のアサヒのビール類の出荷数は1億4196万箱。キリンは1億3507万箱でした。コロナ禍で飲食店のビールの消費量が激減したことに加え、家庭で楽しむビール類の嗜好が多様化したため、2020年にアサヒはキリンにシェアを奪われたのです。

緊急事態宣言の解除とヒット商品のダブル効果

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アサヒ生ビール。通称“マルエフ” ※リリースより(以下、同じ)

ここにきてアサヒ復活の狼煙(のろし)が2つ上がっています。1つは緊急事態宣言が解除され、飲食店の酒類の提供が解禁されたことです。日本フードサービス協会の調査によると、GoToEatキャンペーンを実施した2020年10月の居酒屋の売上高前年同月比は、年間の売上高前年同月比の平均値より13ポイント高い、64%となっています。

今後、営業時間の制限がなくなり、飲食店への協力金もなくなります。政府や自治体は飲食店やホテルなどに向けた救済措置、経済対策をとる必要に迫られるでしょう。リベンジ消費と消費喚起策で居酒屋需要は回復が見込まれます。

もう1つが家庭用ビール商品のヒットです。アサヒはビールへの依存度を高める戦略をとったため、今から発泡酒、第3のビールのシェアを獲得するには、資金と時間が必要です。しかも戦略的にそれを進めたとしても、立ち上げたブランドがヒットするとは限りません。

その点、「アサヒ生ビール」と「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は既存商品の切り口を変えただけで、ヒットへと導きました。それが今回のポイントです。

飲食店の一部でのみ扱っていたマルエフ

マルエフこと「アサヒ生ビール」は、1986年に発売されたビールで、のどごしのよいすっきりとした味わいが特徴です。翌年にスーパードライが発売されてヒットしますが、マルエフはその足掛かりとなりました。1993年に缶の販売は終わったものの、一部の飲食店で販売は継続していました。根強いファンが残っていたのです。

アサヒは消費者のニーズが変化する中、スーパードライブランド1本で勝負するのは限界だと判断。マルエフの復活を計画しました。年内150万ケースを目標とし、2026年には1000万ケースを目指しています。見事、生産が追い付かないほどのヒットとなりました。

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アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶

「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は自宅でジョッキ感覚が楽しめる商品です。自宅でしか飲めなくなった世相に合わせた商品でした。2021年4月にコンビニ限定で発売されると、4月販売予定分がわずか2日で売れたために品薄となり、出荷を一時停止。その後、年内は月1回・数量限定での発売を予定しています。

シェアを奪われたアサヒの驚くべき快進撃が始まりました。シェアトップを奪還することができるのか。熾烈なシェア獲得争いに注目が集まります。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

【フジモトヨシミチ】

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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