私なんかが「特進クラス」でいいの? 新学期を迎える中国の子どもたちの憂鬱

私なんかが「特進クラス」でいいの? 新学期を迎える中国の子どもたちの憂鬱

  • JBpress
  • 更新日:2022/09/23
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(写真はイメージです)

(山田 珠世:中国・上海在住コラムニスト)

中国全土で新学期が始まる9月。子どもたちがみんな新しい学校生活に胸をふくらませているかというと、けっしてそんなことはなく、複雑な思いで新学期を迎える子どもも少なくない。とりわけ、中学・高校の新1年生になる子どもの心境は複雑だ。

なぜか? それは、夏休みに行われたクラス分けテストによって、特進クラスに入った子とそうでない子がいるからだ。

上海では一般的に、9月から中学生、高校生になる子どもたち向けに、新学期前の夏休み中にクラス分けテストが行われる。そのため子どもたちは、夏休みにこのテストのための勉強をしなければならない。中学校に上がる際のクラス分けテストは、30~40%程度が中学で習う内容、つまり小学校で習っていない内容なのだという。そのため、夏休み中のテスト対策は必須である。親からも厳しく勉強を命じられる。

ただ、勉強を頑張るだけでは、必ず特進クラスに入れるとは限らない。どうしても子どもを特進クラスに入れたい親は、ある手段を講じる。それは、コネを使うことだ。

中国の人は、すべての物事においてコネを使う。特に子どもの進学においては、使えるコネはすべて使おうとする。コネに頼るのは裏の手ではあるが、誰もが使えるだけ使うので、割と堂々としたものだ。

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なぜ子どもを特進クラスに入れたいのか

当然ながら、特進クラスには、クラス分けテストの成績がいい生徒が集まる。そうすると「自然に、クラス全体に勉強する雰囲気が漂う」(中国人の友人)のだという。

さらに、授業を担当する教師の質にも差があるらしい。まず、出身大学が違う。また、これまで受け持った生徒の中で有名大学に入った子どもの数も大きく異なるというのだ。

だからこそ、親は子どもをなんとしてでも特進クラスに入れたい。今年、子どもを有名中学に入学させた別の友人は「コネを使って子どもを特進クラスに入れた」と話してくれた。中には“仲介人”にお金を払ってコネを作るケースもあるらしい。

ただ、コネにもランクがあるという。その友人によると、まわりにも同じようにコネを使った人がいるらしいが、ふたを開けてみると、みんな同じ特進クラスに入れたわけではなかった。特進クラスが複数ある場合、その中でまたランクが分かれているのだ。同じコネでも、学校関係者の職位やその人との関係性などによって力の大きさが変わってくるということのようだ。

自分が特進に入っていいのか? 悩む子も

親は、あらゆるコネを使って子どもを特進クラスに入れようとするが、当の子どもが入りたいと考えているかは別の話だ。

ネット上では、「普通クラスにしか入れない成績なのに、親がコネを使って私を特進クラスに入れようとしている。おそらく勉強についていけない。どうしたらいい?」と悩みを打ち明けている子どもがいた。また、「そもそも親のコネで特進クラスに入ることは許されるのか?」と問いかける子どももいる。

クラス分けテストで本当に良い点をとって特進クラスに入る子も、もちろんいるだろう。ただ、親は自分の子がどれだけ勉強ができても不安なので、コネがあったら使ってしまうのだ。子どもとしては複雑な心境だろう。

私立中学はくじ引きで入学

以前、上海の私立中学は、入試を勝ち抜いた成績のいい子どもが集まることで有名だった。かなりのスパルタ教育で、6年生のときには中1の内容を(上海では6年生から中学生扱いとなる)、中1になると中2の内容を、といった具合に前倒しで授業を進める。

子どもたちが中学3年生になるころにはすべての高校受験科目のカリキュラムを終えており、1年かけて高校受験の勉強ができることから、受験には有利。親はこぞって子どもを私立中学へ行かせたがる。一方で、公立中学への進学を希望する子どもは極端に少なくなっていた。

ところが上海市は2年前、私立中学への進学を、申込者のなかから“くじ引き”で決める制度を導入した。その結果、私立中学も公立中学同様に、さまざまなレベルの子どもが入学してくることになった。そこで、クラス分けテストの重要性がますます高まったというわけだ。

「巻かれて」苦しむ子どもたち

上海市では今年(2022年)、高校入試改革が行われ、受験科目や点数の構成に大きく変更が加えられた。さらに、私立中学と公立中学のバランスを保つため、公立中学には、市の重点高校の受験枠が特別に設けられた。

そうした改革によって今後は徐々に公立中学を選ぶ親も増えるといわれている。とはいえ、おそらくそう簡単にはいかないだろう。

中国ではここ数年、社会現象として「内巻」という言葉がよく使われるようになった。直訳すれば「内側に巻かれる」という意味だが、要は「みんなが頑張っているから自分も頑張らないとついていけない。ただ、頑張れば頑張るほど、競争がますます激しくなり、終わりが見えない」という状態を指す。中国の受験戦争は「内巻」の最たるもので、競争社会が生む歪(ひずみ)である。

上海市の高校入試改革や特別枠の設置も、目的は子どもが「巻かれない」ようにするためのものだ。ただ、親がコネを駆使して、結果的にますます子どもが巻かれてしまっているのは皮肉である。

山田 珠世

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