「いずも」空母化計画は中国の警戒感を高めたのか

「いずも」空母化計画は中国の警戒感を高めたのか

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  • 更新日:2018/01/12
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2017年12月27日、中国国営の新華社が、「日本が『いずも』型護衛艦の空母化を検討している」と報じた。この記事を受けて、中国では「日本が憲法違反の攻撃能力を持つ」という意見もネット上に流れた。

もちろん、中国は、日本の軍事力が強化されることについて警戒感を高めただろう。しかし、中国国内の反応は、予想されたよりはるかに低調だ。なぜ中国は、もっと強く日本を非難しなかったのだろうか。その疑問を解くために、まず、「いずも」とはどのような艦艇なのか、そして「空母化」すれば何ができるようになるのかを見てみたい。

空母化が検討される護衛艦「いずも」(写真:AFP/アフロ)

短距離離陸・垂直着陸ができるF-35Bを搭載

「いずも」は、2015年3月に就役した日本最大の水上艦艇である。全長248メートル、幅(エレベーター部分を含まず)38メートル、基準排水量19,500トンで、満載排水量は26,000トンにもなる。艦載機としてヘリコプター約14機を搭載できる一方、必要に応じて多数の大型車両も収容可能である。上部構造物を右舷に寄せて全通甲板を採用し、5機のヘリコプターを同時運用できる。「空母型護衛艦」と呼ばれる所以である。同級2番艦として、2017年3月に就役したばかりの「かが」がある。

すでに10機以上のヘリコプターを運用することができる空母型護衛艦の「いずも」を「空母化」するとは、簡単に言えば、固定翼機である戦闘機を運用できるようにすることだ。しかし、長さ250メートルに満たない飛行甲板では、戦闘機が通常離陸することはできない。

300メートル強の飛行甲板を持つ中国の訓練空母「遼寧」も、スキージャンプ台を使わなければ戦闘機を離陸させることができないのだ。スキージャンプ台を使用しても、「遼寧」の艦載機は、燃料やミサイル等の弾薬を最大限搭載することができないとされる。重すぎて離陸できないのだ。

330メートル以上の飛行甲板を持つ米海軍空母「ロナルド・レーガン」は、スキージャンプ台を備えていないものの、蒸気カタパルトを用いて航空機を射出することによって、燃料も弾薬も満載した航空機を発艦させることができる。

しかし、「いずも」は、スキージャンプ台を取り付ける訳でも、カタパルトを装備する訳でもない。F-35Bという短距離離陸・垂直着陸ができる戦闘機を艦載機として使用するのだ。F-35Bの搭載により、構造を大きく変更するような根本的な改修は必要ではなくなる。それでも飛行甲板の改修は必要になるだろう。

大型のヘリコプターを運用できるように設計された甲板強度は、重量の面ではF-35Bを運用する際にも大きな改修を必要としないかもしれないが、下方に折り曲げられたノズルから噴射される排気の熱には対処しなければならないと考えられる。構造の大きな変更は行われないとしても、かなり大規模な改修になる可能性がある。

攻撃能力は限定的か

さらに、改修が終わって、実際にF-35Bを運用が物理的には可能になったとしても、通常の空母に比較すれば、その攻撃能力は限定的なものになると考えられる。それは、F-35Bの短距離離陸能力によるものだ。

F-35Bは短距離離陸/垂直着陸を実現するために、構造が複雑になって余分な重量を抱えることになるとともに、余分な体積によって燃料搭載量も減少している。さらに、通常離陸に比較して、短距離離陸の燃料消費は大きくなると思われる。そのため、F-35Bの航続距離は、状況にもよるが、通常離陸を行うF-35A/Cに比べて約2/3になっているとも言われる。F-35シリーズは、敵地深くまで入って、攻撃だけではなく、センサー・ノードとしてもネットワークに組み込まれて機能する。航続距離の短さは、F-35が有している能力を制限するものなのだ。

さらに、「いずも」級が搭載できる艦載機の機数には制限がある。中国の訓練空母「遼寧」は満載排水量で6万トンを超えるが、搭載機数は約20機であるとされる。米国の空母「ロナルド・レーガン」は、平時で40機以上の戦闘攻撃機を搭載していると言われるが、その満載排水量は10万トンを超える。これに比べて、「いずも」は満載排水量2万6千トンである。搭載できるF-35Bの機数は、ヘリコプターの搭載機数である14機と大差はないと考えられる。

しかも、例えば、効果的に要撃するためには早期警戒機が、空爆をするとなれば電波妨害等を行うための電子戦機が、必要である。搭載する戦闘攻撃機を有効に使用するためには、その作戦を補佐する航空機部隊が必要であり、かえって戦闘攻撃機の搭載機数を制限することになるのだ。

より現実的な空母「いずも」の使用法

しかし、このように制限された能力しか持たない空母であっても意味がない訳ではない。まず、圧倒的に軍事力に差があり、同盟国も友好国も持たない相手に対しては、限定的であっても空爆が可能になる。能力及び国際情勢から考えても、実際にそのようなオペレーションが実施されることは考えにくいが、空爆の範囲を世界に展開できる能力自体が日本の軍事プレゼンスを高める可能性がある。

より現実的な空母「いずも」の使用法は、艦隊のエア・カバーを提供することだ。航空優勢の下でなければ、陸上部隊も艦隊も効果的な作戦を行うことができないからだ。海上自衛隊の艦隊が自ら戦闘機による艦隊防空能力を保有することは、航空自衛隊がエア・カバーを提供できない状況にあっても、作戦行動が実施できる可能性を持つことになる。

敵地攻撃はほとんど考えられず、艦隊防空に用いるのが現実的だという意味において、「いずも」は空母化されても攻撃的な性格は帯びないと言える。中国も、空母化された「いずも」の能力や運用について理解しているだろう。中国国内の報道を見る限り、「いずも」空母化に対する懸念は、現段階では、その能力についてではなく、「日本がこれまでの安全保障政策を変える」という意図に対するものである。

中国が懸念を示すのは、中国が、自身を取り巻く安全保障環境が変化することを望まないからだ。日本の艦隊が防御能力を高めることは、他国の対艦攻撃の効果が低下することを意味する。それだけでも、中国にとっては、パワー・バランスに変化をもたらす可能性があるものとして懸念材料になる。

こうした懸念を持つ中国は、本来であれば、より強く日本をけん制するはずである。しかし、先に述べた新華社の報道は、懸念を示しつつも、直接、日本を非難する論調を含んでいない。こうした状況は、中国に他の目的があることを示唆している。それは、日中関係改善である。

中国が懸念する米国の軍事力行使

新華社が「いずも」空母化を報じた頃、自民党の二階俊博幹事長ら訪中団が習近平主席と会見している。中国メディアは、習近平主席の日本の訪中団との会見を「破格の会見」と呼んだ。この訪中は、日中執政党交流メカニズムに基づいて行われたが、これまで中国側は党中央政治局常務委員が会見するのが習わしとしており、党総書記・国家主席が会見したのは、これが初めてだったからである。

そして、さらに異例だったのは、翌29日の人民日報の一面に、カラー写真入りで、習近平主席と日本の訪中団の会見の記事が掲載されたことである。一方で、中国共産党中央から各メディアに対して、二階幹事長らが中国に滞在している間、日本批判を控えるよう指示が出されていた。

この二つの事象に関する中国の報道の状況は、中国にとって、海上自衛隊の艦隊防空能力が向上することよりも、日本との関係が悪化したままになっていることの方が、中国の安全保障にとって悪い影響を与えると考えていることを示唆している。

北朝鮮の核兵器開発問題が地域の緊張を高める中、中国が最も懸念するのが、北東アジア地域における米国の軍事力行使である。北朝鮮の存続の問題を含め、中国にとっての安全保障環境に大きな影響を与えるからだ。米国が中国に対しても圧力を強める状況で、中国が孤立することがないよう日本との関係を改善することは、中国にとって焦眉の急であるとも言える。

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