北の意のままに動く韓国大統領にアメリカがいま抱いている「本音」

北の意のままに動く韓国大統領にアメリカがいま抱いている「本音」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/02/12
No image

結局北に主導権を握られた

平昌五輪が開幕した。ウィンタースポーツ好きの筆者は連日楽しみながら観戦しているが、北朝鮮の動きはやはり気になっていた。そして案の定、北朝鮮は平昌五輪を「政治の場」として利用してきた。

本コラムでは、1月8日「韓国と北朝鮮の『南北会談』になんの期待も抱けない、歴史的な理由 3月を越えればどうせまた…」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54086)、1月15日「平気で合意を破る韓国と北の会談は結局こんな『無残な結果』で終わる」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54137)などで、南北朝鮮の話し合いは、北朝鮮の時間稼ぎになるだけで、朝鮮半島の非核化という根本的な問題解決にはつながらないだろうと予想した。

この予想は当たってほしくなかった。できれば、韓国の文大統領が、朝鮮半島の非核化に道をつけてほしいと思っていた。ところがそれは、前のコラムを書いた段階、つまり五輪開始前にほぼ崩れてしまった。そしてそのまま、平昌五輪に突入だ。

北朝鮮は、金正恩の妹である金与正氏を送り込んできた。北朝鮮の代表団団長は、形式的なナンバー2である金永南・最高人民会議常任委員長であるが、実質的なナンバー2である与正氏とどちらが偉いかは、誰の目にも明らかだった。

筆者は、ワイドショーなどのテレビ番組で芸人さんと話をするが、空港での金与正氏と金永南氏の譲り合いの光景を見ていたら、どっちが上かはすぐわかるといっていた。まったくそのとおりだ。下手な外交評論家より、上下関係に厳しい芸の世界にいる彼らの方が、こういうところの見方は鋭い。

金与正氏は文大統領に南北首脳会談を、投げかけてきたが、朝鮮半島問題は結局北朝鮮が主導権を握ることとなった。

No image

gettyimages

もちろん日米も手をこまねいていたわけではない。アメリカはペンス副大統領を平昌五輪に派遣し、「北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を放棄するまで同国を経済的、外交的に孤立させ続ける必要があるとの認識」で、日米韓は一致していると強調している。ペンス副大統領は「問題は言葉でなく行動だ」と、北朝鮮に非核化に向けた具体的な行動を促すよう、文大統領に求めた。

ペンス副大統領の行動ははっきりしていた。彼は、9日に文大統領が主催した平昌五輪事前歓迎レセプションに事実上欠席した。

実は、ペンス副大統領と安倍首相はレセプション開始時刻を10分も過ぎて到着した。その後、ペンス副大統領は、レセプション会場に入っても、主賓の席に座らず、金永南氏を除いた要人らと握手して、立ち去ってしまった。

韓国としては、レセプションのテーブル座席配置にも米朝の了解を得ていたつもりで、同じテーブルでペンス副大統領と金永南氏が同席するだけでも絵になるともくろんでいたようだ。しかし、アメリカとしては認められるはずもなく、ペンス副大統領側は「北と接触回避ではなく、無視したのだ」と平然としていた。

筆者も、大阪で放送されている「正義のミカタ」というテレビ番組において、北朝鮮団の事実上トップである金与正氏は、アメリカの制裁対象者であるので、アメリカとしては無視するのは当然の行動だと解説した。

この対応に関して、日米では完全に歩調がとれていた。ペンス副大統領は訪韓の前にわざわざ日本に立ち寄っている。これは、「日米は同じスタンスだ」という強いメッセージを韓国に対して発しているのだ。

文大統領、情けない…

彼の行程を追ってみると、いかにも象徴的だ。ペンス副大統領は、日本を訪れた際は横田基地に立ち寄り、韓国の場合は烏山空軍基地に行った。これは、トランプ大統領と同じであり、その行程は常に米軍が護衛している。そして、トランプ大統領と同じように、在日、在韓米軍の兵士を労っている。目前に迫った「半島危機」が実際に起こった場合、これに対処するのは兵士だからだ。(副)大統領として、彼らを労うのは当然だろう。

訪韓時、ペンス副大統領は文大統領に「米国は、北朝鮮が永久的に不可逆的な方法で北朝鮮核兵器だけでなく弾道ミサイル計画を放棄するその日まで、米国にできる最大限の圧迫を続ける」と伝えたという。訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談でも、「近日中に北朝鮮に最も強力かつ攻撃的な制裁を加える」と明らかにしたという。

安倍首相は、平昌五輪の開会式に参加するのは乗り気でなかったようだったが、おそらくアメリカとともに文大統領に「(北朝鮮非核化の)時間猶予は平昌五輪・パラが終わるまで」と最後通牒を言うために訪韓したのだろう。

9日の日韓首脳会談では、安倍首相が「米韓合同軍事演習を延期すべきではない」と主張したことに対し、文大統領は内政問題だと反発したらしいが、極東アジアにとって、朝鮮半島の非核化は決して韓国のみの問題ではない。一方、アメリカのマティス米国防長官は、平昌パラリンピック(3月9~18日)後に、軍事演習を再開することを明言している。

日米が韓国に当たり前のことをいわなければならないのは、北朝鮮が文大統領に攻勢を仕掛けているからだ。北朝鮮代表団団長の金永南氏は、文大統領との会談において、米韓軍事演習などを中止し、訪朝を最優先とすることを要求したようだ。金正恩氏は、9月9日の北朝鮮建国70周年までに南北首脳会談を実現したいと伝えられている。

はっきりいえば、これは北朝鮮の時間稼ぎである。北朝鮮の核・ミサイル技術はロシア製であるので、その進展具合は技術的に読むことが可能だ。アメリカ到達する弾道弾について、実戦配備可能な技術的な時期はあと3ヵ月から6ヵ月以内というのが通説である。

No image

gettyimages

その意味で、平昌五輪・パラリンピックで稼げる時間は、北朝鮮にとっては喉から手が出るほどほしいものだった。そこで、1月の平昌五輪参加の蒔絵を文大統領に投げたところ、まんまと食いついた。北朝鮮の思うつぼだったわけだ。

北朝鮮としてはミサイルが完成する9月まで時間を稼げばいいので、今回、金正恩氏は妹である金与正氏を派遣するという切り札を切ったのだ。

さて、アメリカはあくまで北朝鮮の非核化を要求するが、この数ヵ月で北朝鮮の非核化が実現すると考えるほど甘いものはない。もともと、1991年12月に北朝鮮の金日成氏と韓国のノ・テウ大統領との間で、朝鮮半島非核化宣言は合意済みだ。しかし、北朝鮮はそれを破って、核・ミサイル完成まで今一歩というところまで来ている。

金正恩としては、これまでの苦労を無駄にして非核化するはずないのは誰の目にも明らかだ。だから、今回の北朝鮮の訪韓の初期段階で、文大統領が非核化について口にしたら、北朝鮮は五輪に参加しないとすごんできたのだ。情けない文大統領は、その後は非核化を口に出せなくなってしまった。

朝鮮半島の非核化について、韓国は当事者能力を失ってしまった。一方、中ロはまったく頼りにならない。最終的には、米朝がどうなるかである。

アメリカはたぶんやる気だ

アメリカは、やられる可能性があればやられる前にやる国だ。筆者はアメリカ生活経験があるが、行く前に何回も言われたことがある。「freeze! と言われたら、決して動くな。そこで動いたら、ピストルで撃たれても文句は言えない」

筆者が生活した東海岸では、銃保有者はそれほど多くないが、先制攻撃は場合によってはあり、の国なのだ。余談だが、銃がないのはもちろん、専守防衛を基本とする日本の話を、アメリカ人にすると大いに受ける。

「日本では専守防衛だから、敵が侵略してきてもニ機一組で迎撃する。そして、一機がやられたら反撃する」

というと、「そんな悠長にしていたら2機ともやらえるよ」と呆れられる。相手に「不穏な動き」があれば、すぐやらなければやられるという考えがはっきりしているのだ。

その点、もはやアメリカにとって北朝鮮情勢は「攻撃してもいい段階」と言えるかもしれない。平昌五輪前日、北朝鮮では軍事パレードを行い、そこで「火星15」とみられるICBMも披露したという。これは、アメリカ人にとっては「不穏な動き」とみれなくはない。拙著『朝鮮半島 終焉の舞台裏』で紹介したように、これまでの歴史では、アメリはでっち上げても軍事オプションのきっかけを作ってきた国であることも事実なのである。

アメリカによる先制攻撃の可能性は、徐々に高まりつつある。その一例として、韓国内で波紋が広がっているのが「鼻血作戦」である。

これは、米国が北朝鮮の軍事拠点をピンポイントで先制攻撃する、というものだ。戦争にならない程度の限定攻撃(つまり、鼻字を出させる程度)で米国の軍事的優位を示し、北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させることを目的としたものだ。

これが明るみに出たのは、1月末に戦略国際問題研究所(CSIS)韓国部長のビクター・チャ氏を駐韓大使に充てる人事案が撤回されたからだ。鼻血作戦が実施されれば、北朝鮮の報復があるからというので、同氏はこの作戦に反対したという。

1月15日の本コラムで書いたように、今の北朝鮮情勢は、かつてのキューバ危機に似てきている。キューバ危機では、それが賢明にもミサイル撤去したので、大事に至らなかったが、果たして、金正恩が「非核化」を行えるのかどうか。かなりの瀬戸際だ。

2月2日、アメリカ政府は新しい「核態勢の見直し(NPR:Nuclear Posture Review)」を公表し、その中で、戦術核にも言及している。朝鮮半島をその新戦略の実験場にしないとも限らない。

もっとも、文大統領は、北朝鮮の非核化をせずに半島統一をもくろんでいる節もある。それは、日本にとっては最悪のシナリオだ。もしも統一朝鮮が「核保有国」となれば、中国のみならず、朝鮮半島も核を背景に対日圧力をかけてくるだろう。そうなるくらいなら、今のうちに北朝鮮の核の芽を摘んでおく方が日本の国益になる、という発想ももっておくべきではないだろうか。

そんなことを考えながら、平昌五輪・パラリンピックを楽しむ一方で、その後について真剣に考察しているところだ。

No image

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

中国・韓国・アジアカテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
韓国大統領府もお手上げ?HPに続々と寄せられる「国民請願」の内容とは=韓国ネット「他に信じられる場がない」「無理は承知の上」
台湾地震、「日本の救援は拒否された」とでっちあげる中国メディア
黒人は差別しても自分たちが差別されると怒る中国人
台湾のショッピングモールが「日本化」!?ネットで懸念の声―台湾
日本では「道に迷っても怖くない」、日本人は「時間や労力を割いてまで助けてくれる」=中国メディア
  • このエントリーをはてなブックマークに追加