ゼロイチから起業家に寄り添う伴走者、村田祐介の投資方針

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2018/01/13
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「日本版Midas List(投資家ランキング)」1位に輝いたのは、シード期から起業家を支える若き投資家。彼の投資方針である「起業家に寄り添う存在」に込められた哲学とは──。

オフィスに残されたのは、ホワイトボードとパイプ椅子3つだけ。2013年3月、社内の固定資産をキャッシュに変えられるだけ変え、一つのゲーム会社の清算が完了した。

「悔しい、このままじゃ終われない。もう一度投資するから、一緒にリベンジしよう」

インキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介は、同ゲーム会社でCTOを担った、現GameWith(ゲームウィズ)社長の今泉卓也にそう問いかけた。

「投資方針は、起業家にとって最初に寄り添う存在であること。良いことも悪いことも、一番に相談される伴走者でありたい。世間で言われているシード期よりもさらに前、創業前夜のコンセプトづくりという”ゼロイチ段階”から関わっている案件が大半です。優秀でも、背中を押されないとスタートしきれない方は大勢いますから」

翌週、2人はいくつかの新事業案を互いに発表した。その中で、今泉が強く関心を抱いたアイデアが、GameWithの原点となる「攻略wiki」だった。当時、ゲームの攻略情報サイトは数多くあったが、どれも個人運営の域から出ておらず、ゲームメディアの決定的存在はなかった。また、人気スマホゲーム「パズドラ」が登場した時で、スマホゲームの本格的な盛り上がりも期待できた。村田も今泉も、大のゲーム好き。2人は互いに構想をぶつけ合った。

「起業家にとって最も大事な要素は、コミットメントと誠実さ。プロダクトや組織に対して、365日24時間没頭して時間を割けるどうか」

前回の失敗経験は、活かされた。以前のゲーム会社では、早い段階から幹部人材を採用したが、議論が長引くだけでまとまらなかった。また、タイトルリリースに合わせて開発を推し進めたことで無理が重なり、組織が疲弊して人が離れていった。そこでGameWith創業期では、今泉と村田の2人で全体の方針を決め、オペレーションを回していく組織づくりを意識した。村田は、毎週水曜日に開かれる経営会議に、13年6月の創業前から現在に至るまで参加を続けている。

「最初の起業に失敗した2人が、一緒に会社を立ち上げた感じですね(笑)」

例えば、会社設立前にもかかわらず、ヤフーグループのYJキャピタルからの投資を取り付け、今泉がオフィスの入居審査に落ちてしまった時には、村田が自らの名義で借りた。創業2期目には初の役員クラスの幹部として現取締役の眞壁雅彦を、上場準備を始めた3期目には管理系役員を引き入れた。

「今泉さんが必要とする要素を僕が持ってくる、そんなきっかけづくりを続けました。起業家によって伴走の仕方は変わりますが、会社の成長の源泉はトップマネジメントの伸び代がどれだけあるかです」

そして、17年6月、創業から丸4年経過したGameWithは東証マザーズへ上場。今泉は現在28歳、平成生まれ初の上場企業社長となった。17年5月期は売上高15億8100万円、経常利益6億5400万円、従業員数108名まで成長している。

「創業前のゼロイチから携わっているため、彼らの可能性を誰よりも信じています。だからこそ、上場後もファンドの制約がなければ”一株も売りたくない”のが本音です」

村田はなぜ、起業家目線の伴走役を担ってこられたのか? 過去を紐解くと、そこにはプロ伴走者・村田祐介を形づくるきっかけとなる存在がいた。

1999年、大学1年生の村田は渋谷ビットバレー活動に参加、自らも起業した。その時は軌道に乗らなかったが、起業家としての再挑戦を誓い、2003年にエヌ・アイ・エフベンチャーズ(現:大和企業投資)の門を叩く。キャリアを重ねる中で、インキュベイトキャピタルパートナーズ(当時)の赤浦徹、グロービス・キャピタル・パートナーズの仮屋薗聡一らと、投資先の取締役会で接する機会が増えていった。

「2人がコミットしたスタートアップが成長していく過程を間近で見る中で、起業家の伴走者という思いが強まった。なぜ、赤浦さんの投資先はゼロイチからしっかり立ち上がるのか。なぜ、仮屋薗さんの投資先は非常に上手くいくのか。再現性がどこまで上げられるかを突き詰めれば、シリアルアントレプレナーではなくパラレルアントレプレナー的にやれると考えました」

米シリコンバレーを見れば、著名投資家であるKPCBのジョン・ドーアとセコイア・キャピタルのマイケル・モリッツの2人が関わった投資案件で、ナスダック上場企業時価総額の30%を占めた時期もあることにも刺激を受けた。

「その人が関わるから上手くいく、ということがある。自分もそんな存在になりたい」

村田はいま、新たな挑戦をはじめている。代表パートナーとして後進投資家を育てるためのファンドも立ち上げ、そして日本ベンチャーキャピタル協会企画部長として、ベンチャー投資関連情報の発信や機関投資家向けに国内VCファンドのレギュレーション整備を行い、業界の地位向上に取り組む。その姿はまるで”日本のベンチャーエコシステムの伴走者”のようだ。

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