ビデオ判定も人間ドラマを演出する?致命傷になりかねなかったジラルディ監督のミス

  • J SPORTS
  • 更新日:2017/10/11

MLBはポストシーズンたけなわです。連日の熱戦で、睡眠不足のファンも多いことでしょう。この原稿を書いている段階では、ア・リーグの地区シリーズでヤンキースが地元に戻って2連勝で逆王手と、目が離せない展開になってきました。

崖っぷちからヤンキースが息を吹き返したのは、第3戦での田中将大の今季有数の好投があってこそですが、もしあの試合でヤンキースがあっさり敗退していれば、ジョー・ジラルディ監督はその進退が取りざたされたかもしれません。そして、第2戦での自軍投手の投球への死球判定にチャレンジしなかった失態は、昨年の地区シリーズでオリオールズのバック・ショーウォルター監督が絶対的守護神のザック・ブリットンを温存したまま敗退したことと並ぶポストシーズンでの監督のミスとして、長く語り継がれることになったでしょう。

私は、元々ビデオ判定に懐疑的なオールドスクール派で、ベースボールは「誤審もゲームの一部」とするスポーツであり続けて欲しかったと思っています。しかし、今回のジラルディ監督のミスは、「ビデオ判定もヒューマンドラマを演出するツールになり得る」ことを示していました。

そのシーンを復習しておきましょう。ヤンキースが5点をリードした6回裏のことでした。先発のCC・サバシアを引き継いだチャド・グリーンが2死二三塁でロニー・チゼンホールに投じた一球はグリップエンドに当たったように見えましたが、判定は「ヒット・バイ・ピッチ」、要するに死球です。当然ジラルディ監督はチャレンジするものと思われましたが、規定の30秒以内にヤンキースからそのリクエストはなく、2死満塁となりプレー続行。そこからフランシスコ・リンドーアの満塁本塁打が飛び出し、一気に1点差に。その後追いつかれたヤンキースは延長13回にサヨナラ負けを喫したのです。

どうして、ジラルディはリプレー検証を求めなかったのでしょう?彼自身はその後の会見で、「30秒以内に自軍スタッフによる事前検証が間に合わなかった」、「チャレンジによるブレイクで投手がリズムを崩すことを恐れた」とコメントしましたが、いずれも他責に帰しており感心できません。

表面的には、確証を持てないチャレンジが却下されることにより、その後のチャレンジ権を失いたくなかった、ということが理由でしょう(監督は1試合に一度だけチャレンジの権利を有していますが、成功すればもう一度申請できます)。しかし、試合はすでに6回でした。チャレンジ権を留保しておくことにそこまでこだわる必要があったでしょうか?また、7回以降になれば、チーフアンパイアがビデオリプレーを求めることができます。

『ESPN』のコラムニストのバスター・オルニーは「ポストシーズンのような注目が集まる試合で誤審を犯したと言われることを、審判は特に嫌う」と述べています。言い換えれば、「下した判定が怪しいと思えば、ビッグゲームでは審判は求められなくてもビデオでの確認をしたがるものだ」ということです。確かにナルホド、と思わせるものがあります。だとすれば、一層ジラルディはチャレンジ失敗を恐れる必要はなかったとも言えます。

個人的には、ジラルディがチャレンジを見送った最大の理由は、自軍ビデオ班の怠慢でもグリーンの繊細なリズムでもなく、5点リードによる「気の緩み」だったと思っています。これがとっさの判断を狂わせたのでしょう。ヤンキースの大先輩ヨギ・ベラの名言“It ain’t over, ‘til it’s over”(終わるまで終わりじゃない)を持ち出すまでもなく、ベースボールには、いわんやポストシーズンでは、セーフティリードと言い切れる点差はありません。そのことは、海千山千のジラルディはもちろんしっかり理解していたはずです。

繰り返しになりますが、田中の第3戦での快投がなければ、ジラルディの一瞬の油断はポストシーズン史上に残るミステークとなるところでした。もっとも、私はそんなジラルディを強く非難しようとは思いません。この名門球団を10年も率いている名将も人間であり、気の緩みから大きな過ちを犯すこともあり得る。むしろ、そんな大切な教訓を得たように感じます。

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