「大量廃棄を変えたい」婦人靴工場3代目が作った新ブランド方針

「大量廃棄を変えたい」婦人靴工場3代目が作った新ブランド方針

  • ツギノジダイ
  • 更新日:2020/09/16
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大阪市浪速区のインターナショナルシューズ3代目の上田誠一郎さん(32)。インターナショナルシューズは1954年創業。相手先のブランドで販売される製品をつくるOEM製造で高級婦人靴ブランドのパンプスやブーツを製造してきた。2017年からレディースシューズ「Factelier by INTERNATIONAL」を発売開始している

OEM製造の工場から新ブランド

靴の3大生産地の一つ、大阪市浪速区にある「インターナショナルシューズ」は女性用の高級パンプスなどを長年OEMで作ってきました。社内一貫生産による品質の高さ、小ロット生産も可能な小回りの利く生産体制が強みです。

その工場で、3代目の上田誠一郎さん(32)が2020年3月に「brightway」というユニセックススニーカーブランドを立ち上げました。シンプルなデザインですが、細部に高級婦人靴を作ってきた技術を生かしています。たとえば、履き口の部分の縫い目の見えない特殊な縫製は、ハイヒールパンプスなどで使用される技法です。踵の芯材は現在、ラグジュアリーブランドの一部でしか採用されていない本革を使用しており、履けば履くほど足になじみ靴ズレが起きにくいという特徴があります。

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brightwayのレディーススニーカー

靴は、メンズとレディースで作り方が異なります。木型設計からパターン設計、使用する素材から機械にまで違いがあり、両方を手がける工場はほとんどありません。さらに生産効率を上げるため、外注、分業が進んでいます。そんななか、インターナショナルシューズは自社工場で、靴を一貫生産できる技術があったため、新たな商品を設計、製造することができました。

Makuakeでメンズのプロジェクトを3月に始め、8月から始めた2回目のプロジェクトでは、レディースも追加しました。販売価格は税込みで2万8600円ですが、プロジェクト中は15~20%オフで購入できます。すでに目標額を大幅に上回る金額が集まりました。

大量生産しないのがブランド方針

上田さんは、新ブランドのbrightwayを立ち上げるにあたり、次の行動指針を定めました。

トレンド商品は作らない

カラー展開をしない

モデル数を増やさない

大量生産を行わない

国産素材をできる限り使う

工賃やパーツ代金を通常のOEMより多く支払う

こうした指針は、家業に戻って工場で靴づくりの現場で味わった苦い思いが原点にあります。

接客では解決できない壁

大学卒業後に上田さんは、東京・銀座に本店を構える高級女性靴ブランドに就職しました。流行の最前線を追い、接客を通して靴を購入してもらう経験にはやりがいを感じていました。店舗の副店長を任されたり、個人の販売実績が1位になったりしたことは自信につながりました。

しかし「接客では解決できない壁」を感じることも増えていました。たとえば、パンプスを履いても踵が脱げてしまうなど顧客が気に入っているのに履けない靴があり「これを解決するには自分が靴づくりの側に行かなければ」と感じました。

これからの自分のキャリアを考えた時、家業であるインターナショナルシューズ創業者で、祖父の上田義一さんに生前に言われた言葉を思い出しました。

「インターナショナルシューズは、誠一郎に守ってほしい」

厳しい業界と言われ、周囲にも反対されましたが、祖父の想いを継ぎたいと家業に戻ることを決意し、2015年に家業に戻りました。

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上田誠一郎さん(左)の祖父義一さん

廃棄処分が「常識」だった自分を恥じる

家業に戻った初日、上田さんの目に映ったのは黙々と靴づくりに励む仲間の姿でした。その姿を見たときに、廃棄処分のシーンがよみがえりました。

売り場で消費者に手にとってもらえない商品はセールやアウトレットに行き、最後は転売を防ぐように廃棄処分されます。

以前の上田さんは、何も違和感なく受け入れてしまっていましたが、この日「なぜ仲間と一生懸命作った靴が処分されてしまうのか」と疑問が湧きました。

製造現場では1足1足、思いを込めて作っていますが、売り場のスタッフや消費者にはなかなか伝えられません。そして、売れなかった商品は在庫となり、捨てられてしまいます。上田さんは「そんな現実を悔しく感じ、何も知らず処分する側にいた自分をとても恥じました」と振り返ります。

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スニーカーをつくるインターナショナルシューズの社員

抜け出せぬ「大量廃棄」を変えたい

ファッション業界では「供給過剰と大量廃棄」が問題視されてきました。

「発注先から厳しいコストカットの要求があり、靴を大量に作らないと収益を出せない構造になっている工場があります。大量生産、大量消費の時代が終わりを迎えており、供給過剰と大量廃棄を生み出してしまいます。 多くの工場はわかっていてもなかなか抜け出せません」

売り場と製造現場の両方を経験した上田さんは「めまぐるしくトレンドが変わる現代に変わることのない、普遍的なものを作りたい」と考えるようになりました。そのためには工場がオリジナル製品を作り、自分たちで適切な量を届ける必要がありました。そのアイデアが、新ブランド「brightway」でした。

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brightwayの製造現場

brightwayのスニーカーは、インターナショナルシューズのECサイトで販売するほか、ブランド方針に共感する店舗で取り扱ってもらう予定です。こうした店舗には、自分たちで使い手に届けられる数量だけオーダーしてくださいと伝えています。

在庫が無い場合は2~3週間かかることもありますが、トレンドのないスニーカーであれば、シーズンの売り逃しも防ぐことができます。「究極は、サンプルサイズだけ店舗に置き、売れたら作る受注生産ができるまでになりたいです。そのためには受注生産、待ってでも欲しいと思っていただける商品を私たちが作ることが大切だと思います」と話します。

国産素材を使う理由

brightwayはできる限り多くのパーツに国産素材を使っています。表面に使用している牛革は姫路のタンナー(革を染色する人)から直接仕入れています。生産者のもとに足を運び、彼らのものづくりに対する想いや大切にしていることをしっかり聞いたうえで使っています。

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brghtwayのスニーカーを履いた上田さん

この理由を上田さんは次のように話します。

「靴は使われているパーツの数だけ産業があり、そこでものづくりに励む人々がいます。私たちが靴を作れるのも彼らがいいものを供給してくれるからです。自分をここまで育てていただいたのもこの地場産業と家業があったからです。本質を大切に守りながら、次世代に残していくことが私の使命であると思っています。そのためには経営のトップに立つ者こそ、ものづくりの本質をしっかり理解すること、その魅力を適切な方法で社会に発信していくことが大切だと思っています」

杉本崇

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