「商社マンだけは、絶対にイヤ」婚活中のアラサー女が抱くヤバすぎるトラウマ

「商社マンだけは、絶対にイヤ」婚活中のアラサー女が抱くヤバすぎるトラウマ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/08/08
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新型コロナの影響で注目を集めている「マッチングアプリ」。スマホ一つで新たな出会いを探せるため、婚活の主流となりつつあります。

FRaU webでは、実際の取材に基づいた「アプリ婚活」のリアルを、共著作家の山本理沙さんと安本由佳さんによってノンフィクション小説としてお届け。アプリの「モテ技」テクニックも満載です。

主人公はコロナ禍で孤独を極め、本気でアプリ婚活を始めたアラサー男女。「結婚」や「幸せ」について見つめ直しながら、果たして二人はベストパートナーにたどり着けるのでしょうか?

【これまでのあらすじ】
結婚に焦り始めた武田留美はマッチングアプリという新世界に足を踏み入れたが、スペックだけで選んだ億男のモラハラ発言に恐怖を覚える。気を取り直して“掘出し物の男”を探すべく、あえて不器用そうな商社マン(ヒョンビン似)をデートに誘うことにしたが…。

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独身アラサー女の苦悩

――あーあ。さっさと結婚したい。

何時間もアプリに向かいメールの処理に疲れ果てた留美は、スマホを充電器に繋ぐと、目元美顔器を目に押し当てた。

――婚活って、疲れる......。

アプリで効率的に出会いを探し、今年中に結婚しようと息巻いていた留美だが、すでに心が折れそうだ。たった一度デートに失敗しただけで、想像以上にダメージが大きい。

――私、どうして20代で結婚しておかなかったんだろう......。

今どき30歳までに結婚、なんて固定観念は時代遅れ。仕事にもデート相手にも恵まれているし、焦って結婚相手を探す必要もない。

充実した人生を歩んできたはずなのに、なぜ留美は今、1日に何時間もスマホに向き合い、飢えた猛獣のように男たちを吟味しているのか。

ふと我に返ると、そんな自分が虚しくてならない。

かと言ってこのまま独りで生きていくのかと思うと、孤独に押し潰されそうだ。

『るみさん、明日、リッツ・カールトンのラウンジを予約しています。楽しみにしています!』

――あ、ヒョンビン......。

ポップアップされたメッセージから彼のプロフィールに飛んでみると、スマホ画面に『ナオ29歳』がビションフリーゼと戯れる若々しい笑顔が広がった。

30歳以上の女は、20代の男が狙い目

「動物好きに悪い男はいないだろ。それにこれ、実家の犬らしいじゃないか。家族仲が良いのも結婚には重要だぞ」

先日、留美のアプリ婚活状況をザッとスクリーニングした徳光は、この『ナオ29歳』を強く勧めた。

「それに29歳ってのもポイントが高い」

「流行りの年下?でも私、余裕のある年上の男の方が好きなんだけど......。若い男にがっつくのもオバサン臭いし」

「そういう問題じゃない。ぶっちゃけ、アプリ婚活なら女側も30歳以上の男は足切りした方がいいくらいだよ」

「嘘でしょ?男の人は30歳以上の方が余裕も出て、色気も増すじゃない」

すると徳光は、やれやれとでも言うように頭を振った。

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「じゃあ、余裕と色気を増した男がどうなるか分かるか?実際モテ始めて、経験値が上がる。イイ女と付き合えるようになって目も肥える......。それで調子に乗ると、今度はスペック目当ての女たちにウンザリして、さらにはヤリ手の悪女に引っかかって痛い目に遭う。すると定番の『拗らせ男』の出来上がりだ」

徳光はだんだん早口になる。

「そういう男はマジで面倒くさいぞ。スペックが高い代わりにプライドも高い。拗らせの原因は大体が女関係のトラウマだから、その憎しみを好きな女にも向けるし、そもそも女を信用してない。......奴らを結婚させるには、相当な労力が必要になる」

留美は背筋がゾッとした。たしかに、そんな面倒な男に無駄な時間を使う暇はない。

「だから、男も絶対に若い方が良いんだよ。『好きな女を幸せにしたい』ってピュアに思えるから。30過ぎた男なんて、どうしようもねぇよ......」

そのとき、いつも得意げに自論を振りかざす徳光の横顔にわずかに陰りが差した気がした。

「......とくちゃん?どしたの......?」

そもそも徳光は、何故にこれほど男女心理の研究に躍起になっているのだろうか。

幼馴染で中性的な顔立ちをした徳光は留美にとっては完全に恋愛対象外であるが、外資系コンサルティングファーム勤めの彼の評価は世間的には悪くないはずだ。けれど彼の恋愛話は、ここ数年聞いていない。

「いいから留美。お前、とりあえずこの商社マンとデートして来い」

しかし徳光はすぐに表情を切り替え、留美のスマホを奪うと『ナオ29歳』に勝手にメールを返信し、食事に誘ってしまったのだった。

「商社マンだけは、絶対にイヤ」

――今さら、商社マンかぁ。

仕事後にリッツカールトン東京にやってきた留美は、エレベーターの鏡に映る自分と向かい合い、小さく深呼吸した。

正直なところ、『ナオ29歳』とのデートはイマイチ気が進まない。彼のアプリのプロフィールはたしかに好印象であったが、実は留美は、商社マンという人種がどうも好きになれないのだ。

20代で数えきれないほど商社マンと出会っているが、もちろん「結婚したい職業ランキング」の上位を総ナメする彼らは、結婚相手として不足はないと思う。

あのコミュ力、サービス精神、洗練度......どの男たちも一定以上の爽やかさを保ち、女の扱いにも慣れている。合コンでの彼らの連携プレーの高さと言ったら、「お見事」と感心せずにはいられない。

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しかしながら、そんな商社マンたちの口車にまんまと乗せられ、辛酸を舐めさせられた女がどれだけいるか。

彼らは巧妙な低姿勢で女に近づき、女の気分をMAXに高揚させたところでペロリと手籠にしてしまう。商社マンの手にかかれば、その辺のゆるふわOLなんてヘンゼルとグレーテル状態だ。

結局はいわゆる「やり逃げ」状態でトンズラされ、「商社マンだけはもう絶対にイヤ」と強い怒りを抱えた女友達も大量にいる。

それに、大衆の女たちの憧れである“商社マン”に経験豊富な留美が今さら婚活の矛先を向けるのも、何となく悔しいというかダサい気がする。

――まぁ、とくちゃんがやたら推してたし。とりあえずお手並み拝見ね。

けれど、そんな冷ややかな気持ちでラウンジに辿り着いた留美は、自分の姿を見て立ち上がった男に目が釘付けになった。

「留美さんですか?はじめまして、工藤直彦と申します」

――嘘でしょ、本当にヒョンビンなんだけど......。

スラリとした長身に、驚くほどきめ細かい綺麗な肌と、絹のように輝く髪。

自分を、特に「イケメン好き」と思ったことはない。むしろ顔よりもステータス重視で男を選んできた。

それなのに......。

ただ立っているだけで周囲が霞むほどの透明感を放つ男を前に、留美は言葉を失ってしまった。

イケメン商社マンのイタい自慢話

「留美さんは、どうしてアプリなんかやってるんですか?」

「えっと......コロナでなかなか出会いがなくて......」

「へぇ。出会い、ないんですね」

しかしながら、工藤直彦が口を開いてからものの5分で、留美のテンションは急降下した。

「......出会いが全くないわけじゃないですが、やっぱりコロナのせいで......」

「へぇ。コロナのせいですか」

「............」

彼は爽やかの塊のような好青年にもかかわらず、ひどく会話が下手だった。

悪気はないのだろうか、直彦の言葉は妙に留美の神経をチクチクと刺激する。こんな商社マンは稀ではないだろうか。けれど「アシストが必要な男こそ掘出し物」という徳光の言葉を思い出し、留美はニッコリと笑顔を作った。

「直彦さんは、元カノさんと別れてアプリを始めたんでしたっけ?」

記憶を探り、以前プロフィールにあった情報を元に会話を投げてみる。

「そうなんです。海外駐在も控えてるので、そろそろ結婚しなきゃなと思ってるんですが......もう5年以上も彼女はいません。元カノ以上の女性に出会えないんです」

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「そ、そうなんですか......」

突然深刻に語り始めた直彦に少々面食らいながらも、留美は笑顔を崩さず会話を続ける。

「元カノさん、素敵な方だったんですか?」

「そうですね。美人で性格も良かったです。アナウンサーみたいに清楚な雰囲気で親しみやすくて......サークルのマドンナみたいな子でした」

そう嬉々として語る直彦に、留美の顔が引き攣る。初デートの女の前で、これほど楽しそうに元カノの話をする男など見たことがない。

「......じゃあ、どうして別れたの?」

「彼女とは大学の同級生でしたが、社会人になり仕事が忙しくなって......寂しくて耐えられないと言われ別れることになりました。僕は反対したけど......。僕が同期と飲み会に行くだけで寂しかったそうです。本当に純粋な子だったので」

留美はだんだんと苛立ちを隠せなくなる。なぜ仕事後にわざわざリッツにまで足を運び、初対面の男の元カノ自慢を聞かなければならないのか。

「......だったら今からでもヨリを戻したら?」

「無理です。彼女はその後付き合った男性とすぐに電撃婚して、もう子どもも二人いますから」

「へぇ〜、ちなみに彼女はどんな方と結婚したの?」

――ああ、つまんない。適当に終わらせて、サッサと帰ろう。

留美は完全にヤル気をなくし適当に会話を繋いでいたが、次の瞬間、直彦の返答にど肝を抜かれた。

20代のヤリ手女と、30代のキレる女

「彼女が結婚したのは、慶應卒、外資系投資銀行勤務の男性です」

留美は飲んでいたカクテルを吹き出しそうになる。

多忙を理由に直彦を振ったくせに、さらに多忙に違いない外銀男とすぐに結婚するなんて、その女は相当なヤリ手ではないか。いや、むしろ直彦と外銀男を天秤にかけていた可能性だってある。

「報告されたとき、本当は僕と結婚したかったと泣いてましたが......こればかりはタイミングなので、潔く諦めました」

「............」

切なそうに目を伏せた直彦に、完全に気持ちがシラけた。

世間には20代でこんな愚直な商社マンを踏み台にし、ちゃっかり外銀男と結婚する女もいるのだ。なのに自分は、32歳にもなって何をしているのか。

「......まぁ、直彦さんなら、もっとイイ人に出会えるんじゃない?」

「難しそうですけど、そうしたいです」

再びカチンとくる。直彦は、まるで留美が元カノ以下だと言っているようなものだ。

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「でも、その元カノさん、あなたが思うほど純粋な子じゃないと思うけど」

苛立った留美は、とうとう意地悪な言葉を吐いてしまった。直彦は驚いたように目を見開く。

「元カレに"本当はあなたと結婚したかった”なんて、普通言わないでしょ。別れて良かったわね」

「......彼女は、そんな子じゃないです......」

すると彼は綺麗な顔を歪め、縋るような視線を向けた。その透き通るような瞳に、なぜだか胸がキュッと痛む。

「そういう女に男は騙されるのよ。実際子持ちのママなのに、まだ未練があるみたいだし。じゃあ私は仕事があるので、そろそろ失礼します」

留美は彼から目を逸らすと、強制的に会話を終わらせ席を立った。直彦は黙っている。もう、この男と会うことはないだろう。

また、今夜も失敗してしまった。

たった数日で二回もデートに失敗するなんて、先が思いやられる。こんな思いを、結婚するまでにあと何度経験するのだろうか。

背後に絡まる彼の弱々しい視線を振り切るように、留美は背筋を正してその場を後にした。

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これまでの連載「本気でアプリを始めたら」を読みたい方はこちら

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