東京五輪聖火リレーは人口8万人の街でも人だかり、「密になるな」では効果なしの理由

東京五輪聖火リレーは人口8万人の街でも人だかり、「密になるな」では効果なしの理由

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  • 更新日:2021/06/11
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聖火リレーのゴール地点には大勢の人が押し寄せた=6月6日、山形県米沢市、桐島瞬撮影

3月25日に始まった東京五輪の聖火リレーも終盤に突入している。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために大会組織委員会では「密」対策を講じているものの、現状では人だかりを防げているとは言い難い。6月29日から聖火リレーは人口が密集する首都圏に入るが、どう対応するのか。

【コース周辺にはびっしりと人が集まり…写真の続きはこちら】

6月6日に聖火リレーが行われた山形県米沢市(人口約8万人)では、日曜日で天候にも恵まれたことから沿道に多くの人が押し寄せた。

コースとなった上杉神社前から市営体育館までの約2.2キロの区間では、聖火リレーがスタートする直前に五輪スポンサー企業の宣伝車が大音量で音楽を鳴らすなどして盛り上げる。ランナーがスタートする頃にはコース周辺はびっしりと人で埋まり、ゴール付近には何重もの人だかりができた。3千人以上が集まった見られる。

スタッフが「間隔を空けて観覧、マスクの着用、拍手による応援」と書かれたボードを掲げるが効果は薄く、観衆の中にはマスクをあごにかけている人もいた。

家族連れで見に来ていた地元在住の70代の女性は、1964(昭和39)年の東京五輪のときの華やいだ聖火リレーが頭を離れず、

「あのときの光景をもう一度体験したくて家族で見に来た」

と話した。

組織委が聖火リレーで「密集」が発生したと判断するのは、肩が触れ合うか、十分な間隔を空けずに複数列に重なり合った状態。密集が生じ、観衆に注意指導をしても解消されないときは、その区間のリレーをスキップすることを検討するとしている。

だが、組織委が密集と認識した3月28日の栃木県足利市でも中断はしておらず、米沢市のケースは密集とも判断されなかった。

今後も、休日に開催されて天候が良いなどの条件がそろえば密状態が生じることも考えられるが、特に人出が予想されるのは人口が3千万人を超える1都3県のルートだ。聖火リレーは6月28日に神奈川に入り、その後、千葉、埼玉、東京などを走る。特に五輪開催都市となる東京では、7月9日から23日まで15日間かけて全62区市町村を駆け抜けるだけに、どれだけの観衆が押し寄せるのか予想がつかない。

東京都の担当者は、観衆の規模は想定していないとした上で対策をこう話す。

「青梅街道など幹線がコースになっている場合は、上下線の交通を封鎖して観衆用のスペースを広く設ける。リレーの走行区間も6キロまでと長めに設定することで人の集まりを分散し、密にならないようにする。聖火リレーの様子はインターネットのライブストリーミングで配信するので、そちらを見るようにも働きかけたい」

一方の組織委は、

「今まで安全に運用してきた密対策やその他運営ノウハウを活用する」

として、東京都と協議を重ねながら準備を進めていく方針だ。

果たして密は防げるのか。新潟青陵大学大学院教授で社会心理学が専門の碓井真史氏は、新型コロナウイルス感染のリスクがありながら人が密集する心理や、密回避のための有効なメッセージについてこう話す。

「緊急事態宣言や景気の悪化など暗い話題が多い中、地元の青空の下を笑顔で走る聖火リレーの健康的なイメージに引かれて人が集まるのだろう。密状態を作らないためには『密になるな』のような聞き飽きた内容では効果がなく、『無事に五輪を迎えるためにも、人だかりができていたら見物は自重しましょう』といった前向きなメッセージが必要だ」

(ジャーナリスト・桐島瞬)

※AERAオンライン限定記事

桐島瞬

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