
"研究チームの分析では、高齢者が働き続けるより、仕事を引退した方が心臓病のリスクが低いと出た=京大提供"
仕事の引退と健康について、京都大と早稲田大、米ハーバード大の研究チームが日本を含む世界35カ国の50~70歳の10万人超を調べたところ、「仕事をリタイアした人」は働き続けている人よりも心臓病のリスクが低いことがわかった。運動不足になるリスクも低かった。
研究チームが各国の研究成果を統合して調べ、定説を覆した。
仕事の引退と心臓病の関係ではこれまで、米国の研究で関連は見られないという結果が出ていた。一方、欧州では引退すると心臓病リスクが上がるという報告が複数あり、「引退は少なくとも心疾患リスクを引き下げることはない」「長く働いた方がよい」と考えられていた。
これに対し、「働き続けることが心臓病リスクを下げるというのは直感的におかしいのでは」と思ったのは、研究チームの佐藤豪竜(こうりゅう)・京大助教(社会疫学)。チームは、米国、欧州諸国、メキシコ、日本、中国、韓国など35カ国の50~70歳の10万6927人を平均6・7年間追跡し、就労状況と心臓病発症リスクなどの関係を調べた。
高血圧や糖尿病など個人の健康状態や年齢、性別、学歴、遺伝要因、各国の医療制度や労働市場の違いなどの影響を取り除く統計手法を使って分析した。
その結果、仕事をリタイアした人は働き続けている人より心臓病のリスクが2・2ポイント低かった。仮に日本の60代の就業者が全員引退すると、心臓病患者が約20万人減る計算になるという。