宿題も進路も口出ししない...君島十和子の育児方針を支える「過去の後悔」

宿題も進路も口出ししない...君島十和子の育児方針を支える「過去の後悔」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2023/05/26
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もはや美容家の枠を越え、人生のメンターとして多くの女性たちから支持されてきた君島十和子。独身の頃はモデル・女優として活躍して、1995年に結婚してからは主婦として家事や子育て専念した時代もあるし、18年前に立ち上げたスキンケアブランドFTCを切り盛りする実業家としても有名。7年ぶりとなる著書『アラ還十和子』には、変わらない美を支えるルールだけでなく、経験豊富な人生で培ったポリシーや思考術が惜しみなく綴られている。

日本中から好奇の視線を浴びながら君島家に嫁ぎ、ちょっと想像するだけでも相当なプレッシャーを感じていたはず。それでも母親として2人の支え、理想の親子関係を築くために、どんなスタンスで育児に向き合ってきたのか?

インタビュー前編を読む→“奇跡のアラ還”も普通の人間!? 君島十和子に訪れた更年期の攻略法

働くことに罪悪感があった時期にしてしまっていたこと

1997年に長女を出産。翌年には雑誌で取材を受ける形で美容家としてのキャリアをスタートさせ、子育てをしながら20年以上も仕事を続けてきた君島十和子。当時は共働きが当たり前の時代ではなかったこともあり、働くことに罪悪感を抱いていた時期もあったとか。それが子育てで裏目に出てしまったことも。

「専業主婦の母親よりも子どもと一緒にいてあげられる時間が短いことが申し訳なくて、過保護になってしまったり、甘やかしてしまうこともありました。ホームドラマのように親子でお菓子作りをするような時間はないけれど、代わりに並ばないと変えないような最先端のお菓子を買ってあげたい……なんて思ったことも。品薄なものでもなんとかして手に入れていましたし、冬でも絶対に風邪を引かせないように厚着をさせたりして。悲しくないように、快適であるように……娘たちが小さい頃は、そればかり考えていました」

親の手厚いサービスが子どもの成長を助けるとは限らない。それに気づいてからは、「転ばぬ先の杖」をしないことを心がけた。

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撮影/嶋田礼奈

「娘が小学校で恥をかかないように、例えば『早く宿題をやりなさい』『明日の学校の準備をしない』などと、さんざん先を読んで助言してきたのですが、そうすることで彼女たちが成長する機会を奪ってしまう可能性があることに気づいたんです。自分で失敗することでしか学べないこともあるので、今でも子どもがやることにアレコレ口出ししないように我慢しています」

進路に関しても、親の夢を託さず、子どもの意思を優先すると決めていた。それは自分自身の後悔から生まれたポリシーだという。

「もともと私は幼い頃から宝塚歌劇団の大ファンで、祖父母にたびたび歌舞伎座や帝国劇場に連れて行ってもらったこともありました。華やかな世界にのめり込んで、自然と『自分もあの世界に入ってみたい』と思うようになったんですよね。けれど、尻込みしてしまって、宝塚受験を目指すためのレッスン教室に見学に行くことから逃げてしまって……。その後、夢に踏み出さなかった後悔がずっと残っていて、高校3年生の頃にJALのキャンペーンガールに合格したときは、勇気を出して芸能界に挑戦することができました。そうやって『とにかく挑戦してみる』という性格が培われたからこそ、結婚して引退した後にも美容家として稼働することができたのだと思います。だから娘たちに対しても、できる限り進路に関しては口を出さず、彼女たちがやりたいと思ったことを支えてあげる存在でいたいと思っています」

何も言わない、ただ見守る

奇しくも長女は自分の意思で宝塚歌劇団を志し、狭き門を突破して2014 年に合格。今年4月に卒業するまで月組で蘭世惠翔の名で活躍していた。

「私は宝塚に憧れを持っていましたが、その夢を娘に託したわけではないんですよ。彼女が宝塚を好きになったきっかけとして少なからず私の影響があると思いますが、音楽学校に進むことを勧めたことはないですし、私は娘が自分で決めたことを受け入れただけなんです。それだけは誤解のないように言わせてください(笑)。彼女は本当に幼い頃から宝塚に夢中になっていましたし、早い段階で夢を見つけられたことは幸運だったと思います」

愛する娘が壁にぶつかって悩んでいるときも、とにかく聞き役に徹する。

「宝塚は素晴らしい才能が集まる場所ですから、娘が悔しい経験をして落ち込んでいる姿を何度も見てきました。私としては、彼女の話に共感することで味方であることを示すことしかできなくて、安易にアドバイスすることは控えていました。傷ついている娘に手を貸さないのは辛いことですが、傷つきながらも頑張った経験が一生の財産になりますからね。一方、もう一人の娘は大学4年生になってもなかなかやりたいことが見つからないみたいで、それはそれで困ったものだと思っているのですが(笑)。本人が自分で決める日を待つしかありませんので、『何も言わないこと』にエネルギーを使っています」

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撮影/嶋田礼奈

新刊の『アラ還十和子』には、ひとりの母親として考えてきたことが赤裸々に綴られている。渾身の一冊を「60歳になる“手前”だったからこそ書けた」と振り返る。

「今はまだ仕事も子育ても当事者ですし、これまで失敗してきた傷跡が完全に治癒しているわけではないからこそ、熱量の高い文章を残せたと思います。還暦のテープを切ってしまった後だったら、もっと達観してしまって、シンプルな言葉になっていたような気がします。だから、私と同世代の女性に限らず、人生の壁に直面しているような幅広い方々に読んでいただきたいですね。私の事例をヒントにして、余計な苦労を回避して人生を謳歌していただけたら嬉しいです」

人生100年時代。世の女性たちは、60歳になっても70歳になっても強く美しく生きる術を探している。経験豊富な先輩の知恵が詰まった『アラ還十和子』がバイブルとなれば、超高齢化社会に突入する日本の未来が楽しみになってくる。願わくば、遅くとも10年後には新たな手引書を出してほしいところ。

「いやいや、前作を出してからの7年で培ってきた全部を『アラ還十和子』に注がせてもらったので、正直に言うと、今は空っぽな状態なんですよ。この先の人生で何を蓄積できるか分からないですし、今のところは次回作の構想は何もありません。この先の人生で目標にしているのは、いつか金髪のボブにしようと思っているくらいですね(笑)。でも、最近は電車に乗ると意外とカラフルな髪色を楽しんでいる方がたくさんいるので、金髪にしたくらいでは驚いてもらえないですよね。だから計画を修正して、ピンクに染めるかもしれません。それが似合う自分でいたいですし、何歳になっても新しいチャレンジを続けていきたいと思っています」

“奇跡のアラ還”と呼ばれる存在が、急に衰えるとは思えない。きっと『アラ古稀十和子』は実現する。期して待つべし。

■君島十和子さんプロフィール
1966年生まれ。東京都出身。FTCクリエイティブディレクター、美容家。二人の娘をもつ母。雑誌の専属モデルや女優として活躍後、結婚を機に芸能界を引退するも、美容への意識の高さに注目が集まり各女性誌で取り上げられる。『十和子道』(集英社)、『十和子イズム』(講談社)など著書も多数。現在はテレビや雑誌にて活躍しながら、自身のYouTube「君島十和子チャンネル」やインスタグラムでも飾らない等身大の姿やファンに寄り添った配信が大好評。

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■書籍インフォメーション
アラ還十和子

50代も半ばを過ぎ、“アラ還”となった君島十和子が輝き続ける理由を紐解く一冊。美を支えるポリシーだけでなく、仕事や家族、友達への想い、生き方など、幅広いテーマについて自身の素直な言葉で語られている。おうちご飯のレシピや収納術、愛用お掃除グッズも大公開! 定価:1760円(税込)

撮影/嶋田礼奈 ヘア&メイク/黒田啓蔵(Iris) スタイリング/後藤仁子

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