片岡仁左衛門、顔見世で「主従の愛、肉親の愛」を今の世に

片岡仁左衛門、顔見世で「主従の愛、肉親の愛」を今の世に

  • 産経ニュース
  • 更新日:2020/11/21

「京都の南座の顔見世は歌舞伎界にとっても関西の役者にとっても大切な興行。開催できることになって感無量です」。安堵(あんど)の表情で語る片岡仁左衛門。コロナ禍で開催が心配されていた顔見世が12月5日から幕を開ける。「熊谷陣屋(くまがいじんや)」で主人公の熊谷直実(なおざね)を演じる仁左衛門は「いまの世の中で薄れつつある主従の愛、肉親の愛、その板挟みになる熊谷の姿から反戦の思いを感じ取っていただければ」と語る。

(亀岡典子)

源氏の武将、熊谷直実は、平家との合戦で、わが子、小次郎と同じ年頃の平家の公達、敦盛(あつもり)を討ち取る。きょうは源義経による首実検の日。実は熊谷は義経の思いをくみ取り、敦盛の身替(みが)わりに小次郎を仕立て、自らその首を討ち取っていたのだった-。

20代で初演して以来、演じ重ねてきた熊谷。仁左衛門の熊谷には、武将としての大きさとともに、わが子を討たねばならなかった苦しみ、悲しみが深く濃くにじみ出る。それがうかがえるのが、敦盛(実は小次郎)の首を抱きしめるようにして妻の相模(さがみ)に直接手渡し夫婦で悲しむ場面だ。

「父(十三代目仁左衛門)もそうしていましたのでね」といい、「いったん置くよりも手渡す方が親子や夫婦の情が伝わりやすい。ただ、これも賛否両論あって緊迫した場で私的な感情を出してはいけないとの理屈もわかります。でもお客さまもちょっと泣きたいときがある。こういうところに演じる役者の性格が出るのかもしれません」。

熊谷は主君の密命とはいえ、16歳のわが子を討ち、出家する。花道の引っ込み。「16年はひと昔。夢であったなあ」の絶唱ともいえる述懐には作品のテーマが集約される。

「戦いというのは勇ましいけれども、その陰には必ず人々の悲しみがある。この作品には戦いのむなしさが描かれている。そして、その奥には人の世のはかなさ、無常観が流れているのです」

長男の孝太郎(たかたろう)が妻の相模、孫の千之助が義経の家臣、片岡八郎と、三代共演が実現。また、次兄の秀太郎、おいの進之介、親戚にあたる中村歌六(かろく)、錦之助、隼人らファミリーで演じられるのも話題だ。

「私も若い頃、先輩方の熊谷に、千之助のような役どころでご一緒させていただきました。先輩の舞台に出ることは何より大事なことなんです」

今回の顔見世は3部制。各部が2演目ずつという異例の興行だ。「若い人たちの舞踊もありますし、つらい状況をいっときでも忘れて、ひととき楽しんでいただければうれしいですね」

12月5日から19日まで(11日休演)。問い合わせはチケットホン松竹(0570・000・489)。

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「熊谷直実のような葛藤のあるお役は好きですね」と語る片岡仁左衛門=東京都千代田区(酒巻俊介撮影)

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