
【孤高のロータリーエンジン マツダ 787B vol.2】
この予選結果から、多くの人がマツダの苦戦を予想した。しかしル・マンは、速さとともに耐久性と燃費がカギを握るレース。ライバルたちが燃費に苦しむなか、55号車はスタート2時間後に9位、6時間後に4位、そして12時間後には3位にまでポジションを上げた。
そして1位と2位を走っていたメルセデスは、マツダの快進撃を見てペースアップ。しかしそれが裏目に出て、2位のメルセデスは駆動系にトラブルが発生して後退。労せずして2位に上がったのだ。そしてドラマは21時間後に訪れた。
トップを走るメルセデスがオーバーヒートを起こし、後にリタイヤ。マツダがついにトップに立ったのだ。そして午後4時、大観衆に迎えられて55号車がトップでゴール。マツダがロータリーとともに長年挑んできた夢が、現実のものになった瞬間だった。
また、18号車が6位、寺田陽次郎と従野孝司がハンドルを握った56号車も8位に入賞し、マツダ車はすべてトップ10フィニッシュしたのである。
ちなみに翌92年は、レギュレーションの変更でロータリーエンジンが禁止となったため、ジャッド製3.5LV10をマツダがリファインしたMV10型を搭載した「マツダMXR01」で参戦。総合4位に入る健闘を見せている。
90年以上のル・マンの歴史のなかで、日本車メーカーが総合優勝したのはこの91年のみ。また、ロータリーエンジン搭載車の優勝は787Bが最初で最後。この快挙は、四半世紀経った今でも人々の心に深く刻まれている。
【画像23枚】優勝候補の一角であったメルセデスだったが、相次ぐトラブルにより後退。マツダは労せずしてトップにたった
>>ドアは跳ね上げ式。ナイトランを想定した大型のヘッドライトはシビエ製だ。ちなみに、ヘッドライトの内側にある小さなダクトで787Bと判別できる。
>>ホイールはボルクレーシングのマグネシウム製で、タイヤはF300/640R18、R355/710R18。ただしこれは当時のサイズで、取材時はル・マンのデモラン用として英国ダンロップから入手したF305/660R18、R360/710R18が装着されていた。
マツダ 787B
全長×全幅×全高 4782×1994×1003mm
ホイールベース 2662mm
トレッド前/後 1534/1504mm
車両重量 830kg
エンジン型式 R26B型
エンジン種類 4ローター・ロータリー
総排気量 654×4cc
最高出力 700/9000ps/rpm
最大トルク 62.0/6500kg-m/rpm
サスペンション ダブルウイッシュボーン(前後とも)
ブレーキ ベンチレーテッドカーボンディスク(前後とも)
タイヤ 前300/640R18、後355/710R18
【3】へ続く