支持率4% フランス大統領も不人気のワケ

  • ITmedia ビジネスオンライン
  • 更新日:2016/12/01
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世界を読み解くニュース・サロン:

今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。

今、韓国が大変な事態に陥っている。

発端は朴槿恵(パク・クネ)大統領が、親友の崔順実(チェ・スンシル)被告を国政へ介入させていた事件だ。

さる11月26日、首都ソウルなど主要都市では、190万人と言われる国民が街頭に集結し、民主化後で最大規模の反政府デモが発生した。しかもこのデモ、毎週末、過去5週に渡って繰り広げられており、国民の怒りが尋常でないことがうかがえる。

ここまで大きなった混乱に、朴大統領は11月29日に大統領としての進退を「国会の決定に委ねる」と表明した。もっとも、専門家たちからは弾劾か辞任は避けられない情勢にあると見られていたために、任期終了前の辞任は予想通りの展開だと言える。

そんな朴大統領だが、朝鮮日報によれば、支持率は4%にまで低下していた。この支持率は、韓国史上最低記録を更新するものだ。国民100人のうち4人しか大統領を支持していないというのは、完全に国民の信頼を失ったと考えていい。

普通に考えれば、支持率4%ともなるともはやお役御免だろう。世界的にもそこまで酷いリーダーはいないだろうと思いきや、実は欧州には、朴大統領と同じく4%というあり得ない低支持率を記録している大統領がいる。

フランスのフランソワ・オランド大統領である。

オランドの支持率は悲惨な状態

フランスからは、朴大統領が巻き起こした国家の根幹を揺るがすような大々的なスキャンダルは聞こえてこないが、一体なぜオランド大統領は朴大統領と同じような状況にあるのか。

フランスのル・モンド紙は10月、オランドの支持率が4%に落ち込んでいるという衝撃の調査結果を発表した。2016年10月14-19日にかけて1万7000人を対象に行われたこの世論調査では、回答者のうち、たったの1%がオランドの仕事ぶりに大変満足していると回答し、3%がオランドを支持すると答えた。

この4%という数字は、1848年にフランスで初めて大統領が誕生して以降、史上最低の記録だという。

ただ別の調査ではこの数字は少し変化する。例えばフランスの世論調査会社BVAによる調査では、オランドの支持率は26%だ。ただこの数字ですら、同調査会社が過去32年に行った大統領支持率の調査で過去最低の数字だという。ちなみに経済危機に見舞われたニコラ・サルコジ前大統領でも最低は30%だった。

また別の調査でも、オランドは9月に史上最低の支持率を記録していた。8月の17%から9月には15%に落ち込んでいた。

とにかく、オランドの支持率が悲惨な状態にあるのは間違いない。

2012年の就任時、オランドの支持率は63%もあった。支持率の推移を見ると、2012年から急速に支持率は低下し、2013年の時点ですでに歴代大統領の史上最低支持率である26%を記録、当時、「近代フランス史上もっとも不人気な大統領」との汚名を受けた。

2015年1月に風刺週刊誌を発行しているシャルリ・エブドがテロリストに襲撃されたテロ事件直後、オランドの支持率は一時的に40%を超えた。だがそこからすぐに下降して低空飛行を続けていたが、2015年11月に130人の死者を出したパリ同時多発テロの対応でまた一時的に50%近くに跳ね上がった。その後、再び支持率は落ち、現在に至っている。

なぜオランドの支持率は低いのか

なぜオランドはここまで支持率が低いのか。そもそも社会主義者のオランドは、富を再分配し、機能不全に陥っている公共サービスを再建するなど、派手な公約で大統領に当選した。だが経済の立て直しは進まず、10%ほどの失業率(若者では20%を超える)も改善しない。貧困層を救い、インフレを改善するとの主張も進んでいないし、たび重なるテロで一時的に支持率は上げても、テロ対策は評価されていない。

また、以前このコラムでも触れたが(関連記事)、社会党の大統領なのに、フランス南部の観光地であるカンヌに休暇のための別荘を3軒も所有していたり、毎月散髪に公費から1万1000ドルを支出していたりと、贅沢(ぜいたく)な生活を送っていることが明らかになっている。

さらに、オランドは女性問題でもメディアを賑(にぎ)わしている。彼は、フランスの環境・エネルギー・海洋大臣で気候に関する国際関係担当を務めるセゴレーヌ・ロワイヤルとの間に以前、結婚はしていなかったが4人の子どもをもうけている。その後2人はパートナーの関係を解消している。オランドは2012年の大統領就任時に、フランスのパリマッチ誌で記者だったバレリー・トリルベレールとパートナーになっていたが、大統領の職にありながら“不倫”(浮気?)の末に女優のジュリー・ガイエに乗り換えて大きな話題になった。

最近、米次期大統領に選ばれた資本主義の権化であるドナルド・トランプにも負けないくらい、女性関係が派手な社会主義者なのだ。

もちろん政治家として何もしていないわけではなく、評価すべき点もある。労働法の改正などはその例で、高い失業率の原因とされ、「巨大な迷宮」と揶揄(やゆ)されてきたフランスの労働規制を緩和するための労働法改正法案をリーダーシップをもって推し進めてきた。

そんなリーダーシップもそれ以外のマイナスポイントにかき消され、とにかく就任からこれまでずっと不人気だったと言える。ただそれでも、朴大統領級の大スキャンダルでもない限り、支持率が4%まで落ちることはそうないような気もするのだが……。

オランドに対して不信感を抱くきっかけ

実は驚きの4%を記録する直前、朴大統領ほどのインパクトはないが、国民がオランドに対してこれまで以上に不信感を抱くきっかけとなる騒ぎがあった。オランドが全面的に協力した書籍が10月12日にフランスで出版され、大変な物議を醸したのである。

ル・モンド紙のジャーナリスト2人が連名で上梓した書籍は『President Shouldn't Say That(大統領がそれを言ったらダメでしょう):Secrets of Five Years in Office(大統領5年間の秘密)』というタイトルで672ページに及ぶ大作だ。2人のジャーナリストは過去4年で61回にわたってオランドに独占インタビューを行い、それを本にまとめた。

その内容は、失言や暴言の連続で、トンデモ本として衝撃的なものだと評されている。例えばオランドはフランスの司法制度を「卑怯な組織」と述べ、貧困者を「歯なし」と呼び、パートナーの女優ガイエが「ファーストレディになりたがっている」と語り、大統領府で孤独を感じて自分自身を「亡霊」のように感じていると話している。議会の議長や大臣を軽視する発言をしたり、サッカーのフランス代表チームの選手についても「育ちの悪いガキたち」が突然超金持ちになったとし、「脳みそのウェイトトレーニングが必要だ」と言い放ったと報じられている。

またイスラム教徒についても、「イスラムと問題がある理由は、イスラムが(お祈りの)場所と承認を要求しているからだ」と発言し、物議になっている。さらに移民についてはこう発言している。「フランスに来るべきではないような、到着する移民の数が多すぎる……フランス語を話すよう教えると、今度はまた別のグループが到着する……そしてすべてイチから繰り返しだ。終わりがない……どこかのタイミングで終わりにしなければいけない」

発言まで、まるで人種差別主義者と呼ばれるトランプ次期米大統領のようである。

反グローバル化の潮流が来るかもしれない

オランドは今回出版された本について、自分の発言は誤って解釈されていると直ちに弁明したが、オランドの社会党は大変な混乱に陥っているようだ。このタイミングでの混乱は社会党にとって重大な意味をもつ。というのも、フランスでは2017年5月に大統領選挙を控えているからだ。しかも、こんな無茶苦茶なオランドは、性懲りもなく大統領選に再選を目指して出馬するとの見方も出ており、12月15日の予備選までに出馬を表明することなっているのである。

英国のEU(欧州連合)からの離脱に続き、米国では孤立主義を標榜するトランプが当選し、世界的に反グローバル化の波が来ていると言われる中、2017年のフランス大統領選で保守系の大統領が誕生するのではないかとの指摘もある。あまりにオランドが不人気だということと、移民問題で内向きになったフランス国民が「変化」を求めるとの分析があるのだ。そうなれば世界的に、本当に反グローバル化の大波が来るかもしれない。

頼りない現職のオランドのおかげで、フランスからそんな世界的な流れが後押しされる可能性がある。世界の流れを読むためにも、オランドの低支持率の行方を見守る必要がありそうだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。

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