塾や習い事とも違う、子どもたちが「地域で遊ぶ」ことで得られるもの 新宿区・西落合「こどもDIY部」

塾や習い事とも違う、子どもたちが「地域で遊ぶ」ことで得られるもの 新宿区・西落合「こどもDIY部」

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  • 更新日:2017/12/06
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現代では子どもの習い事の選択肢は水泳、ピアノ、そろばん、などの王道に加えて、プログラミング、ダンス、英会話など多様化が進んでいる。育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんによれば、それは「子どもにこんな力も身に付けさせたい」「あんなこともできるようになってほしい」と親たちのニーズが多様化しているからだという。

今の子どもは大変だ。コミュニケーション能力、発想力、思考力、表現力……。学歴はありきで、さらに学力では測り切れない様々な力が求められる。一方で、もしかしたらそれらは昔であれば普段の生活や遊びの中で自然と身に付いていたものもあるのでは? とも思う。近所のおじいちゃん、おばあちゃんと触れ合ったり、自然の中で秘密基地を作ったり、川で泥まみれになって遊んだり……。現代の都会ではなかなか経験するのが難しいことだろう。

子どもたちが作りたいものを、自由に作る

都営大江戸線・落合南長崎駅から徒歩10分強、住宅地の中を歩いていると目に留まる「こどもDIY部」の看板。「アトリエ」と呼ばれるその場所には、様々な形の材木や工作物が無造作に置いてあり、中に入ると何だかワクワクしてくる。

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こどもDIY部。子どもたちが気軽に立ち寄れる地域の場所は今では貴重だろう

DIYと言えば、一般人が自宅の家具などを作ったり、もっと高度になると家の内外の補修等を行なったりする。最近ではテレビ番組でタレントが行なったりしてだいぶ身近に感じられるようになってきた印象だ。「こどもDIY部」という名前からすると、いわゆる「工作教室」だろうか。立ち上げたさかたともえさんに聞いた。

「どちらかと言うと『遊び場』でしょうか。もちろん、コースとして工作教室はありますし、子どもたちは色々なものを作りますが、決まったカリキュラムがあるわけではないですし、その時その時で子どもたちが作りたいものを、自由に作ります。私何も教えないですし(笑)」

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こちらの作品の上部を指して「斜めになっているでしょう」と言うさかたさん

実際に作ったものを見せてもらった。「ほら、ここは斜めになっているでしょう。これくらい気にしませんよ! 自由に、やりたいようにやればいいんです」(さかたさん)

筆者はいわゆる図工の類が嫌いだった。細かい作業が苦手で、苦痛でしかなかった。「ちょっとぐらい曲がっても気にしないで!」なんて言ってくれる先生はいなかったし、当然「うまくできる」ことが評価につながり、ものを作る楽しみというのが分からなかった。さかたさんのような人がいたら、もしかしたら楽しめたのかな……と思えるくらい、その豪快さが気持ちよい。

さかたさんは4人の子どもの母親。長らく建築事務所で働いていた。4人目の子どもを出産後、復帰して働いていたが日々の生活を回すだけで精一杯だったという。「仕事から帰ってきて、何とか子どもを寝かしつけることが目標になり、子どもと楽しく触れ合う時間なんて皆無。言うことを聞かないとつい怒鳴っていまい、『このままじゃいけない』と思うようになりました」(さかたさん)

一番上の子が小学校4年生になったタイミングで、「こどもDIY部」を立ち上げた。当時住んでいた地域では4年生になると学童に入れなくなるため、この年齢の子どもたちを中心としたプログラムを作り、放課後の居場所をつくりたいと思ったのだ。

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さかたともえさん

立ち上げ当初は地域のセンターで場所を借りてやっていたが、2年半前に現在の「アトリエ」に移った。メンバーは20名。下は4歳から上は11歳までと幅広い。未就学~小学校低学年で初めて訪れる子が多いという。きっかけは子どもが既にこどもDIY部に通っている友達から教えてもらったり、親がSNSで情報を得たり、というパターン。「子どもに色々な体験をさせたい」「様々な素材に触れさせたい」「ものを作るのが好きだけど、自宅でやるのは限界があるので……」といった親の思いがあるそうだ。

工作教室だけではない。ネットリテラシーを身につけながら作品をつくる「動画クラス」、最近始めた「教えない料理教室」、その他には「ヒミツ基地キャンプ」やシュノーケリングなど、自然の中で思い切り遊ぶことを大切にしている。さらに、子どもたちが「やりたい」と言ったことはどんどんやらせる。「カフェをやってみたい」から生まれた「キッズカフェ」、さらにそこから形を変えて現在取り組んでいる「キッズマルシェ」では、販売だけでなく、仕入れから値付け、どうやったら利益を出せるのか、までを考えて「おみせやさんごっこ」をしているのだという。非常にリアルな社会体験だ。

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月に1回開かれる「キッズマルシェ」

子どもたちがすべてを運営「こどものまち」

それらの集大成とも言えるのが、今年3月に行われた「春はのんびりこどものまちをつくろう」だ。1週間かけて、子どもたちが「まちづくり」をしていく。ドイツのミュンヘンで30年以上行われているものを参考にしており、見守る大人はいるものの、すべて子どもたちだけで「まち」を運営していくものだ。子どもたちはまちで仕事をし、給料をもらい、税金を納めて、その残りで買い物をしたり、ゲームをしたりして遊んだりできる。役所、ハローワーク、銀行、学校、デパート、ゲーム屋、工房など仕事場も多岐にわたり、子どもたちは自分のやりたいことをやりたいようにやる。それで本当に「まち」が成り立つのか、と疑問に思うが、これが不思議とうまくいくのだという。

もちろん、最初は当然混乱する。各仕事場には大人がいて、大枠の仕組みの説明などはしてくれるものの、いったん動き出したら、よほどのトラブルがなければ基本的には口出しをしない。初日は125人の子どもたちが訪れ、工房で「自分が」作りたいものをどんどん作ってしまい、その商品を仕入れるデパートでは誰も買ってくれず、借金が膨らんでいくという悲惨な状況だったという。2日目にはしごと時間を変更したり、リーダーという役割を作ったりしたことでだいぶ秩序立ってきたそうだ。

「子どもたちは仕入れ値に利益を乗せることをあまり理解できず、儲からないんです(笑)。儲けることに罪悪感があるのでしょうか。正しいおカネ教育の必要性を感じました」(さかたさん)

子どもの職業体験といえば「キッザニア」が有名だが、おそらく「リアル」さで言えばこちらのイベントが上だろう。参加した子どもの保護者から寄せられた感想に、「こどものまちに参加した我が子が、しごとのこと、税金のこと、おカネのことに興味をもったのか、世の中のことをコンパクトにまとめてある本を借りてきたり(中略)、いろんな人や場に触れ、子どもの新しい関心、世界が広がっていると感じました」とあった。次回は4月に2日間でミニバージョンが行なわれることが決まっている。

モチベーションは「自分がやっていて楽しい」から

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「こどもDIY部」のような場所が近所にある子どもたちは幸せだと思う。何がさかたさんをそこまで突き動かすだろうか。

「自分がやっていて楽しいのが一番ですね。もちろん、子どもたちの居場所のためですが、自分が楽しくなければ続きません。面倒だと思わないか? もちろん大変ですよ。でも一歩踏み出してみると、新しい人ともどんどん知り合えて、世界が広がります」(さかたさん)

たとえば、「こどものまち」はさかたさんを含め事前準備は3名で行っており、当日は地域で募ったボランティアの方々にお願いし、運営していた。他にも、シュノーケリングは地域のお父さんを講師として招いた。「今後は、もっと専門家の方とも繋がっていきたい。子どもたちに『ホンモノ』を体験してもらいたい」(さかたさん)という。

家庭、学校以外の「第3の場所」の存在は子どもにとって非常に重要であろう。「気軽に立ち寄れる、楽しく遊べる場所」が貴重になった現代、「こどもDIY部」が地域に果たす役割の大きさを実感した。

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