大分県教員採用不正、高裁差し戻し 賠償弁済請求「県の義務消えず」 最高裁

  • 西日本新聞
  • 更新日:2017/09/16

大分県の教員採用不正を巡り、不合格となった受験者に県が支払った賠償金を県教育委員会の元幹部らに請求するよう県に求めた住民訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は15日、住民敗訴の二審福岡高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。県教委の責任などについて高裁で審理を尽くすべきだと判断した。

一審大分地裁判決は、元幹部ら4人に計約2700万円を請求するよう命令。二審福岡高裁は元幹部らの責任を認めた上で、うち1人が約3200万円の退職金を返納したことで請求義務がなくなったとする県側の主張を支持し、住民の請求を棄却していた。

第2小法廷は「悪質な不正で、結果も極めて重大。元幹部が退職金を返納したからといって、当然のように県の請求義務がなくなったとは言えない」と指摘。二審は、不透明な選考を許容していた県にも責任があるとしたが「そのような抽象的な事情で県の請求権は制限されない」とした。

一、二審判決によると、県は2006、07年の採用試験で、不正な得点操作の影響により不合格となった53人に総額約9千万円を支払って和解した。

元幹部ら教育関係者8人が不正を巡って起訴され、全員が有罪となった。

■判決は大きな一歩だ

原告のNPO法人「おおいた市民オンブズマン」の永井敬三理事長の話 思っていた以上の判決で高く評価できる。判決ではさらなる審理を高裁に求めており、大きな一歩だと思うし、期待が持てる。

◇    ◇

組織関与の範囲は? 真相の解明迫る

15日に最高裁で判決が言い渡された「求償権訴訟」。大分県教育委員会による採用試験不正の影響で不合格になった受験者に公金で支払った賠償金を、不正に関わった当時の県教委幹部らにどこまで弁済させるかが争点だったが、最高裁は不正を生んだ同県教育界の風土や県教委の姿勢にも踏み込んで、審理のやり直しを命じた。

「幹部職員が組織的に関与し、賄賂の授受を伴うなど悪質」「結果も、多数の受験者が不合格となるなど極めて重大」。判決文には、不正に関わった当時の県教委幹部や県教委の責任を問う言葉が並んだ。

2008年に発覚した教員採用試験の不正。県教委幹部や小学校校長ら計8人が贈収賄罪で起訴され、全員有罪となった。県は06、07年の採用試験で合格ラインに達していたのに点数が改ざんされ不合格になった53人に賠償金9045万円を支払った。

「犯罪行為で生じた賠償金を公金で肩代わりするのはおかしい」-。原告のNPO法人「おおいた市民オンブズマン」ら住民は、賠償金は不正に関わった県教委の元幹部らが弁済すべきだとして、県に賠償請求するよう求めていた。

一審、二審は、県に求償権がどこまであるかという「線引き」で判断が分かれた。ただ、求償権があるかどうかを判断するためにオンブズマンが求めていた口利きルートや県教委の組織的関与など事件の全容解明はいずれも却下された。

しかし、最高裁判決はこの点についても切り込んだ。「教員採用試験で不正が行われるに至った経緯や県教委の責任の有無および程度、不正に関わった職員の職責に照らして県の求償権が制限されるか否か、審理を尽くさせるため差し戻す」

求償権に詳しい大阪大大学院の小野田正利教授(教育学)は「真相を解明しながら審理をやり直すよう求めるとともに、違法行為の責任はきちんと取らなければならないという求償権の厳格な適用を求めた意義は大きい」としている。

◇    ◇

採用試験制度を発覚後に見直し

2008年に大分県の教員採用不正が発覚した後、県教育委員会は採用試験の制度を抜本的に見直した。

県教委の特定の課が採用過程の全てを担っていたことに「口利き」の入り込む余地があったとみて、点数の集計を県人事委員会に移管。県教委は試験実施と合格ライン決定のみを担当するようになった。県教委は「成績処理に関与せず、不正が入り込めないようになっている」と強調する。

15日の最高裁判決後、報道陣の取材に応じた工藤利明・県教育長は「あらためて県民の皆さまにおわび申し上げる。これまでも、採用試験の見直しなど再発防止に取り組んできた。これからも教育県大分の創造に向けて取り組んでいく」と力を込めた。ただ、県教委の主張が認められなかった判決については、硬い表情で「福岡高裁で大分県の考え方をしっかり主張していくだけ」と繰り返した。

=2017/09/16付 西日本新聞朝刊=

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