【社説】首都エルサレムの現実

【社説】首都エルサレムの現実

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/12/07
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ドナルド・トランプ米大統領は6日、エルサレムをイスラエルの首都と認め、大統領選挙中の公約を果たした。この決定は批判的な向きが主張するような、従来の政策からの抜本的な転換ではない。しかもトランプ氏はパレスチナとイスラエルの「2国家解決」を支持し、民主・共和両党の歴代大統領が長年維持してきた姿勢と軌を一にした。

連邦議会は1995年にイスラエルの首都がエルサレムであることを認める法律を制定した。当時のビル・クリントン大統領は拒否権を発動しなかった。続く歴代大統領も原則論では一致し、大統領選では公約に掲げることさえあった。だが実際に就任するとエルサレムを正式に首都と認めることをせず、在イスラエル米大使館を現在のテルアビブからエルサレムに移転することを先延ばしする措置をとってきた。トランプ氏がこれまでの大統領と違う点は、公約はどうやら本気だったということだ。

トランプ氏は今回の決定を「現実の認識」と呼んだが、その通りだ。イスラエルの議会や最高裁、大統領や首相の官邸はエルサレムにある。米国の大統領や国務長官がイスラエル側の相手と会談するのもここだ。

だが米国の公式見解は、パレスチナ側もエルサレムを首都と主張しているため、将来のエルサレムの地位についてはイスラエルとパレスチナの両方が合意しなければならないというものだ。トランプ氏はこの件でどちらか一方に肩入れしているというわけではない。ホワイトハウスは「エルサレムは非常にデリケートな問題」だと認識しているうえ、西エルサレム(イスラエル政府が置かれている)と東エルサレム(1967年の第3次中東戦争以降イスラエルが占領)を区別していない。

トランプ氏は米大使館移転の意向を示すと同時に、イスラエル・パレスチナ和平交渉を仲介する意思を新たに示した。パレスチナ人国家の樹立が解決策に含まれるという点も排除していない。政府当局者らは6日、水面下で事態は進展しているとし、トランプ氏の意思をあらためて強調した。これまで失敗してきた長い歴史を考えればわれわれは懐疑的だが、米国は努力している最中だ。

パレスチナ当局が真剣に和平を考えていることをあらためて示す一つの方法は、罪のないイスラエル人を殺害したパレスチナ人の家族に金銭を支払うことを止めることだ。米下院は5日、この支払いを止めるまでパレスチナへの援助を削減する法案を通過させた。今月中には上院でも法案が通るかもしれない。

アラブ諸国の首脳らは米大使館の移転を非難している。しかし、その怒りがどのくらい長く続くのかは疑問だ。スンニ派のアラブ諸国はイスラム過激派のテロとイランの帝国主義という脅威にも直面している。パレスチナ問題は二次的な懸念だ。仮に20年余りも前に発信された米大使館移転の話が和平交渉を頓挫させるのに十分であるというのなら、おそらく和平の下地はそもそもまだ存在していない。

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