【岐路に立つ日韓関係】 姜 尚中さん

【岐路に立つ日韓関係】 姜 尚中さん

  • 西日本新聞
  • 更新日:2019/02/11

◆眼前危機への連携図れ

坂道を転げ落ちるように険悪の一途をたどる日韓関係。その悪化を防ぎ、少しでも通常の関係に復元していく途(みち)はあるのか。それとも、もはやなす術(すべ)もなく、隣国同士が各々(おのおの)の国家の資源とエネルギーを割いて消耗戦を続けていくことになるのか。いま、両国は岐路に立たされている。

「従軍慰安婦」や「徴用工」をめぐる問題、さらに日韓間の艦船と哨戒機をめぐる問題など、両国の国交正常化の土台そのものが揺らぎ、それが防衛当局間の根深い不信にまで波及しつつある。

何がこれほどまでに両国の関係を剣呑(けんのん)にしているのか。それは、韓国と北朝鮮の間に働く求心力と、日韓関係に働く遠心力によるものである。ドイツの文豪ゲーテの『親和力』の世界のように、東アジアの国家間にも化学的な化合と分解の力が働き、牽引(けんいん)と反発の新たな関係がつくられようとしている。

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振り返ってみれば、日本の戦後における東アジアの安全保障上の与件とは、分断国家という緩衝地帯によって大陸と繋(つな)がり、日米安保の核の傘でその国土を保全することだった。

その限りで、日韓関係とは、米国をシニアパートナー、日本を準シニアパートナー、そして韓国をジュニアパートナーとする日米韓のトライアングルの中の2国間関係だったと言える。

そもそも、日韓関係は、米国というハブ(結節点)と連結されたスポーク(車輪の部品の一つ)であり、米国の対アジア戦略の変化次第で日韓の2国間関係が軋(きし)んでしまう脆弱(ぜいじゃく)さを抱えていた。そしてトランプ政権になり、米国は東アジアのパワーバランスを変えかねない北朝鮮との直接交渉に乗り出すようになった。明らかに日本を取り巻く東アジアの安全保障上の与件は崩れつつある。

今のところ、日本にはそのような変化に積極的に介入する余地は限られている。

今月末にベトナムで予定される2回目の米朝首脳会談の行方次第では、朝鮮半島を取り巻く安全保障は劇的に変化する可能性がある。

核関連施設や大量破壊兵器の解体に向けたロードマップが北朝鮮側から提示されれば、米国が朝鮮戦争の終結宣言や南北経済交流の黙認など「相応の措置」に踏み切る良いシナリオが想定される。あるいは段階的な非核化と対応措置の名のもとにそれらの動きが進むシナリオもあり得る。

内政で行き詰まりを見せるトランプ政権にとって北朝鮮とのディールは有力な外交的実績であり、かなり踏み込んだ決定が下される可能性が濃厚だ。その場合、南北関係の進展に一気に弾みがつき、三・一独立運動100周年などで南北合同の民族主義が盛り上がる可能性がある。

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北朝鮮の非核化が部分的にしか実現しないまま南北の一体化が進み、他方で在韓米軍が縮小、撤退すれば、日本が緩衝地帯を欠いたまま、むき出しの形で大陸の勢力圏と対峙(たいじ)することになりかねない。さらに、韓国が北朝鮮の部分的非核化を容認し、南北で日本に対抗してくることになりはしないか。

こうした疑念が広がろうとしているのである。

他方、日本では新しい元号を迎え、国家のアイデンティティーについて関心が高まることによって南北との対立がより顕在化する恐れがある。

しかし日韓関係を少しでも好転させるためには、日本は日朝平壌宣言に基づき、自ら北朝鮮との直接交渉に乗り出し、局面打開の主導権を発揮すべきである。少なくとも、「いまそこにある危機」打開に向けて日韓が連携を図ることが、最悪のシナリオを避ける道筋である。

【略歴】1950年、熊本市生まれ。早稲田大大学院博士課程修了後、ドイツ留学。国際基督教大准教授、東大大学院情報学環教授、聖学院大学長など歴任。2018年4月から鎮西学院院長。専攻は政治学、政治思想史。最新刊は「母の教え」。

=2019/02/11付 西日本新聞朝刊=

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