宇宙の謎を解き明かす原始銀河団を大量に発見

宇宙の謎を解き明かす原始銀河団を大量に発見

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/04/16
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今から138億年前、ビッグバンと呼ばれる火の玉のような状態から始まった宇宙は、どのようにして現在の姿へと進化してきたのか? そしてこれから先どんな運命をたどるのか? この究極の問いへの答えをもとめて、日々、世界中の物理学者は研究を続けています。

先日、東京大学宇宙線研究国立天文台総合研究大学院大学などからなる研究グループが、宇宙の彼方にたくさんの銀河団を発見したことを発表しました(プレスリリース:宇宙は原始銀河団であふれている)。この発見は、私たちの住む宇宙がどのようにできあがってきたのかを知るための非常に重要な成果なのだそうです。

宇宙はどのようにできあがったのか

ご存じのように地球は太陽系の中にあり、太陽系は天の川銀河という銀河に含まれています。銀河は星が数千億個集まった集団ですが、さらにその銀河が数千億個も集まったのが銀河団です。惑星、恒星、銀河、銀河団というように宇宙は階層構造でできているのです。

そのもっとも大きな構造である銀河団がどのようにできあがってきたのか、また銀河団の中でそれぞれの銀河がどのように成長してきたのか。このことを解明するのは宇宙がどのようにできあがったのかを知るうえで不可欠なのです。

銀河団の成長過程を理解するためには、現在の銀河団だけではなく、まさに成長しつつある銀河・銀河団を調べることが重要です。つまり、宇宙がもっと若かったころの銀河団を観察する必要があるのです。

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すばる望遠鏡に搭載されたハイパー・シュプリーム・カムというカメラで撮影されたアンドロメダ銀河。数千億個の恒星が含まれている(©HSC Project/国立天文台)

遠くを見るほど過去が見える?

いったいどうすれば過去の銀河団を調べられるのでしょうか? そのカギは光の速さが有限であることにあります。

遠く離れた天体までの距離を表す単位として「光年」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。たとえば「10光年」とは光の速さで10年かかる距離を表しています。10光年離れた星から私たちに届いた光は、10年前にその天体から出た光ということになります。つまり、私たちは10年前の姿を見ているのです。

同じように、100億光年離れた天体の姿を見ることは、100億年前の宇宙を見ていることになるのです。

こうした理由から、天文学者は遠く離れた宇宙にある銀河団を探してきました。宇宙の年齢が138億年ですから、120億光年離れたところにある銀河団を見つければ、それは宇宙が誕生してから18億年しかたっていないころの銀河団ということになります。このような宇宙の初期の銀河団は「原始銀河団」と呼ばれています。

天文学の常識を変える日本のスーパー望遠鏡

しかし、そのように遠くにある銀河団を見つけることは簡単ではありません。宇宙で銀河団が占める割合は、体積にしてわずか約0.38パーセント。遠方宇宙に存在する原始銀河団はこれよりも小さいと考えられています。ちなみに、これまでに見つかっていた原始銀河団はわずか20個以下でした。

この状況を一変させたのが日本の国立天文台が持つ「すばる望遠鏡」です。ハワイ島マウナケア山の山頂にあるこの望遠鏡は、口径8.2メートルの鏡を備えた、地球上でもっとも微弱な光まで捉えることのできる望遠鏡のひとつです。

今回の発表を行った研究チームはすばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam)」を使って、銀河団探しに挑みました。

ハイパー・シュプリーム・カムは、一言で言えば超高性能のデジタルカメラです。大きさは人の背丈以上もあり、重さは約3トン。画素数は8億7000万画素にもなります。

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すばる望遠鏡とハイパー・シュプリーム・カム(©国立天文台)

探査の結果、研究グループは約120億年前の宇宙に原始銀河団を200個近く発見しました。これまでの研究で見つかっていた原始銀河団の数のじつに10倍です。この発見によって、銀河団の成長に関する研究は格段に進展すると期待されています。

今回発見された原始銀河団からわかったことを詳しく見てみましょう。

太陽の10兆倍の暗黒物質(ダークマター)

発見された原始銀河団から明らかになったのはその分布が不均一であるということです。研究グループはこの分布を統計的に解析することで、そのまわりに存在している暗黒物質の塊「ダークマターハロー」の質量を推定することに成功しました。その質量はなんと太陽の質量の10兆倍以上。

この大きな質量がさらに周囲の物質を重力で引き寄せることによって、原始銀河団は、現在の銀河団(太陽質量の100兆倍)に成長していくと考えられます。

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発見された約120億年前の銀河の分布と原始銀河団領域の拡大図。赤色の領域が銀河の密度が高い領域。拡大図上の白丸は銀河の位置を表す(©国立天文台)

今回の論文を発表した東京大学宇宙線研究所・観測的宇宙論グループの利川潤さんは「これまでは近傍宇宙でしか行うことができなかった解析手法が、120億年前という遠方宇宙においても初めて適用することができました。この研究で構築された遠方宇宙の原始銀河団サンプルは、今後様々な角度から研究を進めるための基礎となるでしょう」 と語ります。

超巨大ブラックホールに関する学説が覆される!?

また、研究グループは発見された原始銀河団とクェーサーの関係についても調査を行いました。クェーサーとは、超巨大ブラックホールが周囲のガスを大量に飲み込む過程で非常に明るく輝いている特殊な天体です。

現在、ほぼすべての重い銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在すると考えられていますが、明るく輝くクェーサーとなっている場合もあれば、そうでない場合もあります。この違いはいったいどこからくるのでしょうか。

有力な仮説のひとつが、銀河が衝突合体するときに、ブラックホールがその銀河のガスを大量に飲み込んでクェーサーになるというものです。もしこの仮説が正しければ、銀河が密集していて衝突する頻度が高い原始銀河団ではクェーサーが見つかりやすいということになります。

今回発見された、200個の原子銀河団によって、はじめてこの仮説を統計的に検証することが可能になりました。研究グループは、原始銀河団と同じ時代の、つまり約120億光年離れた場所にあるクェーサー151個と、原始銀河団の位置関係を調べたのです。

すると予想外のことに、原子銀河団には明るいクェーサーはほとんど含まれていないことがわかりました。さらに、最も明るいクェーサーは、原始銀河団を避けるように分布していたのです。

これは従来の仮説から予想されることとは逆の結果です。銀河が密集しているところで見つかりやすいと思われていたクェーサーが、じつは銀河の密度が低い場所に多く分布していたのです。

この発見は、銀河の衝突によって超巨大ブラックホールがクェーサーになるという説に大きな疑問を投げかけることになりました。

クェーサーはペアで現れる?

また、別の興味深い発見として、原始銀河団に属するクェーサーのなかにペアとして見つかったものが2組あったことが報告されています。クェーサーがペアで存在することは非常に珍しく、このように2つのペアが発見されたことは、原始銀河団のなかでは、複数の超巨大ブラックホールが同時に活動的になりやすいという可能性を示唆しているのかもしれません。

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2つのクェーサーペアと周囲の銀河分布。星印はクェーサー、丸印と点はそれぞれ明るい銀河と暗い銀河を示している。赤い部分は銀河の密度が高い領域を示しており、ペアの周囲が高密度になっていることがわかる。(©国立天文台)

研究グループのリーダーである柏川伸成さん(国立天文台)は、次のように語ります。「HSC(ハイパー・シュプリーム・カム)の広く深い観測によって、私たちはかつてない数の原始銀河団を見つけ、さらに活動的なブラックホールが属する環境の多様性について、きわめてユニークかつ新しい発見をすることができたのです」

さらに観測が進めば発見される原始銀河団の数は1000個程度まで増えると予想されています。サンプルが増えれば、そのぶん銀河団や超巨大ブラックホールをより正しく理解することができるようになります。今後、この研究からどのような新しい発見がもたらされるのか、とても楽しみです。

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