気を付けろ!10月からの新ルールで、妻が働き損になる

気を付けろ!10月からの新ルールで、妻が働き損になる

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2016/10/18

156時間もタダ働き

額に汗して働けば、それに見合った収入が得られる。素直にそう考えていては、大きな「働き損」が生じる制度改革が、この10月から始まっている。家族の暮らしを守るには、どうすればよいのか。

この10月に入って、「106万円の壁」という言葉が、にわかに世間を騒がせ始めた。

サラリーマンの夫の収入を長年、パートで支えてきた57歳の永沢美千代さん(東京都練馬区・仮名)は、パート先のスーパーの人事担当者から聞いた話に衝撃を受けたという。

「いまは時給900円ちょっとのパートを掛け持ちして週30時間働いていて、年収にすると125万円。これが10月からは、『106万円の壁』を超えることになって、健康保険や年金のおカネが年14万円も引かれるっていうんです。それじゃ、年収が111万円になるのと同じですよね。

これって時給で考えたら、年に156時間分もタダ働きするのと同じになるんですよ!」

いったい、いま何が起こっているのか。「106万円の壁」は、この10月から、(1)従業員数が500人を超える事業所(1店舗だけでなく会社全体)で、(2)週20時間以上働き、1年以上の雇用継続が見込まれ、(3)月収8・8万円(年収約106万円)以上を得ている人は、社会保険料(健康保険料、厚生年金の掛け金)を自ら支払う、とされたことで生じた。

サラリーマンの夫に扶養される妻は「第3号被保険者」と呼ばれ、保険料を支払う必要がなかったが、それを自分で負担することになったのだ。

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その家計への影響の大きさを知るために、まず夫婦にかかわる税金や保険のルールを見ていこう。

サラリーマンの夫とパートタイムで働く妻といった夫婦の場合、妻の収入に応じて、さまざまな「壁」が生まれている。

一般によく知られているのは、「103万円の壁」だ。妻の年収が103万円を超えると、(1)妻自身の収入に所得税が課税される上、(2)夫の所得に対する配偶者控除が適用されなくなる。

(1)は、誰にでも適用される基礎控除38万円と、パート収入のように給与所得に対して行われる給与所得控除65万円の計103万円のラインを超えることによるもの。

妻自身の所得税額は、年収から103万円を引いた分の5%なので、前出の永沢さんのように125万円の年収がある人なら、(125万円-103万円)×5%=年1・1万円となる。

一方、(2)の配偶者控除が適用されなくなることは、夫の年収によってはかなりの痛手となる。

配偶者控除は、妻(配偶者)の年収が103万円以下の場合、夫の所得から38万円を控除するもの。

計算式で見ると、(夫の年収-38万円)×所得税率となり、手取りでは38万円×所得税率の金額分のプラスになる。

たとえば、年収300万円の夫なら所得税率は10%なので、年3・8万円。年収500万円なら所得税率20%で、年7・6万円。もし年収1100万円なら所得税率は33%で年12・54万円もの得になっている。夫の年収が高く、所得税率が高いほど、配偶者控除で家計にはお得になる。その分、妻が「103万円の壁」を超えて働き、控除が適用されなくなったときの損は大きい。

ただし、ファイナンシャルプランナー(FP)で社会保険労務士の井戸美枝氏は、こう話す。

「『103万円の壁』は有名ですが、夫の年収が1000万円以下なら、妻の年収が103万円を超えても、年収141万円までは配偶者特別控除という別の控除があって、『壁』を少し超えたからといって、急に控除される額がゼロになってしまうわけではないのです」

配偶者特別控除は、妻の年収が103万円超、141万円未満の場合に適用される控除。控除額は38万円から36万円、31万円、26万円……と階段状に下がって行き、妻の年収が141万円を超えるとゼロになる。つまり、妻の年収が141万円になるまでは控除が急減することはなく、なだらかに減る形になる。

配偶者特別控除さえなくなってしまう、この妻の年収ラインは「141万円の壁」と呼ばれる。

だが、「106万円の壁」は、他の「壁」に比べて大きなインパクトを家計に与える。左のグラフを見てほしい。これはサラリーマンの夫とパートで働く妻という世帯を想定し、妻の年収によって「実際に家計にプラスになる金額」がどう変化するかを表したものだ。

夫の収入が多いほど損をする

夫の年収が1000万円以下の(1)、(2)の場合、妻の年収が「103万円の壁」を超えても、配偶者特別控除が適用されるため、家計へのプラス分は順当に増えていく。だが「106万円の壁」に突き当たると、家計へのプラス分は急減する。

50代のパートタイマーが、年収100万円台で働いている場合の、一般的な社会保険料は月1・5万~2万円と言われる。ここでは月1・5万円、年換算で18万円の負担が発生するとしてグラフを作成した。

一度、「106万円の壁」に当たると、それ以降は実際に家計にプラスになる金額は急減し、「シフトを増やすなど、頑張って働いたのに、実質的に損をする」という「働き損」が発生してしまう。

たとえば(1)の場合、年収105万円で働くのと、年収126万円で働くのでは、家計へのプラス分はほぼ同じ。言い換えれば、年収106万~125万円なら、せっかく努力して働いても、105万円で働いたときよりも家計にプラスになる金額は減り、働き損になる。時給900円なら最大211時間分のタダ働きだ。

(2)の場合、働き損の範囲はさらに広がり、年収106万~128万円。(3)に至っては、104万~135万円が働き損に。時間換算で244~344時間の働き損だ。

ここからわかるように、夫の年収が多い(所得税の税率が高い)ほど、働き損の危険がある「落とし穴」は広がっていく。

この「106万円の壁」による家計の収入減を補うのは、容易ではない。冒頭のパートタイマー永沢さんの例で考えてみよう。従来の年収125万円と同じだけ家計にプラスになるよう働くには年収140万円にしなければならない。パートのシフトを増やして稼ぐなら、週に3時間半、勤務を増やす必要がある。すでにパートを掛け持ちして週30時間働いている現状を考えれば、大きな負担と言わざるを得ない。

思い切って、年収を106万円より少なく抑えるのも一案だ。永沢さんの場合、年収を105万円とすれば、これまでより20万円減となるが、どうせ「106万円の壁」で社会保険料を引かれ、実質的な年収は111万円になると考えるなら、年収6万円減になるに過ぎない。働き損を避けた年156時間を使って、出来合いのお惣菜を買っていたところを、野菜や魚など原価の安い食材から時間をかけて調理し食費を削るなど、生活費を節約することに傾けることもできる。

前出の井戸氏は、仕事を減らして「106万円の壁」より少ない収入に調整するなら、こんなポイントがあると話す。

「『106万円の壁』でいう収入には、通勤手当や、たまたま残業が多くなってついた残業代などは含まれません。ギリギリ106万円未満になるよう計算するなら、こうした部分は差し引いて考えることができます」

とくに通勤手当については「106万円に含まれる」という誤った情報がネットを中心に広まっており、注意が必要だ。

大きな働き損を生む「106万円の壁」。だがFPの横川由理氏は、いまの日々の暮らしに多少なりゆとりがあれば、「壁」を超えて社会保険料を払うことにも、長期的なメリットはあると話す。

「それは妻自身も将来、厚生年金を受け取れるということです。東京都に住む50代前半までの妻の場合で計算すると、健康保険と厚生年金の保険料を月々1・6万円、10年間支払った場合、65歳から受け取れる厚生年金の額だけで年間7・2万円ほど増えるのです。

目の前の家計ではたしかに、社会保険料を取られた分がマイナスになってしまいますが、長い目で見れば得もある。夫が自営業で厚生年金がないという世帯の場合は、メリットはさらに大きく感じられるはずです。

また、サラリーマンの夫が60歳で定年退職したあと、再就職しないなら、パートで働いて社会保険料を払っている妻の扶養に入れば、国民健康保険料を安くできるメリットもあります」

必要なのは次々と変わる制度を知り、対策を練るための知識を身に着けることだ。

「週刊現代」2016年10月15日・22日合併号より

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