名波ジュビロ、指揮官がMVPに挙げた大井健太郎。古巣復帰初年度、守備の要が示した存在感

名波ジュビロ、指揮官がMVPに挙げた大井健太郎。古巣復帰初年度、守備の要が示した存在感

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  • 更新日:2016/12/01
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ジュビロ磐田のDF大井健太郎【写真:Getty Images】

磐田復帰の理由。名波監督の存在

「勝ち点40」という目標をかかげ、2016シーズンの明治安田生命J1リーグに臨んだジュビロ磐田。最終的に獲得した勝ち点は36だったが、最低限の目標であるJ1残留はクリアした。名波浩監督が選んだチームのMVPはDF大井健太郎。今季古巣に復帰したセンターバックは、シーズンを通して守備の要として獅子奮迅の活躍を見せ続けた。(取材・文:青木務)

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1月14日、ヤマハスタジアムの記者会見場で2016シーズンの新体制発表が行われた。新加入選手の中に、大井健太郎の姿があった。

静岡県の名門・藤枝東高校から2003年、磐田に入団。2011年に湘南ベルマーレへ移籍すると、翌年からはアルビレックス新潟でプレー。新潟での4年間で守備の要に成長し、キャプテンも務めるなど厚い信頼を得た。そんなCBが32歳を迎える今シーズン、プロとしてのキャリアをスタートさせた古巣に帰還した。

「自分を呼んでくれた名波さん、チームスタッフに感謝しています。自分を快く送り出してくれたアルビレックスの皆さんにも感謝しています。自分は尊敬する人物に父と名波さんの名前を常に挙げているんですけど、その監督のもとでプレーできるのはすごく幸せなことだと思います。期待に応えられるようなプレーをピッチで出せるように、練習から一生懸命やっていければと思います」

壇上でマイクを持った大井は、磐田復帰の理由の一つに名波浩監督の存在を挙げた。その後の囲み取材でも「移籍を決断するにあたってすごく悩んだ。新潟に感謝もありますし、魅力も感じるチームだったので、離れてしまうのは残念でした。でも、それ以上に名波さんとやりたいという気持ちが強かった」と移籍の決断を明かしている。

練習から常に声を出して周囲を盛り立て、不用意なプレーをした選手には厳しく叱責し反省と自立を促す。もちろん、いい動きを見せた選手には称賛を惜しまなかった。加入直後から存在感を発揮すると、当然のように開幕戦のスタメンに名を連ねた。

不在時に痛感する存在の大きさ

「MVPね、誰かな。やっぱり健太郎かな。(2ndステージ第11節)神戸戦でいなくなった後半や(同14節)新潟戦の終盤とか、アイツがいたら何とかなったんじゃないかというゲームがあったからね」

最終節でベガルタ仙台を下し、磐田はJ1残留を自力で決めた。オフを挟んで練習を再開した日、指揮官は今シーズンのチームMVPに大井の名を挙げた。この2試合は試合終盤に勝ち越しゴールを奪われ、痛い敗戦を喫している。同点のまま終えられれば勝ち点1を上積みできただけに、もったいない結果でもあった。

不在により、その存在感がむしろクローズアップされる。大井の、選手としての価値の大きさを示している。

リーグ戦30試合に出場。ピンチの場面で体を張り、味方を鼓舞し、最終ラインで戦い続けた。しかし、8月20日に行われた2ndステージ第9節・サガン鳥栖戦、後半途中のことだった。自陣右サイドのスペースに出たボールへ猛然と駆けると、相手選手が追いつく直前にスライディングでカットした。すぐに立ち上がり自身のポジションに戻ったが、左足を押さえる様子が気になった。

試合は終盤に追いつきドローに持ち込んだ。ミックスゾーンに現れた大井に声をかける。しかし、普段はどんな結果でも足を止めて取材に応じる彼が、「今日はすいません」とだけ言い残して去っていった。左足にはテーピングが巻かれていた。

左太腿二頭筋肉離れと診断された。中心選手の離脱は大きな痛手だが、名波監督は症状が重くないことを強調した。大事をとって翌節のアビスパ福岡とのアウェイゲームには帯同しなかったが、9月10日の2ndステージ第11節・ヴィッセル神戸戦にはスタメン復帰を果たした。

この試合が前述の名波監督のコメントにある神戸戦ということになるが、背番号3は前半途中に再び左足を痛めてしまう。ハーフタイムが終わり、ロッカールームから戻ってくるサックスブルーの中に、大黒柱の姿はなかった。

そして、大井はここから1ヶ月以上に渡る離脱を余儀なくされるのだった。

10月の中断期間により、離脱は最小限に

磐田がJ1残留を達成できた要因の一つに、10月に訪れた3週間の中断期間が挙げられる。ロシアW杯アジア最終予選とルヴァンカップ決勝戦により、リーグ戦の日程に空白が生まれた。各チームは終盤戦に向けて調整を行うことができたわけだが、名波ジュビロは最後の最後で御殿場合宿を実施。共同生活による選手間の意思の再統一が図られたが、この期間で大井が練習に完全合流したことも大きかった。

スタメンに入れば、チームのために全てを出し尽くす男である。指揮を執るのが尊敬する名波監督なら尚更だ。それでも、聞かずにはいられなかった。一度怪我してすぐ復帰したが、再発してしまった。次、復帰するにあたっての恐怖感はないのか――。

「恐怖というか、次、怪我してしまったら本当にシーズンが終わってしまうから、そこはより慎重にならないといけない。でもこの前(神戸戦)もできると思ってやったし、メディカルも自信を持って送り出してくれた。そこは僕の身体が持たなかっただけ。メディカルの言うことをしっかり聞いて、無理はせずにやっていきたい。気持ち的には絶対やるという気持ちだけど、だからといって感情的になりすぎないようにしたい」

残留を争う名古屋グランパスとの大一番直前に、ディフェンスリーダーは復帰した。中断することなくリーグが進んでいればピッチに立つことはなく、精神的支柱でもある彼がいなければ名古屋戦の結果がどうなっていたかもわからない。

決して万全の状態ではなかったかもしれないが、豊田スタジアムのピッチで大井は獅子奮迅のパフォーマンスを披露。ここから最終節までチームは大井を欠くことはなく、来シーズンもJ1で戦う権利を掴んでいる。

2ndステージで失速した要因

名波監督からチームのMVPに選出された大井だが、「これだけ多く試合に使ってもらったということは信頼されているということだと思う」としつつも、「全試合出られなかったのはチームに迷惑をかけてしまった」と反省を口にした。

今シーズンの戦いについてはどう見ているのか。1stステージは8位という好成績で終えたが、2ndステージはわずか2勝と目に見えて失速している。

「前半戦で勝ち点を取れたのはラッキーだったかもしれないけど、それが自分たちの実力だと勘違いして、試合で100%出していれば勝っていたり、勝ち点を取れていたところが、90%になり80%になってしまった。それが後半戦勝てなかった要因」

大井の言葉通り、ポイントをみすみす取り損ねる試合もあった。J1に慣れることでチームは経験値を手にしていったが、それがマイナスの方向に作用した面もあったのかもしれない。

「力を出しているつもりでいても、最初は“初めてのJ1”だというイメージでみんなやっていたから、100%が自然と105%になったゲームもあったと思う。それが勝ち点に繋がっていた。1st、2ndと分かれるシーズンだったから、その中でみんなが『半分終わった、勝ち点20以上取れた』というところでどこかしら安心感があったと思う。今まで通りやっているつもりが勝てなくなってきて、悪循環になってしまったなと」

最低限の目標を達成できたことを考えれば、高いレッスン料を支払うことにはなったが、教訓にはなったはずだ。名波監督は引き続きチームを率いるため、来シーズンは再び勝ち点40以上へのチャレンジとなる。

「監督がそのまま継続ということは、やろうとするサッカーは変わらない。選手の入れ替わりもある世界だけど、作り上げていくものはゼロからではない。今年よりいい順位で終われるよう準備していきたい」

2017年、サックスブルーが躍進するためにも、大井にも今シーズン以上の働きが求められる。

(取材・文:青木務)

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