井戸川克隆前双葉町長が警告「地震大国で再稼働をすると、福島の二の舞いになる」

井戸川克隆前双葉町長が警告「地震大国で再稼働をすると、福島の二の舞いになる」

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  • 更新日:2016/12/01
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地震後、白波が押し寄せた福島第一原発 (c)朝日新聞社

今年に入り、熊本、鳥取に続き、11月22日早朝に福島県などを、マグニチュード(M)7.4の地震が襲った。東日本大震災以来となる1メートルを超える津波を観測し、福島第二原発の使用済み燃料プールが冷却機能を一時停止。このまま原発を再稼働しても大丈夫なのか。ジャーナリストの桐島瞬氏が取材した。

5時59分に福島県沖約60キロ、深さ約25キロで発生した地震は、福島、茨城、栃木で最大震度5弱を記録。気象庁は東日本大震災の余震にあたると発表した。福島県南相馬市の自宅で被災した小澤洋一さん(60)は、その時の恐怖をこう語る。

「揺れ始めに5年前と同じ大きな横揺れがあり、『これはマズイ』と思いました。地震が収まると、今度は市の防災無線スピーカーからサイレンがけたたましく鳴り響き、3メートルの津波警報が聞こえてきたのです。東日本大震災の悪夢を思い出しました」

幸いなことに7時過ぎに相馬市で観測された津波は90センチに収まったが、驚いたのは福島第二原発3号機の使用済み燃料プールが冷却できなくなっていることを知った時だ。テレビのニュースで知り、携帯電話に届いた原子力規制委員会からの緊急情報メールには、「福島第二原発で3号機の使用済み燃料プール冷却系が停止していることを確認」とあった。

1時間半後に復旧して事なきを得たものの、小澤さんは東京電力の危機管理の甘さにフツフツと怒りが湧いてきたという。今年に入り列島を大地震が襲う。4月の熊本地震では震度7を2回記録し、137人が亡くなった。10月には最大震度6弱の地震が鳥取で発生し、一部損壊を入れると1万2千軒以上の住宅に被害が出た。そして今回の東北の余震。地震学者の島村英紀氏は、いまや国内の場所を問わず大地震が起きる可能性があると解説する。

「東日本大震災の影響で、日本列島の地下深くにある基盤岩がずれてしまいました。このため、いつ大きな地震や火山噴火が起きてもおかしくありません。特に東北地方では今後100年ぐらいは最大M8クラスの余震が続くでしょう」

そうなると心配なのは原発だ。東電によると福島第二原発で起きた燃料プール冷却機能の停止は、地震で水面が大きく揺れたことが原因だという。

「燃料プール内の冷却水が大きく揺動(スロッシング)したことで空調ダクトへ流れ込み、本来の行き場所であるスキマサージタンクへ十分に行かなくなった。それでタンクの水位低下警報が働き、ポンプが止まったものと考えています」(東電広報部)

地震で水面が揺れるのは当然。いままで対策をしてこなかったのが不思議だが、実は今回の地震でトラブルはこれだけではなかった。福島第一原発と第二原発で合計5カ所の異常が発生していたのだ。

(1)使用済み燃料プールの冷却機能の停止、(2)ダストモニタリングが停電で一時停止(それぞれ第二原発)、(3)港湾内の海水放射線モニターが停止、(4)共用プール建屋でスロッシングが起き、6平方メートルの水たまりができた、(5)1~6号機の海洋への汚染物質流出防止のためのシルトフェンスが損傷(それぞれ第一原発)。

震度5弱でこれだけの不具合が出ていたら、今後も来ることが予想されるさらに大きな余震で、原発に深刻な被害が生じるのではないか。元東芝技術者で原子炉格納容器設計に携わった後藤政志氏は、東電には十分な備えができていないという。

「使用済み燃料プールのような大きなものは地震で相当揺れるから、今回の事態も予想できたはず。それなのにいままで何もせず、さらに冷却ができなくなってもルール上の制限温度に達するまで約7日間あるから大丈夫というのは言い訳にしか聞こえません」

2013年にも福島第一原発の使用済み燃料プールが冷却不能になるトラブルが起きた。

「あの時はネズミが配電盤に入り込みショートしたことで全面的な復旧まで29時間かかりました。原因の特定までに時間がかかれば7日間などすぐに過ぎてしまう。大地震ではいろんなことが起きるという5年前の教訓を生かさないと、また同じ事故が起きます」

もともと原発事故は起きないとの前提で進んだのが日本の政策だった。福島第一原発事故の2年前、当時の原子力安全・保安院がまとめた複合災害下での原子力防災の検討文書にはこう記されていた。

<原子力施設においては、想定される最も厳しい地震等に対しても安全が確保されるよう、十分な災害対策が講じられており、大規模自然災害を原因とした原子力災害等が、現実に発生する蓋然性は極めて低い>

だが、それは絵空事で、日本中をパニックに追い込むほどの大惨事となったのは承知の通りだ。安倍首相は「世界で最も厳しい安全基準にパスした原発を再稼働させる」として川内、伊方両原発を再稼働させたが、再び甘い安全神話ができつつあるのではないか。

福島原発事故当時、福島県双葉町長だった井戸川克隆氏も福島原発事故の4カ月前に行われた避難訓練を例に挙げながらこう言う。

「10年の11月下旬に福島県と原発の立地・周辺自治体、それに東電が共同で実施した原発災害時の避難訓練のシナリオは、冷却機能が喪失して放射性物質が放出され、なおかつ火災が発生するという3.11と極めて状況が似通った想定でした。相当綿密な訓練を2日間にわたってしたのに、その4カ月後に起きた実際の原発事故では立地自治体にさえ情報が入らず、訓練は全く生かされなかった。その反省が生かされないまま、原発の再稼働が進んでいる」

それに、住民の避難計画ひとつとっても不十分だ。伊達市の島明美さん(46)はこう不安を募らせる。

「市から土砂災害時の避難所一覧はもらいました。ですが、また原発事故が起きたらどうすればよいのか、ヨウ素剤の配布はどのルートでいつ行われるのかなどまったくわからないことだらけです。家だって目張りをしないと被曝してしまいます。原発を再稼働するなら、そうした住民の不安を解消するのが先です」

先週の福島で起きた地震でも、いわき市の県道では避難する人たちで大渋滞が起きた。60センチの津波を観測した小名浜港から約700メートルの距離に住む40代の男性も巻き込まれた一人だ。

「津波警報が出たため、朝6時半ごろに家族を連れて2キロ離れた高台へ車で向かいました。ところが県道が大渋滞で全然動かず、普段なら5分足らずの道のりに30分以上を要しました。ラジオでは原発の燃料プールの冷却がストップしたニュースをやっているし、不安でたまりませんでした」

前出の井戸川氏が言う。

「原発事故の反省もないままに国は再稼働を進めています。今回の地震でも、もっと高い津波が来ていたらどうなっていたか。このままでは、また大惨事を繰り返すことになりかねません」

日本から原発輸入を決めていたベトナムは、福島第一原発の事故の影響で安全対策面の設備投資が膨らむとして計画を白紙撤回した。

悲劇が繰り返されないよう、日本も原発から早期撤退する決断が必要な時期ではないか。(ジャーナリスト 桐島 瞬)

※週刊朝日 2016年12月9日号

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