ダルビッシュ、大谷...選手の体格が“超重量化”  パワー増強の一方で弊害も

ダルビッシュ、大谷...選手の体格が“超重量化” パワー増強の一方で弊害も

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  • 更新日:2018/02/15
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ダルビッシュなど多くの選手が“重量化”の傾向(写真・Getty images)

近年、プロ野球選手の巨大化が進んでいる。かつては180cmを超えれば長身と言われていたが、ダルビッシュ有(カブス)、大谷翔平(エンゼルス)、藤浪晋太郎(阪神)など190cmを優に超えるような選手も少なくない。昨年のドラフトでも椎野新(ソフトバンク4位)など4人の選手が190cmオーバーの長身で、185cm以上は20人にものぼった。しかし身長以上に顕著なのが体重の増加である。20年前の1998年、体重100kgを超えていた日本人選手は吉永幸一郎(ダイエー、巨人)、高橋智(オリックス、ヤクルトなど)のわずか二人であったが、今シーズンは実に16人もの選手が100kgの大台をクリアしている。重い順に選手を並べると下記のようになった。

井上晴哉(ロッテ・内野手):114kg

岩見雅紀(楽天・外野手):108kg

砂川リチャード(ソフトバンク・内野手):106kg

細川亨(楽天・捕手):103kg

中塚駿太(西武・投手):103kg

中村剛也(西武・内野手):102kg

新井貴浩(広島・内野手):102kg

沢村拓一(巨人・投手):102kg

清宮幸太郎(日本ハム・内野手):102kg

森本龍弥(日本ハム・内野手):101kg

山川穂高(西武・内野手):100kg

国吉佑樹(DeNA・投手):100kg

有原航平(日本ハム・投手):100kg

菊池雄星(西武・投手):100kg

T-岡田(オリックス・外野手):100kg

中崎翔太(広島・投手):100kg

上位にはいわゆるスラッガータイプの選手が並んだ。かつても甲子園を沸かせた“ドカベン”香川伸行(南海、ダイエー)や“デーブ”の愛称で親しまれた大久保博元(西武、巨人)などの巨漢選手は存在していたが、現在ではそれを上回る体重を誇る選手も珍しくなくなっていることがよく分かるだろう。そしてもう一つ注目したいのが投手も多く名を連ねているという点だ。メジャー球団に所属しているダルビッシュと大谷も100kg近い体重であることは間違いない。そしてここに名を連ねている投手は、いずれも150キロを超えるスピードボールを誇る本格派である。この点が近年の野球選手の体格における最も大きな変化であることは間違いないだろう。

かつては手足が長く、細身でスラっとした体形の選手が投手らしいとされていた。400勝投手の金田正一(国鉄、巨人)の公式プロフィールは184cm、73kgとなっているが、現在のプロ選手ではなかなかいない細身の選手ということになる。金田の時代まで遡らなくても今中慎二(中日)や西口文也(西武)など細身で先発完投する投手はどの時代にも少なくなかった。現役でも岸孝之(楽天)、増井浩俊(オリックス)などは細身で活躍しているが、圧倒的に少数派と言えるだろう。

ではなぜ投手の体重がこれだけ増えているのだろうか。理由は安定して速いボールをコントロール良く投げるためのピッチングのメカニズムが科学的に証明されてきたことが大きい。下半身が地面から受けた力を効率よく上半身、腕、ボールへと繋げるためには強靭な体幹の力が必要であることは常識となっている。また、一昔前には投手が筋肉をつけ過ぎると鋭く腕を振る妨げになると言われていたが、現在では股関節と肩関節の柔軟性を維持しながら大きな力を発揮するためのトレーニング手法も確立されてきている。そしてプロでも影響力の大きい選手は率先してそのような情報を発信するようになり、チームの枠を超えてレベルアップしていることは間違いないだろう。

もちろん単純な体重増加がそのまま成績アップに繋がるわけではないのも事実である。イチローは日本からマリナーズに移籍した際に3kg体重をアップしただけで感覚が狂い、元の体重に戻したと話している。また急激な体重アップによって筋力はアップしても、それを支える骨や靭帯がそのパワーについていくことができず、故障に繋がるというケースも少なくない。特に懸念されるのが成長期段階での無理な体重増加だ。甲子園の常連校と言われる強豪校では食事やトレーニングの管理を徹底して行っているチームが多く、大人も顔負けの体格をしている選手も多い。

しかし、体が成長する時期には個人差があるため、晩成型の選手は高校時代にいくらトレーニングをしても筋肉が成長せずに負荷ばかりがかかり、将来的に不利益になることも少なくないのだ。また、体重増加と金属バットの恩恵で高校時代は活躍できたとしても、大学で木製バットになると途端に打てなくなるケースは非常に多い。きちんとした技術を身につけていなければ、いくら体格が良くても宝の持ち腐れとなることは明らかである。先述した投手についてもそれは同様である。ダルビッシュ、田中将大(ヤンキース)、岩隈久志(マリナーズ)といった選手は高い技術があるからこそ身体的な成長が成績に繋がっていることは間違いない。

トレーニングや栄養学の知識が広がり、それが選手のパフォーマンス向上に繋がっていることは間違いなく喜ばしいことである。しかし一人一人の体形、骨格、成長速度が異なっていることを無視してしまうと、思わぬ悲劇を招いてしまうことは間違いない。トッププロ選手の傾向に学ぶことは重要であるが、これからの指導者にはそれ以上に選手に合ったやり方を提示する引き出しの多さを持つことが望まれるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール

西尾典文

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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