「天下分け目」の関ケ原町は東と西の“いいとこ取り”?

「天下分け目」の関ケ原町は東と西の“いいとこ取り”?

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  • 更新日:2017/08/13
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関ケ原町の飲食店の隣にある看板。一部の店では、麺類が、薄口昆布だしの関西風、濃口鰹だしの関東風から選ぶことができる(撮影/編集部・作田裕史)

ことし5月に飛び込んできた「東日本でカール販売中止」の衝撃的ニュース。言葉から味覚まで、東日本と西日本は何かと違いが語られるが、改めてその境界線を探すため、岐阜県関ケ原町を訪ねた。

*  *  *

関ケ原といえば、徳川家康が率いる「東軍」と石田三成の「西軍」が、計15万人以上の兵を動員して戦った「天下分け目の合戦」の舞台として有名な地。だが、それだけでなく、方言、名字、だしなどさまざまな文化の「境界線」でもあるのだ。

それを探ろうと、記者は一路、関ケ原へ。レンタカーで駅周辺を回ると、国道沿いに現れたのは、「天下分け麺処」の文字。天下分け「目」と「麺」をかけているのだろう。このように、関ケ原町内では「境界」を売りにする店もあり、すでに「町おこし」のひとつになっているのかもしれない。

「そう、関ケ原は合戦だけじゃないんです。数年前から、東西文化の融合を感じる飲食や特産品を充実させることを目指し、アピールしています」

関ケ原町役場企画政策課の山田和史さんはこう息巻く。

関ケ原は中山道、北国街道、伊勢街道の三つの街道が交差する場所であり、実は東西文化の結節点でもあった。中山道の宿場である「今須宿」には「寝物語の里」の言い伝えが残っており、美濃の国と近江の国の旅人が、旅籠で寝ながら物語を交わしたといわれる。東西文化の結節点ゆえ、それぞれが交じり合って、関ケ原独自の文化が生まれたケースもある。

「お雑煮です。関東はしょうゆ仕立てのすまし汁に焼いた角餅を入れる。関西は白みそ仕立てで焼かない丸餅です。関ケ原町では、しょうゆ仕立てのすまし汁に焼かない角餅を入れます。両方の“いいとこ取り”ですね」(山田さん)

岐阜県など中部地方に住む人の中には「東」と「西」のどちらに所属しているのか迷う人もいるようで、AERAネットで行ったアンケートでも、こんな声があった。

「ちょうど真ん中に位置するので、文化は西日本なのに、味つけは東日本のような気がする」(37歳女性、岐阜県)

●一本松が隔てる語尾

岐阜県内を取材すると、もう一つ面白い「境界線」があった。東部の恵那市三郷町殿畑の峠にある「だじゃの松」と呼ばれる松の木だ。その昔、松の木の東側に住む住人は「こうだ」「そのようだ」「行くだ」など、語尾に「だ」をつけて話した。西側に住む住人は「こうじゃ」「そのようじゃ」「行くじゃ」など、語尾に「じゃ」をつけていたことから、いつの間にかその松は「だじゃの松」と呼ばれるようになったと言い伝えられている。現地周辺を取材すると、これをよく知る勝良典さん(86)が話を聞かせてくれた。

「道路が拡張された関係で、昔あった松は撤去されてしまい、今の『だじゃの松』は、20年くらい前に有志が集まって植え直したものです。でも、わしが小さいころには大きな松があって、祖母などから『だじゃの松』のことは聞いていた。今は標準語に近くなってしまったが、確かに昔は、松の東側の山岡のほうでは『だ』をつけて、西側の佐々良木のほうでは『じゃ』をつけて話していた。境界だったという話も、あながち間違いじゃないと思いますよ」

●東は「家」 西は「村」

では、東日本と西日本の違いとは何なのか。

日本全国をくまなく歩き『忘れられた日本人』などの著書を残した旅する民俗学者・宮本常一は、随所で東日本と西日本の相違について述べている。東は父系的で西は母系的、といった具合だ。

「宮本さん自身が、山口県周防大島出身の西の人。西を基準として見ている部分はあるのですが……」

と前置きした上で、宮本常一研究の第一人者である中央大学教授の岩田重則さん(歴史学/民俗学)はこう語る。

「西は家的な結合が弱く、非血縁的結合、横のつながりが強い。民俗の伝承が家ではなく村でなされている。それに対して東は血縁的、縦のつながりが強く、家が連合している。村としてのまとまりは西に比べて弱いという特徴があります」

糸魚川から関ケ原まで、ことしの夏は「境界線めぐり」でも、いかがでしょうか。(編集部・作田裕史)

※AERA 2017年8月14-21日号

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