台風被害「ペットと一緒に避難する」を実現するための具体的「方法」

台風被害「ペットと一緒に避難する」を実現するための具体的「方法」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/23
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台風19号の豪雨災害から1か月を過ぎたが、災害を受けた地域では未だに復旧が進まず、日常を取り戻せない方も少なくない。

今回の災害では、避難所の場所や数、対応などの課題も浮き彫りになった。中でもSNSなどで話題になったのが、ペットの避難問題だ。開設された避難所に行ったもののペット同伴で受けれを拒否されたケースがSNSなどで数多く上がり、「ペットも家族」、「災害時は人間が優先」「動物アレルギーもあるのだから安易な受け入れは心配」などさまざまな意見が持ち上がった。

災害から約1か月、台風15号で団体が管理する動物シェルターが被災し、台風19号では東京渋谷区の動物シェルターも避難勧告を受けたという特定非営利活動法人ランコントレ・ミグノンの友森玲子さんとともに、動物と避難の問題について、改めて考えてみたいと思う。

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台風15号で千葉のシェルターで被災を経験した犬も日常を取り戻した。写真/ミグノン

ペットとの避難。 スムーズだった渋谷区のケース

私が主宰を勤めている『ランコントレ・ミグノン』は、渋谷区千駄ヶ谷にある。今回の台風19号で、渋谷区はレベル4の避難勧告が出た。幸い渋谷のシェルターは、建物の入口が高いところにあり、さらにガラスにもワイヤーが入っている。最悪な事態を想定しても、まずは安全だろうということで、避難所を利用することはなかったが、この渋谷区のペット同行避難の対応が非常にスムーズだったと、話題になった。

実際にミグノンのクリニックによく来られる患者さん(Aさん)は犬といっしょに避難されたという。家にひとりで犬と共にいたAさんは、避難勧告が出たため、不安になり渋谷区のホームページを開いた。そこには「ペットも家族なので一緒に避難するように」と、ペット可の避難所のリストが掲載されていた。事前に電話で問い合わせをするように書かれていたため、最寄りの小学校へ連絡をした。

連れて行くにあたりどうすればいいかを尋ねると「ケージに入れていただければペットも大丈夫です」との返答であったという。しかし、ケージを所有していなかったため、「キャリーバッグしかない」と伝えたところ、キャリーバッグでも問題ないとのことで避難を決意した。

キャリーバッグに入れた犬を背負って小学校へ到着。すると、「ペットがいる人は理科室へ」と案内された。ペットがいる人といない人とで部屋が分けられていたのだ。マットも貸してもらい夜の理科室でドキドキしながらも、自宅で不安な夜を過ごすよりもとても安心して過ごせたそうだ。深夜には台風が通り過ぎ、雨が止んだために家に帰るか迷ったけれど、その夜は避難所で過ごしたという。避難所のスタッフの方がとても親切で、自宅に被害はなかったものの思い切って避難してよかったとAさんは語っていた。

「私は大丈夫」の余裕は禁物。 ペット同伴者は災害弱者

この渋谷区の避難の例はとても理想的だ。実際に渋谷区では他のエリアに比べて避難する人数が少なく、避難所に余裕があったことも要因のひとつであると思うが、それにしても区や避難所の対応は素晴らしい。

そして飼い主さんが何より早めの避難を決行したことが重要なポイントだ。災害時には健康な大人でさえも避難に危険が伴う。高齢者や病気の家族、子供、ペットがいる人は避難の準備や移動にも時間がかかる。そう、「災害弱者」である、という意識をまず持つことが大事だと私は思う。

私自身、台風19号のとき暴風雨の中、渋谷のシェルターからケアが必要な犬を自宅に連れていった。自宅について車のドアを開けようとしたら、あまりの強風にドアを持って行かれそうになり危険を感じた。犬を下ろしているときにドアが勢いよく閉まったら大事故になってしまう。さらに、冠水などしていたら、大型犬でも抱いて移動しなくていけない。小型犬や猫であっても複数飼いしていれば、彼らを抱えて身動きを取るのは至難の業だ。

また、受け入れてくれる避難所も限られている可能性もある。実際に、渋谷区のようなケースはまだまだレアだ。千葉県東金市にあるうちのシェルターは、台風15号で被災し、長い間、断水と停電に悩まされた。台風19号では、まだまだ地盤がしっかりせず、裏山の土砂崩れも心配だったので、犬を連れて早めの避難を管理人に提案していた。しかし、東金市エリアでは、ペット同伴避難できる避難所は探してもなかったのだ。

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暴風雨の中、動物連れで避難するのは想像以上に大変だ。photo/iStcok

国もペット同行避難を勧めているが、その現実は……

「避難所には、猫アレルギーの人がいるかもしれないから……」
「犬が騒いでしまうと迷惑をかけるから……」

こんなコメントが台風19号の際に、数多くSNSに書き込まれた。多摩川の氾濫で亡くなった川崎市高津区の男性も、犬とうさぎと暮らしていたという。動物同伴で避難することへのためらいが亡くなった要因かはわからないが、「動物がいるから……」と避難を躊躇し、身の危険を感じた人は今回の災害ではとても多かったと思う。

確かに、災害時には人命が最優先される。が、「ペットを飼うのは自己責任なのだから」動物と暮らしている人は自分たちでどうにかしてくださいでは、なんの解決にもならない。基本、国はペットとの同行避難を認めている。自治体によって状況にばらつきがあるが、避難所におけるペットの居場所を決めておくように指導されている。

しかし、以前、命の授業を行った目黒区の小学校で校長先生に伺ったところ「災害時避難所になったとき、動物たちの居場所を決めてはいるが、どの程度の方が連れていらっしゃるか分からないので不安だ」と話していた。

ペットがいる世帯だと地域に共有しよう

災害の規模により避難して来る住民の人数、動物の頭数によって対応が違って来るのは当然だ。また災害時は状況が刻々と変化するため、その都度対策を変えていくことも必要になる。

例えば、
①人数や頭数が少ないときは飼い主と一緒に同室で避難してもらう
②想定数に近くなってきたら、少しでも収容数が上げられるように策を練る
③収容数以上になった場合は、受け入れを不可にして他の避難所へ誘導する
というのが、望ましい避難時の対応の基本的な流れだ。

しかし実際には、その地域で動物と暮らしている人がどれだけいて、どのくらいの数の動物がいるか予測がつかないのが現状だ。また、ペット同行できる避難所が決まっていない地域も多くあり、いざという時に避難所に向かったものの「動物は外に繋いで下さい」という状況が生まれてしまう。豪雨、台風、猛暑、極寒の状況下では、「外に繋いでください」は動物たちの命が危うくなることなので、受入拒否と同じことになってしまうのだ。

犬は畜犬登録があるが、猫などは、住民票などの届出がない分、行政も把握できてない。だからこそ、飼い主も「待っているだけ」「どうにかしてくれるはず」と受身になっているだけでは話は進まない。自治体が行っている避難訓練に、ペット同伴であえて参加してみる。そして、そのとき担当者にペット同伴の避難について詳しく話をまず聞いてみるといいと思う。そこに不備があれば改善要求を自治体に提出するのもいいだろう。

災害時は、緊急事態なので、行政の担当者もひとつひとつの声に耳を傾けることは難しい。冷静に話ができるときに、自分の避難環境を詳しく調べ、整えておくことが人だけでなく、動物を助けることにもなるのだ。

行政だけじゃない、飼い主のマナーも変わらないと!

SNSの書き込みでも多かったが、避難をためらう理由として一番にあがるのが、「うちの子は騒いでしまうから」、「興奮してしまうに違いない」という声だ。確かに、災害時に避難所のような場所へ集まって興奮しない動物はいない。人間も興奮状態だ。しかし、そういった状態ではなくても、人や他の動物を見ると吠え続けて飼い主が阻止できない犬も少なくない。

これはケージの中で落ち着いていられる練習を飼い主が行っていないともいえる。犬の場合、他の動物や人に興奮しすぎないよう日々の生活の中で社会性を身につけていくことで、無駄吠えなどをしにくくなる。また、寝るときはケージを使うなど、日常の中でケージに入ることに抵抗をなくしておくことも必要だ。

犬以上に知らない人の前では隠れたり、緊張しやすい猫は、普段から十分なスキンシップを取り、触ったり、抱き上げたりすることに慣らしておくことも必要だ。キャリーバッグを常に部屋の中に置いて、入ることに慣らしておくこともぜひ行ってほしい。避難しようと思ってもキャリーバッグに入れなければ、連れて行くことはできないのだから。

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キャリーバッグをベッド替わりにするなど、日常的に慣れさせることも必須だ。photo/iStock

今回の災害で、ある学校を利用した避難所で、ペット同行避難に開放した教室に、ペットの糞尿やペットの毛が散らかり、その後の掃除がとても大変だったと職員が上げたコメントが話題になった。

排尿のしつけは、飼い主の責任だ。汚れたままで放置して帰るなど言語道断だ。毛の散らかりも日頃きちんとケアをして清潔に保ち、汚れたら掃除をする。避難所で苦情が出る問題の多くは、動物自体ではなく、飼い主の務めを行なっていないのが原因だ。そのせいで避難できずに危険な目に遭う動物がいたとしたら、愛情にあふれた良い飼い主と言えるだろうか。災害が起きてから慌てるのではなく、普段から家族である動物と一緒に備えてほしい。

避難できない足かせ?「ケージ」問題の誤解

ペットを受け入れてくれる避難所があったとしても、どの避難所も「動物はケージに入れて」という管理をお願いしているところが多い。しかし、「1週間分以上の水やケージ、トイレ用品、フードなどを持って避難をすることは実際には困難だ」と言う人は多い。

中でもケージは金属製だと、ロータイプのものでも重さは6kg以上になる。大型犬になれば、相当重たいものになるだろう。それも持って、今回のような暴風雨や冠水の中、避難はできない。

では、どうすればいいのだろうか。避難をする目的で考えると判断がしやすい。水害や地震の後の二次被害など、とにかく危険から生き延びるため安全な場所へ避難するときには、家族やペットと貴重品、最低限のトイレ用品と飲食物を持って安全な場所へ素早く避難するしかない。この緊急時には、重たいケージではなく、移動に適しているキャリーバッグに動物を入れていっしょに避難する。まずは身を守ることが最優先と考えることが必要だ。

災害が去った後、避難所にまだ滞在する場合は、自宅に戻れる状況下であれば、ケージ、必要なフード、水、トイレ用品などを取りに戻ればいいのだ。さらに長期で避難生活になる場合は、避難所にペットと共に身を寄せるのか、安全なところにペットを預けるのか、自宅の安全が確認できて戻るのかなどの判断をしていくといいだろう。

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東日本大震災での犬のシェルターの様子。避難所でもこのようなケージでの滞在が想定される。撮影/山内信也

避難所で動物による苦情などの問題は、長期避難などで発生することが多い。だからこそ、命の危険がある緊急時にはペット連れの人を自治体も拒否しないでほしい。拒否することにより人命が危機に晒され、後から大掛かりな救助活動が必要になってしまうケースもあるのだから。

受身ではなく積極的に動くことで 動物との避難はスムーズになる

今回の災害で、ペットとの避難の難しさ、厳しさをリアルに感じた人は多いだろう。でも、「どうせ相手にしてもらえないから」と諦めていたのでは、いつまでたっても状況は変わらない。

避難所の運営は基本的に自治体の職員が駆けつけて行う。しかし、今回のように被害が大きいほど、誰が避難所を開けられるか分からない状況になる。そんな状況に対応するために、『ファーストミッションボックス』が注目されている。危機管理教育研究所 国崎信江氏と長野県飯田市が考案したアイディアなのだが、最初(First)に集まった人達が、迅速で適確な初動対応が行えるよう、各避難所にファーストミッションボックスを設置する。

ボックスの中には、やるべき事柄を書いたカードと必要な事務用品などを入れておくのだ。このボックスはすでに全国の自治体でも採用されている。この中に、「避難所開設 ペット」と書いたカードを加え、動物避難のために必要なマニュアルなども入れておくのはどうか。例えば、ケージの設置場所の図面、飼い主への注意事項の張り紙、世話の仕方のマニュアルなどを共通認識で持てば、排泄物を片付けない、ゴミを放置する、人の動物を触ろうとして逃がすなど、避難所でよくあるトラブルを軽減することも可能だ。こういったものを事前に設置してほしいと、自治体に嘆願するのもいいかもしれない。

避難所開設自体は、自治体の作業になるが、ペットの避難問題は住民の声が上がらなければ反映はされにくい。先にも述べたように、ペットを連れて避難訓練に行くことや、各自治体にペット避難について問い合わせや意見を伝えるなど、飼い主側も受身ではなく、積極的に声を上げていくことが変化に繋がると私は思っている。弱者だからこそ、日常のマナーやケア、準備はもちろん、声を上げることが、今真剣に求められているのかもしれない。

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受身ではなく行動を起こすことで、動物たちの安全も確保できるのだから。photo/友森玲子

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